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Triple Alley  作者: 立花りん
―卯の章―
7/7

p.07




***


怖い夢を見た。2人が自分から離れていく夢。気味が悪いと嫌われる夢。待ってと手を伸ばして、そして目が覚めた。

いつもの船室にいた。ルークがこちらの布団に入り込んでイビキをかいていた。ノブはその向こうでスヤスヤと眠っている。まだ陽は昇っていない。

2人を起こさないようにそっと伸びをして、自分が冷や汗をかいていたことに気付いた。眼帯の下に畳んで置いてあるハンカチを取り、手早く拭った。

船が穏やかに揺れていた。今日は波も静かだ。それにしても、昨日までの嵐は大変だった。それまで新品同様だった船が大破して、4人で修理するうちに1日が終わってしまった。おかげで腹がスカスカだ。

窓から暗い空を見る。そろそろノブが起きる時間だろう。

まもなくノブがモゾモゾ動いた。目をぼんやりと開けて上体を起こした。ゆっくり顔をこちらに向けたので、目が合った。

ノブは少しの間動かなかった。急に丸い目を大きく見開き、窓を振り返った。寝坊だと思ったようだ。

「大丈夫、寝坊じゃないよ」

「えっほんとに?よかった~…」

ホッと溜め息をついた。考えていることぐらいすぐ分かる。もう長く、この2人とは一緒にいる。

ノブはルークを起こさないよう注意しながら立ち上がり、船室を出ていった。朝食の準備をしに行ったのだ。

ルークはまだ寝ていた。今では自分の布団に戻っていたが、幸せそうな顔で何やら寝言を呟いている。犬の耳にも見える跳ねた髪の毛が嬉しそうに動いている。食べ物の夢だろう。

夢。

つい先程見た夢が甦った。背筋が凍り付き、鳥肌が立った。

大丈夫、あの時2人は綺麗だと言ってくれたじゃないか。気にしすぎなだけだ。

そう言い聞かせて再びルークを見る。部屋の外でノブが動き回る音がする。耳を澄ましていると、樽を蹴飛ばして痛がる音も聞こえてきた。考え事をしていて躓いたに違いない。あいつはよくそうやって目の前が見えなくなる。結構な騒音だったが、やはりルークは起きない。笑顔で涎を垂らしながら口を動かしている。まだ食べる夢を見ているらしい。

ルークがあまりに面白いので観察していると、やがていい香りが漂ってきた。もうすぐ起こした方がいいだろう。

試しに肩を揺すってみたがまるで効かない。鼻を摘まんでみると、これは効果あった。フガフガと苦しそうに唸り、眉根を寄せている。犬耳がピンと跳ね上がり、ついに瞼が薄く開いた。

「……フガ?」

「もう朝食だよ。起きなよ」

「朝食?もう食べただろ?」

「いらないんならいいよ、僕達2人で食べちゃうから」

「あっあれは夢か!いるいる、食べます!!」

会話するうちに頭が起きたらしく、必死にすがり付いてきたのが可笑しい。嘘だと告げると今度は怒ったフリをしてそっぽを向いた。フリなのがバレバレだ。ルークは相変わらず面白い。

精一杯怒って見せる背中に愛しさが込み上げてきた。初めて出会えた大切な家族を、二度とあんな目には遭わせたくない。

ノブがドアを開けて声をかけてきた。


「ルーク、ヨシノ!ご飯出来たよー!」


***



―卯の章 完―


………とっても好きな作品です笑

まさかこんな所で再び投稿の機会を頂けるとは思っていませんでした!

またお付き合い頂けますと幸いです(⁎ᵕᴗᵕ⁎)

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