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無職は新たな無職を生み出す

 俺がわくわくしながら待っていると、何故かブレアは俺ではなく、クイーンの方向に向き直り、意を決したような表情で、決意の籠った視線を向けた。


「告白。本機は貴方が好きなようです。大好きなようです。貴方が本機に掛けてくれた言葉の全てが、本機の中で宝石のように輝いています。ですのでこれからも、本機から離れないでください」


「よーし、いい練習だったね。じゃあ本番いこうか!!!!ねえ!ねえってば!!!!」


「……お前と一緒になることは出来ねえ……俺は統制協会のクイーンだ。世界を救う役目がある。それに、こんな仕事柄俺はいつ死んでもおかしくねえ……お前の気持ちはその……凄い嬉しいし、俺も同じ気持ちだ……だが統制協会の戦闘員は現役を退くまで交際を禁止してるってのもあるし、なにより、俺は好き合った女を一人にしたくねえんだ……」


 あははー死のうかな。


「否定。嫌です。本機はそれでも……それでもあなたといたい……あなたも本機と同じ気持ちだというのであれば、本機と共に逃げればいいでのす……」


「できる訳ねえだろ!統制協会にはストラス・アイラみたいな化け物がまだ何人もいるんだぞ!?逃げ出したってあいつの能力ですぐに見つかる……俺達は……結ばれねえ運命なんだよ……」


 いきなり始まったけど俺がいる事忘れてません?というか何これ。寸劇ですか?


「否定っ!!どうして……どうして本機たちは結ばれないんですか!あなたは本機の為にあの巨人と戦ってくれました……本機からこれ以上奪わせないといってくれました!そのあなたが、どうして……本機から一番大事にしたいと思えたものを奪っていくのですか……」


「はぁ、もういいや、全部めちゃくちゃにしてやる……ババアッ!!!こっち来やがれ!!!」


 突然声を上げた俺にブレアとクイーンが驚いたような顔でこちらを向いた。ってか完全に「あれ?お前まだいたの!?」みたいな感じなのは本当に不愉快だぜ。

 上空から慌てた様子のババアが降って来て、周囲を警戒しながら俺の話しかけてきた。


「どどどど、どうしたのじゃ!?敵かっ!?敵なのか!?」


「ババア、決闘の命令を一つ使わせてもらうぜ?そこにいるクイーンを統制協会から追い出せ!そうすりゃこいつらの結婚生活はど貧乏の貧困生活になってざまぁできる!」


「―――はっ?い、いやお主何をいきなり……」


「お前いきなり何を!?」


「テメエの権限がありゃできるだろうが!さっさとクビにしてこいつの経済力を奪ってしまえ!いいか糞野郎!お父さんは貧乏人にブレアたんをやる気はありません!」


「め、めちゃくちゃだコイツ……」


「……なるほどのう……よかろう。クイーン、貴様はただいまを持って統制協会の戦闘員から除名する。荷物をまとめてビターバレー支部から去るがいい」


 けけけけっ!これでこの元クイーンは無職!将来性皆無だ!こんなポンコツやろうにうちのブレアたんは任せられませんなぁ!!!


「よし、ババア、テメエの仕事は終わりだ。目障りだし鬱陶しいからさっさと消え失せろ!」


「いやひどすぎるじゃろ貴様……まあメイド共がプリンを持ってきおったし帰るが……」


「あ、俺の分も残しといてね。なかったら鼻からタバスコ一気させるから」


 一瞬嫌な顔をしたババアがその場から飛び去り、再び俺と、なんだかどうしていいのか分からなくなってしまったような表情の二人がその場に残ってしまったわけだけど、俺はもうこの一件を跡形もなく原型も留めないレベルでぶち壊すと決めているのでどうという事はない。


「さてさて、これで無職のおっさんの出来上がりだな」


「お前は……何がしたいんだよ……」


「何がしたい?そんなの決まってるだろ?俺は人を差し置いて自分だけが幸せになりたいんだよ。だから人の幸せが許せない。お前のリア充ライフを完膚なきまでにぶち壊して家に帰ってから一人でベットの中でニヤニヤするためにこんなことをしてるんだよ」


 俺の発言の意味を聞いたブレアが顔を伏せながら静かに震えているのが分かる。

 まあ、俺のモノである以上お前に自由なんざ何一つないんだってことをここでしっかりと教えてやらねえといけねえからね。


「軽蔑。貴方という人間を見誤っていました。仕える人間を……間違えていました……」


「もう遅い。お前は間違えた。俺の奴隷になった段階で、それよりももっと以前の、奴隷にされた段階で、奴隷になる前の段階で手を打っておくべきだったんだよ」


 俺のことを涙を貯めこんだ瞳で睨みつけたブレアはよろよろと下がっていき、その場に腰を落としてしまった。

 俺の本性がそこまでショッキングだったのか、それとも、奴隷に落ちたやつがまともに恋愛なんぞできると本気で思ってたのか分からないけど、随分と愉快な脳みそしてるみたいだな。


「それで?お前はどうするの?今この場で俺を殺すか?片腕しかない俺のことなら1秒とかからず殺せると思うけどね」


「嘘つくんじゃねえよ……いつでも剣を抜けるようにしてるくせに何言ってやがんだ」


 そう言った元クイーンはブレアを伴って俺の前から去ろうとした。だけど、最後に俺からも言っておかないといけないことがある。


「ブレアの中にはまだあいつの人格が眠ってる。それをどうにかして欲しけりゃ……後で俺の所に来るんだな」


「……ちっ……テメエの奴隷だろうが……」


「あぁ、そうだよ。俺の奴隷だ。だから人格をどうするかも最終的には俺が判断すればいい。だけど、お前はそうじゃないんだろ?」


 クイーンはその言葉に返事をすることなく足早にその場から去っていった。

 あぁ、何だろうね。この胸糞悪い感じ。とにかく臨時収入ゲットだぜ。


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