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無能勇者の異世界浪漫遊譚〜2週目クズ勇者は異世界を嘲笑う〜  作者: ハジメ
prologue 帰ってきた日常
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許せることと許せないことがある

 異世界から帰ってきた。

 そこからは少しだけ実験を行い、直ぐに眠ってしまった。

 だからだろうか、暫く異世界にいたものだから俺はその存在を忘れてしまっていたんだ。


「あ、学校じゃん」


 という訳でさっさと朝食を済ませ、学ランを身にまとい、俺は学校に久しぶりに登校することにした。

 少しくらい休んでもいんじゃないかと思ったりもしたが、ここで休むと俺は一生学校に行かない気がする。

 しかし、この世界は向こうの世界と違い、生きてるだけで結構な金がかかる。向こうの世界でもそれなりに金はかかったが、それでもあまり意識するほどの額ではなかったので、暫く引きこもったりはよくしていた。 

 食料もそれなりに備えがあって、水も魔法で出せたからこそできたことだと思う。


「はぁ、帰ってきたら帰ってきたで色々憂鬱だな」

 

 向こうは本当に自由に生きることができる世界だったとおもう。常に命の危険を伴うし、戦争なんかしょっちゅうしてたけど、それでも国民は自由に生き、自由に暮らすことが許されてた気がする。

 それに比べてこちらは……肩身が狭いというか、肩が凝るというか、とにかく前へ倣えしないといけない風潮が特に目立っている気がする。

 あくまで気がするだけだけど。


 うっすらと残る記憶と、スマホの地図を駆使し、何とか学校にたどり着いたけど、クラスメイトの顔が殆ど思い出せねえ……。

 確か俺は中学一年だったよな。朝鏡で自分の顔を確認した時は驚かされたもんだ。


 クラスに付き、とりあえず時間を潰し、時折話しかけてくる顔と名前が一致しないクラスメイト達に、適当に相槌を打ちながら始業を待った。 

 これから少しずつ顔と名前を一致させていけばいい。何せこの世界では命に関わるようなアクシデントはそうそう起きやしないんだから。


 その後は特に何事もなく毎日が過ぎ去っていった。

 しいて言えば、勉強の内容を殆ど忘れていたせいでかなり苦労したことだけは覚えている。


 そんな平凡な生活にも慣れてきたし、元の自分のことなんか微塵も思い出せないけど、それでも上手く立ち回れていたともう。

 だけど、そんな俺の“上手い立ち回り”が気に食わない連中ってのはいるみたいで、さらに言えば、俺の巻き込まれ不幸体質はどうやら元々の物だったみたいだ。


「お前最近生意気だよな、元はコソコソしてて目立たなかったくせにさ」


 俺を取り囲むようにして陣取るクラスメイト数名。

 ちなみにこいつらは一か月以上たった今でも名前が思い出せない。

 それくらい俺が関わらなかった相手。そして、何故だか見ているだけで少しむかむかしてくるような、そんな相手だった。


「おい!  聞いてんのかよ!  」


 そう言って一番背の高い男が俺の胸倉を掴んで来た。

 おいおい、そんな掴み方じゃ……


「ぐっぁ!? 」


 ひねるだけで手首痛めちゃうでしょうが。

 なに? 掴み方も知らないの君たち。


「あ、わりい」


 手首を抑え、俺のことを見上げてくる男に視線を合わせながら、とりあえず謝ってみたら、それが気に食わなかったようで、今後は反対の腕を振り上げて拳を俺に突き出してきた。

 あ、やっぱ手痛いのね。


「いやぁいいねえ!  こういうの!  青春っぽいねぇ!」


 ひょいっとへなちょこパンチを回避し、脛にローファーのつま先を当てると、再びその男子生徒が脛を抑えて蹲ってしまった。

 こんなに毎回痛がってたら魔物に速攻で殺されるな。


「んじゃあまあ、俺は帰るからさ、あんまりおいたするなよ」


 そこまで高くなかった身体能力も、この世界に来た時と同じにされているが、どこを見て、どのタイミングで、どう捌けばいいか、そう言った事はしっかりと俺自身が覚えている。

 体が忘れようとも、俺の経験だけはしっかりと俺の中で生きているわけだ。


 まあ、結論から言えば、そのことが原因でクラスの一部、学校の不良少年たちに目を付けられてしまったわけだ。

 毎日の様に俺の机が荒らされ、下駄箱には虫が入れられている。 

 そんな光景を見て、俺は……


「こいつら朝早くから来て机荒らしたり虫捕まえる根性はあるのに、どうして向かってこないんだろうか」


 という物だった。 

 いやさ?  俺結構早めに来てるわけよ。なのに来るとね? 虫が入ってるの。

 これって俺より早起きして、早く家出て、せっせこ虫取りしてるってことだよね? 

 なんかその光景を思い浮かべるだけで、何というか、微笑ましいというか、バカなんじゃねと言うか、まあそんな感じの気分になるわけですわ。

 あ、でも椅子と机が牛乳臭かったときは本気で殺そうかと思ったわ。

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