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魔王と勇者

かつて勇者と呼ばれた男がいた。


最初は1人だった勇者も旅をつづける内に仲間が増えていった。


盗賊、魔法使い、僧侶、戦士。


当時の魔王はあまり部下を持たない主義なのか、道中邪魔はされなかった。


全員で生きて帰る。


魔王の部屋の前で誓ったその言葉は叶えられることはなかった。


先に戦士が倒された。


僧侶を魔王の攻撃から庇ったからだったか。


次に僧侶が倒れた。


戦士と一緒に倒れたかどうかは記憶が定かではない。


次に盗賊が倒された。


魔王の背後から仕留めるまではいかなくとも足止めでもと思ったのだろう。


とっくに気づいていた魔王に心臓を1突きされたが。


最後に残ったのは『俺』と魔法使いだけだった。


魔法使いはなんと言ったのだったか……


そう、全員道連れになってゴメン、だったな。


俺の命と魔法使いの命、さらには魔力の暴走で発動条件が揃った禁術サクリファイスを発動したのだった。


まぁ、不発に終わった訳だが。


魔王はそれすらも見抜いていた。


魔法使いの足元に展開していた魔法陣を破壊し、そのまま魔法使いの命を奪ったのだったか。


それから先は覚えていない。


いや、唯一覚えているのは『俺』が魔王と相討ちになったことと、


目が覚めたら魔王になっていたことくらいか。






「魔王!」


我が遠い昔の記憶を思い出していると、扉が乱暴に開かれた。

そう、乱暴に扱うでないわ。壊れた時に直すのは誰だと思っている。


「おお、勇者よ。よくぞここまでたどり着いた。よくぞここまで


仲間の屍を積み上げ歩いてきた。


褒めてやろう」


我の言葉に幼き勇者は強く歯を噛み締めていた。

何を悔しく思う必要がある?

事実を述べた迄よ。


「歴代の勇者の中でお前は最年少だ。では、この魔王がなぜお前より前の勇者を知っているのか。それは誰もこの魔王を打ち倒せていないからだ」


幾度となくこの我を倒さんと意気込んで勇者が乗り込んできたが……その全てを返り討ちどころか命を奪ってやった。

まぁ、臭いが酷いと娘に怒られたために臭いを消す魔法を開発するハメになるとは思わなんだ。


「お喋りを楽しみたいところだが……そうはいかんようだな」


魔王の面白トークなら腐るほどあるのだが……そう殺気をだしながら剣を構えられては我もやる気を出さないわけにはいかなんだ。


「いいだろう。その脆く積み上げた屍の上に新たにお前の屍を積んでやろうぞ」


我が言い終わるが早いか勇者は愚直にもこちらへと真っ直ぐに突っ込んできた。


青い、青いな。


「愚直に突っ込んでくるか。死に急ぎやしないか?」


やはり若いだけあって今までの勇者よりその剣もまた未熟か。


「む?」


我が一撃で終わらせようとしたその時、勇者の姿が消えた。

なんと、どこに消えたというのだ?

我は玉座に座っている。となると、横に回ったか?

だが、左右を見渡せどその姿はあらず。


「ふむ、少しは面白くなってきたな」


どれ、また娘に怒られるが、この部屋を破壊しようか。さすればどこに隠れていようと無駄よな。


「やぁぁぁぁぁぁ!」


「……ほう」


我の背後を取ったか。我に気配を察知させずにどうやって回ったのか気になるところだが……仕方がない。


「だが、甘いぞ?」


背中から1突きしようという魂胆か。見え透いているぞ?

何しろ我の背中はこの世で1番硬い鋼より硬いのだからな。


「それだけじゃない!」


「ぐっ。この光は……!」


入口に待機していた我が部下が全滅したのはこれのせいか!

ええい、眩しくて叶わん!

背中ごしだというのになんという光なのだ!?


「騎士からおしえてもらったわざのだしかた。盗賊からおしえてもらったせなかにまわってからのこうげき。魔法使いからおしえてもらったすがたのけしかた」


なるほど、我が配下の四天王にやられた勇者の付き添いから教えて貰っていたのか。


通りで一撃が重いはずよな。


「そして戦士からおしえてもらったじこきょうかのまじゅつ! これでおわりだ、魔王!」


お前は、いやお前こそ


「この我を倒すに相応しい! さぁ、お前の全力を持ってこの我を倒して見せよ! 1000年も生きながらえているこの老いぼれを、倒して見せよ!」


そして、長きに渡る因縁に決着をつけてくれ。

もう『俺』は疲れた。

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