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○○さん、やっておしまい、とか言ってみたい人生だった。

 俺は目的の為にもう少しだけこの城に留まらないといけない理由がある。


 この場で我慢の限界が来たら計画をまた練り直さないと行けなくなっちまう。


 それは面倒だ、非常に面倒なのだ。




「勇者大塚、貴様は城内でも無能勇者と噂されている実力の伴わない勇者であろう。その無能勇者と、人類の希望を背負う勇者神崎が対等な訳があるまい。よって、この戦い、勇者神崎の命令はそのままで、勇者大塚が勝利した際には、そうだのぅ、本来失うべきものを失わなくて済む、という事で何も問題ないだろう」




 その言葉に、俺のパーティー以外のクラスメイトの殆どから歓声が上がる。


 そう言った事に興味の無い連中が極僅かでもいることが唯一の救いだ。




「はぁ、まあいいや、負けなければいいんだし」




「だ、だけど向こうには会長がいるでやんす!」


「それに神崎もいるでござるよ、どうするか大塚氏ぃ…………」




「いや、お前らは負けても何も変わらねえよ、だからそう肩ひじ張んなくて大丈夫だ」




「だめ、絶対勝つから、こんなこと許していいわけないじゃん!おかしいよ刀矢!やっぱアンタこっち来てから変わっちゃったよ………」




「坂下もそんな心配しなくていいんじゃないか?これは集団戦闘なんだぜ?個人個人で戦う訳じゃねえし、何よりこっちは1人多いんだ、余裕だっての」




 まあ、会長をどう足止めするか、そこの課題さえクリアすれば何も問題ない。


 それこそ、今のこいつら程度ならだけど。




「んじゃさっさとやろうか。時間取るのもめんどくせえ」




「大塚、不本意だけど、こうして君と戦えることに、実は私は高揚しているよ」




「すみませーん、なんかこの人熱っぽいって言ってますけどー」




「違う!そうじゃない!まて!私はいたって健康だ!安心しろ!」




 周囲が会長を心配そうな目で見たのを、必死になって宥める会長が面白いな。




「ああ、それと会長」




「ん?なんだ、まだ私をからかうのか?」




「俺が勝ったら会長に話したいことがあるんで」




「…………わ、私もだな、私が勝った暁にはその、君に話したいことがあるんだ…………だから、その、手は抜かないが、楽しみにはしているからな」




 あれ、絶対なんか誤解されてるだろこれ、まあいいか。




「須鴨さん、こっちも渡しとくけど、これは起動に結構時間かかるからできるなら開始直後に二つとも解凍し始めて」




「わ、分かりました!ぜ、絶対勝ちましょう!」




 眼鏡をキラーんとさせながらそんなことを言って来るりょたんそん。


 なんかどんどん可愛く見えてきたな、結婚しようか。




「では、はじめ!!!」




 向こうはパーティー構成上、前衛のみのアンバランスなパーティーだ。


 それに集団戦闘の心得もまるでない。


 逆にこっちは俺がいる。


 指示を出せる人間がいるだけで集団戦闘は死ぬほど変わるからな。




「須鴨は解凍を!デーブは障壁で須鴨と相手の進路を妨害!特に藤堂はお前と相性が悪い!藤堂を集中的にマーク!ガリリンは坂下と二人で宮本を止めろ!10秒でいい!危なくなったら即撤退だ!俺が神崎と会長を速攻でぶっ飛ばすからそれまで頑張れ!」




 俺は………多少面倒だけど、厄介な二人の面倒を見ようかね。




「大塚ぁああ!俺と会長を一気に相手するつもりか!付け上がるなよ無能がぁぁぁあ!」




 まず飛び込んできたのは神崎か、まあ予想通りだな。




「ふがっ―――く、くっそ、なんでこんな所に穴が……」




「ついてなかったな」




 即座に神崎はデーブの障壁に囲まれ、身動きが取れなくなった。


 まあ、アイツの身体能力で剣をぶつければ、持って1分か。


 視線を神崎から一旦外し、最も厄介な女を探すが、見当たらない。




「どこを見てるんだ?」




 背後から会長の声が聞こえ、それ同時に感じる、うなじがチリチリとするような感覚。


 あぁ、少しだけ懐かしい。


 この感覚も、昔は毎日の様に感じてたっけ。




「会長の横乳をみてるぜ」




 振るわれる刃よりも早く、その場から思いっきり飛びのき、会長と距離を開ける。


 警戒しているのか、会長はじりじりとこちらに寄ってくるだけで、下手に飛び込んできてはくれないか。


 もしかすると、神崎が障壁を破壊するのを待ってるのかもしれない。




 俺の方と、相性的にかなり有利なデーブは大丈夫だが、やっぱ宮本の方が手薄になったか。


 既にガリリンは戦闘不能で、ソルジャーになった坂下が何とか食い止めてくれてる感じだ。




「どうした、仲間も1人やられたみたいだぞ」




「まあ、しかたないよな、そう言うモノだし」




 そのやり取りの直後、俺達の足元が眩い光に包まれ、倒れ伏していたガリリンの傷がゆっくりとだが回復し始め、必死に食らいついてた坂下も、動きにキレが増し、宮本と互角に打ち合えるまでになっている。




「…………何をした」




「術式魔法って言ってな、広範囲に魔法効果を拡散させる技法があんだよ」


 


 しかも、それを須鴨さんの魔力循環で行うことで、効果は彼女が個性を発動している間持続される。


 勿論、魔力消費は発動時だけにしかかからないんだよね。 


 相性ばっちりだ。




「まさか、お前は最初から…………」




「倒しに行ったように見せたのも、ぜーんぶこれの為だよ、さあやろうか会長」




 あえて挑発するように言ってやると、会長も凶悪な笑みを浮かべながら殺気を爆発させてきた。


 この人は本当に殺気の扱いが上手いな、やっぱ天才だよ。




「だけどね、それもブラフなんだ」




 一歩、たった一歩だが、会長が俺に対して踏み込んで、その後すぐにその場から飛びのいたけど、もう遅い。


 俺が渡した二つ目の陣、それが今解凍が終わって発動した。




「サンダートラスト、スタンガンみたいなもんですわ」




 まあ、それが個性を使ってる限り流れ続けるんだからたまったもんじゃねえよな。


 まともに体は動かなくなるし、下手に動こうとしても電気信号が狂って意味不明な動きをし始めたりするからね。




「ガリリン、坂下、仕上げ」





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