表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/212

努力は人には見せない物

 森の賢者、ドライアドと、人間の間にできた子供であり、内包する魔力があまりにも莫大で、制御しきれず、周囲の人間が魔力酔いを起こし、呪いや病を引き起こす不幸の象徴だってんで捨てられたところを俺が保護してしまったんだが。

 その時はまだ見た目的には5歳くらいで、俺の後ろをよく引っ付いて来てたんだが、まさかこんな美人になってるとは思わなかったな。


「な、ナトリー、大丈夫か?あの男に何かされたのか?」


 ナトリー、そういやあいつの名前シグナトリーとかだったな。

 俺の付けた仇名?あぁ、ほくろ付いてたしチョコチップにしたよ。悪意はあった。


 ようやく落ち着いたチョコチップ改め、シグナトリーが、一つ咳ばらいをしてゆっくりと美しい所作で席に戻っていく。

 今更感がすごいけどね。


「お、おかあさま?」


「何ですかローズ、お客様の前ですよ」


「え、は、はい」


 何事もなかったかの様に振舞うナトリーに、二人が唖然としながら俺のことを見てきやがるが、無視だ。


「冒険者の方、どうぞお座りください」


 ナトリーがそう言って自らの隣の椅子を引いてポンポンと、暗にここに座れや、と言って来る。

 俺の知っている純粋なチョコチップはどうやらいなくなってしまったらしい。


 そこから暫くは無言のまま、給仕たちが食事を運んできて、食器とナイフが当たる音だけが部屋の中に木霊した。

 あ、俺ですか?マイチョップスティックがあるんで。


「そう言えばさ、なんでローズ………さん、は俺に話しかけてきたんだ?」


 呼び捨てにしようとしたらパパんから鬼のようなオーラが噴き出して、それを見たチョコチが龍のようなオーラでパパんの鬼を食い殺しやがった。

 今のやり取りを全て見なかったことにして、俺はローズに話を振ってみた。


「はい、私、冒険者になろうと思っておりますの。それで、あの時は訓練の帰りだったのです。そこに丁度良さそうな冒険者がいたので声を掛けて、話しでも伺おうかと思ったんですの」


「あぁ、なるほどね、取り合えず、今後知らない冒険者に声を掛けるのはやめた方が良いぞ」


「冒険者とは様々な死線を潜り抜け、独自性の高いネットワークを構築していることがあるの。そういった、“それなり”の冒険者の場合は基本的に自分が奴隷に落とされた時の対策として、闇奴隷商と繋がっているわ。どれだけ高位の人間であろうと、一度奴隷にされてしまったらその主人に逆らうことは出来なくなる。奴隷化を一方的に解除なんて芸当は千器様や、あの方の所属していたクランメンバーくらいにしかできないわ。だから本当に冒険者になりたいのなら、そう言うことも学ぶべきなの………そうですよね冒険者さん!!!」


 うっわ、ここぞとばかりに媚を売ってきやがったなこの人妻。

 娘より明らかに子供だろコイツ。目とかもう新しいオモチャに心惹かれる子供じゃねえか。キラッキラしちゃってるよ。


「そ、そうだぞ、言いたいことはあの人が全部言ってくれたからもう俺から話すことはないけど、今後は本当に気を付けないとだめだからな」


 俺の忠告を話し半分で聞きながら、ローザはあまりに様変わりした母を見ている。

 

「千器様のいらっしゃった“クラン”?お母さま、その話、詳しく教えてください!」


 あれ、様変わりしたことに驚いてるわけじゃないの?って言うかもっと心配してやれよ。


「いいわよ。そもそも、クランとは何かわかるかしら」


「はいお母さま。クランは複数のパーティーが1つの組織として活動する時に用いられる名称だと記憶していますわ」


「そうです。おりこうさんね。あの方、千器様が所属、というよりも結成させたクランは、名前を自ら名乗る様な事はありませんでしたが、皆こう呼んでいました“変人サーカス”と」


 何それカッコよくない。

 全然カッコよくないからね?確かに変人しかいなかったし、俺のよく行く飲み屋にいたやつら誘ってたまにクエスト受けてただけだけどさ。

 それに、メンバーも確かに生粋の変人しかいなかったよ?世界一の我儘女に、糞ペド野郎とか、マゾ男とか、ロリババアとか、サイコ野郎とか、オカマゴリラとか、ゴリラとか、あとゴリラとか、それと乙女チックサイコスーパー自己中博愛女とかさ。

 そんなんばっかだったけど、まあ確かに強かったよ。

 ちなみに飲み屋の名前は“童女の微笑み停”って言って、仲間内では童停って呼んでた。マスターはもちろん糞ペド。


 二人の話しが盛り上がっていくのを横目に見ながら、スープをレンゲで飲んでると、後ろから肩を万力で挟まれたのかと勘違いするようなダメージが体を駆け抜けた。


「てめぇ、表に出ろや、ぐちゃぐちゃにしてやる」


 いやん、パパんがまじおこっすわ。


「一つだけ、俺にも言わせてほしい」


「遺言なら聞いてやる」


「ウンコ漏れそう」


 さっきから我慢してたんだよね。だけどさ、なんかさ、行く雰囲気じゃないじゃん?立ち上がろうとするとパパんが目から赤い粒子垂れ流しながら睨みつけて来たり、給仕共がドアの前固めてるから出るに出られないじゃん?

 でもこの場でウンコしてえ!って言うコミュ力なんか持ち合わせてないじゃん?じゃんじゃん?


 結論、ちょっと出たかもしれない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ