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堂々としていれば意外と怪しまれない

 結局予選会には遅刻ギリギリで到着し、昨晩のうちに色々仕掛けしようと思ってたことが全部お釈迦になった。

 まあそれも“出来たらいいなぁ”程度のものだったからなかったらなかったでどうでもいいんだけど。


「参加者はコチラのブースに集まってください!」


 統制協会のおひざ元であるコイキで、その近代風都市の真ん中にある不釣り合いなコロッセオ。明らかに現代人が興味本位で作ったようにしか見えない。

 そこに人がごみのように集まり、ムシムシします。

 しかしまあ、なんで参加者しかいないはずのこの空間にうちの奴隷メイドさんが何食わぬ顔でいるのか分からない。


「なんで君がここにいるのかな?」


「んなもん決まってんじゃねえですか、優勝賞金目当てだってんですよ。幸いテメエの手の内は全部知ってますから」


 そう言って俺の足元に唾でも吐き出しそうな勢いで言ってきたカリラ。本当にそれがムカつくところなんですわ。

 俺の手袋が優勝賞品ではなく準優勝者に送られるってのが何とも気にくわない。

 そしてたかだか400万ゴールド程度にあの手袋が負けるのが何ともいえない。


「じゃあ俺は準優勝目指すからね。それまでにバトルにならなけりゃいいな」


 係員みたいなのが俺達一人一人にナンバープレートみたいなのを配りながら歩いている。

 俺が渡された番号は427番。うん、悪意を感じます。

 ちなみにカリラたんは44番。俺達のこの番号のバラつきは一体何なんだろうね。

 俺の頃は1000人くらいで、会場を移動して、たどり着いた連中だけで本選だったけど。


「ではこれより、本選出場者選定試験を始めます!!!」


 拡声の魔道具を使っている係員が声を上げ、俺とカリラはそちらに視線を向けた。

 この空間内にも相当な加護の持ち主が紛れ込んでるけど、肩がぶつかるレベルで人が詰め込まれたこの場では、各々の加護がぶつかり合って判別がかなり難しくなっている。

 さすがにまだこの状況で加護から個人を特定することは難しいな。


「1番から100番までの方はまずコロッセオに移動してください!」


 おぉおっと、どうやらサバイバル系の試験になるみたいだな。それにしても、しょっぱなからカリラたんの戦いか。

 果たして彼女は“本気”で勝ちに行くんだろうかね。あいつが本気になればそれなりに手強くなりそうだしなぁ。できれば適当に戦ってくれないかな。


 ぞろぞろと移動を開始した100番までの連中。その中にはタートルヘッツで出会ったあの男と同じレベルの加護を持つ男が混ざっている。

 まあ、実戦経験豊富なあの幸運の異能を持ってたやつよりは弱いだろうけど、それでも今のカリラには相当な強敵になるんじゃね?


「決勝で会おう」


「テメエは準優勝目当てじゃねえですか。決勝は棄権しやがれってんです」


 あれ?おかしいな。積年のライバル感を出してみたんだけど全然乗ってくれないや。


 とりあえず俺はまだまだ出番が来ないみたいなので、観客席に移動してカリラたんの雄姿を目に焼き付けに行くとしますかね。


 ……所持金よし、今日で一攫千金だぜおい。


 統制協会のおひざ元であるコイキでは基本的にギャンブルの類が禁止されている。だけどこの剣王祭では別だ。剣王祭の名物と言えば、この会場のみで許される“勝者予想”になる。そして、当然のことながら参加者の多い予選はオッズが高くなる。

 要するに、バカみたいに稼げるはずだ。さっきちらりと見たけど、カリラは間違いなく本気で戦ってくれるだろう。

 俺と戦うことになったら面倒だけど、いざという時に手袋を買い戻す金は必要だ。


「44番に1000万賭けさせてくれ。俺の恋人なんだ」


 受付にそう言えば、ガマガエルのような顔の受付が下卑た笑みを浮かべながら金を受け取り、強化ガラスの下から一枚の紙を滑らせてくる。

 それには俺の賭けた金額、そしてかけた相手のことが書いてある。

 さらに幸運なことに、カリラの組には前回大会の本選出場者である男がいるらしく、無名のカリラのオッズはとんでもないことになってる。

 いやー最高だね本当に。これでしばらくの金の心配はしなくて済むぜ。

 魔物系にはあんまり役に立たない反魔の力だが、相手が人間だったら、もしくは魔法を使うタイプの敵であれば、カリラは相当有利に進められる。


「エールを下さいな」


「500ゴールドになりまーす」


 若干エロイ恰好の売り子に声をかけ、酒を貰う。大丈夫だ、堂々としてれば今の俺の見た目でも酒が買えるはずだ。

 なにせこの世界には見た目と年齢の合わない種族がバカみたいにいるしな。


「さてと……どうなることやら」


 腰を据え、俺は会場に入ってきたカリラを見つめる。

 あいつはそれなりに戦えるし、実戦経験に近しいものもある。予選であれば何も問題ないが、それがどこまで人間に通用するかが若干楽しみでもある。



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