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勇者とみんな

ゆめをみた。


きれいなおんなのひとがでてきた。


勇者……になるんだって。


ぼくが。


このぼくが!


おかあさんとおとうさんのかおはおぼえていないけど、ぼくが勇者になるってきいたらよろこんでくれるかな?


……しせつちょうさんにみつからないようにでていかないと。


勇者になるにはおうさまのいるところにいかなきゃいけないんだって。

おうさまのいるところはここから……あさがさんかいきたところだったっけ……


こっそり……こっそり……


それからぼくはひたすらあるいた。

くつなんてしせつちょうさんみたいなおとなのひとしかもらえない。


あしからちがでそうになったらくすりのはっぱをあしにあてた。


おなかがすいたらたべられそうなくだものをたべた。


あさがさんかいきてまっくらになりそうなとき、


あれが……おうさまのいるところ……


おうさまがいるところはふくがきれいなひとがあつまるって、しせつちょうさんが……


ぼくは……


『いいえ、勇者。あなたは勇者なのです。胸を張って堂々としなさい』


ぼくのめのまえにゆめにでてきたきれいなおんなのひとがでてきた!


『私に任せなさい。あなたを綺麗にしてあげましょう』


ぼくのからだがひかったとおもったら、きたないぬのがきれいなふくと、おはなしのなかにでてくるきしがきているような、そんなふく? をきていた!


『そして、これを授けましょう』


めのまえにはきれいなけん……


『明日の朝、王と会いなさい。そのとき、勇者と呼ばれるでしょう。呼ばれたその時に剣を抜きなさい』


けんをぬく……わかった!


『もうあなたは○○ではありません。これからあなたは勇者と名乗るのです』






おうさまのまえにでていくのはむねがどきどきしたけど、なんとかいわれたとおりに、けんをぬけた!

そしたらきしちょう? というひとといっしょにたびをすることになった。


とちゅうでまものにおそわれそうになった。

ぼくはこわくてなにもできなかったのに、きしの人はその剣でまものをきっちゃった……


『あなたは勇者です。これから先より多くの血を見ることでしょう。より多くの血を流すことでしょう。それでもあなたは先に進まなければなりません。後ろを振り返ってはいけません。決して。なぜならあなたは勇者なのですから』


ぼくはゆうしゃ……






きしのひと……きしがねたのをかくにんしてから、ぼくはけんをもちあげる。

うん、まえまでのぼくならもてなかっただろうけど、いまならもてる。


まずはふるところから……


あせをかいてつかれてきたから……つぎかな?

ちかくにおちてあったきのぼうをひろって……えっと、き……し……むずかしいな……

もじなんておしえてもらえなかったから……かくのが……たいへんだ……


でもぼくはゆうしゃだから。


あぁ! ゆうしゃもれんしゅうしないと!


えっと……き……し……ゆ、う……し……や……


むずかしいな……






『いいですか? 剣を振る時は振る時に力を入れるのです』


けっきょくばれちゃった。


『持ち上げるのにも力は必要です。ですが、振り下ろす時に力がなければ剣を振るとは言いません。それは下ろしているだけです』


そういってき士は見本を見せてくれた。

おお! かっこいい!


『まずは振り下ろす時に力を入れるところから始めましょう。最初は難しいですが、慣れると徐々に力が入るようになりますよ』


てぇい!

やぁ!

たぁ!


もっとちからをいれなきゃダメ……






『いいから行きなさい! あなたには魔王を打ち倒すという使命があるのです! あなたの命はこんな所で潰れていい命ではありません! さぁ、行きなさい!』


騎士におこられた。あんなにこわい騎士ははじめてみた。

ぼくはいそいでむらまでもどろうとして、


もし、もしもあのおおきなおーくが騎士をおそったら?


かんがえてしまった。

あんなにつよい騎士がまけるはずがない!

でも……いっぱいおーくがいたし……


ぼくは勇者なんだ……騎士を、なかまをまもるのも勇者なんだ!


ぼくはむらにもどらず、あのおおきなおーくのところまではしった!

騎士にみつかったらまたおこられるからこっそりと。






うぅ……おおきい……


こっそりうしろからちかづいたのはいいけど……おおきいよ……どうしよう……さっきみたいにきのうえから……


それしかないよね……


……よし、のぼったぞ。

……いくぞ!


それからはおぼえていない。ただひたすらおーくのこんぼうをよけて、けんをふっていたきがする。きづいたら騎士がちかくにいたし……

ただ……だきしめられて、おとうさんってこんなかんじなのかなっておもっちゃった。






騎士がいなくなってから盗賊といっしょにたびをつづけた。

騎士から盗賊のじをおしえてもらっててよかった……


とちゅうよったむらで盗賊はたくさんのひとにかこまれちゃった。


にんきものなの?


どうしようかとかんがえていたら、なきごえがきこえた。


うぅ、盗賊ははなれるなって言ってたけど……ぼくは勇者だから……ごめんね、盗賊! かえってからおしおきうけるから!






ないているひとはおんなのひとだった。

ぼくが勇者になるまえにきていたきたないぬのをかぶせていたけど。


どうしたの?


おんなのひとはなきやまない。

どうしよう……


あっ、そうだ!


「なきたいときはないたらいいんだよ? ないてないて、なみだがでなくなったら、こんどはわらえばいいんだよ? ぼくもそうしてきたから」






うぅ……あたまがわれそう……

盗賊のおしおきはいたいからいやなんだよ……


盗賊の……おともだち? のひとと、てをつないでごはんをたべるばしょをさがしてるんだけど……どこにむかってるのかな?


『本当にここでいいんでやんすか?』


『ええ。盗賊様には大変お世話になりましたので』


『ま、まぁ、親分は偉大な方でやんすからね!』


そういってぼくのみみもとで


『後で親分に一緒に謝りましょうね』


そう言ってくれた。

ちょっとだけこそばかったけど。


うぅぅ……あたまがわれる……

いっしょにごはんたべよっていっただけなのに……






『いいか? 戦いにズルも卑怯もねぇんだ。使えるもん全部使っちまえ』


そういっておしえてくれたのは、あいてのうしろにまわるほうほう。


ぼく勇者だけど……いいのかな?


『あん? 勇者だからこそだ。お前は魔王に目の前から突撃するのか? 違うだろう。死んだらそこまでなんだ。だったら覚えとけ』


しんだらそこまで……うん、おぼえるよ!






ないていたおんなのひとのなまえは魔法使いっていうんだって。

盗賊にじをおしえてもらったけど……まちがえるとこわそうなかおするから、つぎは魔法使いに教えてもらおっと。






騎士、盗賊……どうしてぼくからはなれちゃうの?


どうしてやくそくをまもってくれないの?






魔法使いとたびをつづけて、あっちこっちのむらによった。

魔王のしろがもうちょっとでみえそうなむらで、おまつりがやっていた。


魔法使いもおしゃれ? っていうのをしたいのかな?


……よし。






やどのへやにもどってぬのぶくろをあさる……あった。騎士と盗賊からもらったおこづかい。


だいじなときにつかえっていわれたけど……ごめんね、ふたりとも!

あとでおこられるから!


ぼくがかえたのはねっくれすというらしい。くびからかけるらしいけど……魔法使い、よろこんでくれるかな?






『いいですか? これが透明の魔法です』


おお、魔法使いの声は聞こえるのにすがたがみえない!


『盗賊から相手の後ろに回る方法は教わったと聞いています。ですが、魔王相手に気配を消すだけではいけません。この魔法を覚えておけば必ず役に立つでしょう』


とうめいのまほう……ぼく、おぼえるよ!

だって、つかえるものはなんでもつかえ、だからね!






なんで……なんで、魔法使い……ぼくといっしょに魔王をたおすってやくそくしたじゃん!

なのに……なんで……どうして!


魔法使い……ないてる……あのときみたいに……


騎士がいってた。

おんなのひとはなかせちゃいけない、って。


盗賊がいってた。

おんなのまえでおとこはないちゃいけないって。


……ぼくは勇者だから……がまんする!

だから、魔法使いもなかないで?

ぼくは勇者だけど……魔法使いのことだいすきだから!






もりのなかでぼくと魔法使いをたすけてくれたおとこのひとは、戦士っていうんだって。


魔法使いにいそいでじをおしえてもらった。


魔法使いは……たぶん……ぼくは勇者だからなかないし、ふりかえらない。

それが騎士と盗賊と魔法使いとのやくそくだから。


さぁ、いこう。

もうめのまえだよ!






『これは俺が使える唯一の魔術。自己強化だ』


じこきょうか?


『つまり自分を強くする魔術だ。見たところ勇者は魔法も魔術も使えるようだ。この魔術しか教えることが出来ないが……きっと魔王との戦いで役に立つだろう。恐らく』


じぶんをつよく……わかった。ぼく、がんばるよ!






こっそりれんしゅうしていた


けんからひかりをだす


これでまものはいなくなったかな?

でも……これ、つかれちゃうんだよね……

戦士……ぼくもがんばるから、戦士もがんばって……






うわぁ……戦士がへやをこわしちゃったせいでなかにいたおんなのひとがすごくにらんでいるよ。しかもうしろからすごくたくさんのまものがおってきてるし……


やっぱりへやをこわしちゃだめだったんだよ!

ぼくはとめたのに!






戦士……ぼく、魔王をたおしてまってるから……まってるから、かならずきてね!






『けっし……て、振り返……らないで、くださ、い……ね』


騎士。ぼく、ふりかえらなかったよ。


『泣きたい時は泣け。疲れるくらい泣いて笑って、前を向くんだ』


盗賊。ぼく、まえむいていたよ。


『大好きでございました』


魔法使い。ぼく、魔法使いのことがだいすきだったんだよ?


『安心しろ必ず追いつく』


戦士。ぼく、まってるからね。


みんな……ぼく、これで魔王をたおすよ!

だから……ぼくのことをみていて!


「はぁぁぁぁぁぁ!」


「ぐっ……!」


けんをさして……!


「これで……おわりだー!」


けんからひかりをだすまほう!


「ぐぁぁぁぁ!」


魔王のからだからひかりが……


「くくく……くくくかかかか! 見事! あぁ、見事ぞ、勇者よ! よくぞ我を討ち滅ぼした! よくぞこの勇者を討ち滅ぼした!」


勇者……魔王が勇者……?


「この魔王は、この勇者はようやくここで死ぬ事が出来る!」


いったいどういうこと……?


「次はお前の番だ」


ぼくの……


「あぁ……お前たちと共に同じところに行きたかったが……どうにもそうはいかんようだな。またどこかで……会おう」


そうして魔王のからだははいになってきえた。

この物語では『』の場合、そこにいない人物が喋っていることになります。


それがどういう事なのかは……次のお話で。

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