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Fabula de Yu 短編集  作者: モモ
3/7

Song2-君の名は希望-

song1と合わせて、リナ編です。

リナの提案の翌日昼。

わたし達はリナの作戦に沿って行動している。


その作戦とは。

この国【リィンバース】の非戦闘員である住民を逃がす。

その後、この国をぶっ壊す。

大きく分けてこのふたつ。


帝国軍はすぐそこまで来ている。

あの戦場からの最短距離を結ぶ道はリナが壊してくれたが、遠回りすればこの国に着く事は出来る。


先日の戦いでの帝国軍の陣容には車輌兵器は無く、騎馬隊と歩兵で組織されていた。

その騎馬隊が早駆けで一日中走り通したとして算出された猶予が三日。

ならばその三日で住民を逃がし、市街の中心部を破壊、この国の中枢機能を失わせる。

そうすれば帝国軍は、市民もおらず、魔法研究国としての機能まで失ったリィンバースに留まろうとはしないだろう。

魔法研究国としての機能を失ったとしても、人がいれば街はまた創れる。



この作戦の要は、どのようにして住民を逃がすかという事。

避難警報はあるが、それでは元老院にすぐ気付かれてしまう。

元老院の配下の兵は元老院に忠誠の魔法令呪(まほうれいじゅ)を刻印され、その命令に背く事は出来ないので見つかればたちまち戦闘になる。

無駄な時間は掛けたくなかった。

それに一件一件の家を訪問して避難指示を出すというのは現実的ではない。


だから仕方なく、乱暴な手を使う事にした。


リィンバースを囲む高い壁。

それを破壊する。

この国は、魔法技術の研究と発展を目的として作られた。

だからそれらの情報の流出を防ぐ為、リィンバースの周囲を高い壁で囲い、東西南北に門を設けて出入りを管理していて、基本的な出入りはその四箇所の門からのみ。

だけど、北東から南西へと川の流れを利用した用水路がある。

その用水路が通っている部分の壁を狙う。


上流側には浄水施設、下流側には下水処理場と水力発電所が設けられており、その全てに元老兵が配置されている。

なのでまずは、街の外の上流で川の流れを制御しているダムを破壊。

濁流が浄水施設を襲い、貯水量が限界を超える。

その水は河岸から溢れながら街中を進んでいく。

それによって生じた混乱に乗じて、下流の発電所を襲撃。

発電の為の機械が川の流出口に設けられている為、それを爆破すれば、それを起点に壁も崩壊する。

そして、それを帝国の襲撃に見せかけ、住民達を逃がす。

数キロ行けば共和国領内の街がある事は誰でも知っているから、その街か、別の街でもいい。


中心部を破壊する為の方法はリナが考えてくれるらしいけど、多分行き当たりばったりで行くんじゃないかな…


あの部屋を出た時から作戦は始まっている。

わたしは発電施設を襲撃する班だ。

ダム破壊組の破壊成功を待って襲撃を開始する。


ダム破壊作戦の開始時間から暫くして…

下流側の川の流れが急増した。

その流れの中にはダムに使われていた木や、大量の土砂が混ざっている。

わたし達の出番だ。


施設への潜入。

これは、遠隔魔法の使い手でもあるわたしが、門番を眠らせるところから始まる。

四人からなる小隊で守られているが、構わず範囲魔法をぶち込む。

ドサッという音が四回聞こえてきたのを確認して、潜入開始。

こちら側は潜入と工作の班なので全部で六人。

わたしともう一人が魔法で撹乱と援護。

二人が爆弾を設置する工作隊。

あとの二人が周囲を警戒し、接敵した場合の接近戦を担当する。


敵影が見えたら力ずくか、魔法でオネンネ。

何回かの接敵を経て、わたし達は発電施設のタービンがある機械室へと辿り着いた。

内部で保全作業をしていた兵士、というか技師達がいて、最初は騒がれたけど、事情を説明したら危害を加えないという事を条件に協力を取り付ける事に成功。

こっそりと家に帰ってもらい、壁の崩壊と共に近隣の住民に避難を促してもらう事になった。


さて、ここからが本番。

工作隊の二人が爆弾を設置していく。

爆弾といっても、ただの爆薬ではない。

機械を動かす為のエネルギーを蓄えたもので、この発電タービンをオーバーヒートさせるのだ。

発電量が蓄電量を超過した際、その余剰分はタービンのあるこの機械室内で暴れ回る事になる。

そうして、その他の色々な機会を壊しつつ、更に溜まった電力は機械室から飛び出し、発電施設全体を襲う。

そうなったら最後、蓄電施設や燃料貯蔵庫にまで暴走したエネルギーが辿り着き、施設のあちこちで連鎖的に爆発が起きる。

壁に埋め込まれる形で建造された発電施設全体が爆発すれば、その周りの壁にも影響する。


小さなヒビさえ入ればいい。

そうすればあとはわたし達の魔法でぶっ壊す。


…そう…そう思っていた時期がわたしにもありました。

無事に爆弾を設置して脱出を果たしたまでは良かった。

が、その後が良くない。

いや、爆発自体は想定通りだったんだよ?

でもまさかあんな規模で起こるとは思わないじゃん!!


多分、内部で水蒸気爆発だか水素爆発だかが起こったんだと思うけど、もうその答えなんぞ知りたくもない。

つまりだね、結果として、爆風は上空に立ち込めていた曇り空を吹き飛ばし、この国のどこにいても一目で分かる大きさの穴が空き、地下にいようとも分かる大きさの爆音と瓦礫の崩れる音が数分間に渡り響き続けたってわけ。


わたし達六人は一様に悟りを開いたかのような顔でその光景を見つめていた。

そして崩れ落ちる瓦礫の最後のひとかけらが落ちた瞬間、脱兎の如く逃げ出したのである。


街は当然大パニック。

その中を、帝国軍の作戦により壁は崩壊したが周囲にまだ敵影は無いので逃げるなら今のうちだ、と触れ回っていく。


しばらくすると市民の総避難が始まり、東西南北の各門にも市民が押し掛けて暴動寸前にまでなったところで、門を突破していった。

そして、壁の崩壊から半日も経たずしてリィンバースの非戦闘員である市民は国外避難が完了したのである。


陽が沈み、柔らかな満月が登る深夜。

わたしはリナと合流すべく走っていた。

壁の崩壊と共に元老兵が街中を警邏(けいら)していたので、それを宵闇に紛れてかいくぐりつつ合流場所を目指す。


しかし、合流場所の空き家にはリナの姿は無く、代わりに数十人の元老兵が転がっていた。

焦りながらも、リナがいた痕跡を探す。

彼女ほどの実力なら簡単に捕まるはずはないし、捕まるにしても何かを残しているはずだ。


くまなく室内を探していたら、窓辺に何かがある。

見ると、リナが両手首にしていたブレスレットが置いてある。

そのブレスレットには二等辺三角形の飾りが付いており、その頂点の一つが窓の外にある尖塔を示していた。

その場所こそ、この作戦の最終目的地である【セントラルトゥリム】だった。


そこは、上層は元老院の住まいであり、下層は統合参謀本部となっている。

そして中ほどには、このリィンバースの住人と軍人を縛る為の(まじな)いや(のろ)いを機能させる為に必要な魔法陣が設置されている。


その魔法陣を全て消去する事こそが、この作戦の最終目的だった。

つまりリナは捕まったらあそこに連れて行かれる事を知って、わざと捕まったんだ。

元老兵の第一陣を全滅させてからブレスレットを置き、第二陣に捕まった。

わたしが必ず気付くと信じて。


「まったく、出会ってまだ二日なのに何でそんな簡単に信じられるのよ…」


わたしは他に誰もいない部屋の中で呆れていた。

知らず知らずのうちに笑顔になりながら。


そうして、わたしはまた走り出す。

左腕ではリナのブレスレットが月明かりに煌めいていた。





〜〜〜セントラルトゥリム・中央研究室内魔力解析室〜〜〜


「冗談では無いのだな?この小娘一人に元老兵二十人が全滅させられたというのは!」

「はい、どうやらそのようです。しかし、やはりそこで力尽きたのか、続いて差し向けた隊による捕縛には素直に応じた様子。今なら労せずとも魔術回路の解析が出来るでしょう」

「ふむ…二十人も倒しておいて、都合よくそこで力尽きるものなのか…?…まぁいい、魔力封鎖は行なっておるんだな?」

「は。今は魔力封鎖により魔力を運用出来ないはずです」

「よし、では解析を始めよ!」

「はっ!」




--------


体に力が入らない…

この部屋に入るまでは平気だったから、この部屋に何か仕掛けがあるのかな。

さっきの兵隊たちはそんなに強くなかったから、捕まってもなんとかなりそうって思ったけど、そう上手くはいかないか。

でもオネーサンの方は上手くいったみたいでよかった。


「ふふっ…!」


あの爆発…!

めちゃくちゃだったなぁ。

思い出す度に笑ってしまう。

爆弾は俺に任せろって言ってた人がいたけど、あの人が作ったのかな。

あれは思った通りの規模だったのかな。

だったら凄いけど、どうなのかな?

さて、あとはボクがここのどこかにある魔法陣を消せばいいんだけど、今は魔力が使えない。

オネーサンにはここにいるって示してきたけど、まずはボクが動けるようにならないと。

どうしようかな。



『聞こえるかね?』



ん?

ガラスの向こうででっぷりと太った人が何かを持ってこっちを見てる。

あれで喋るとこっちにも聞こえるんだ。



『聞こえているようだな。ワシは元老院長のヌメロン(ヌメロン)だ。この国の全ての研究員の(おさ)である。今、君の魔力回路を解析しているところだ。君の活躍は素晴らしいものだ。ワシが造った元老兵は一人で魔術中隊を相手に出来るのだが、それをあれほど短時間で倒してみせるとは。その魔力の秘密をワシにも教えてくれんかね?この国の更なる発展の為に、是非協力してくれ給え』


「何を言ってるの?もうこの国の崩壊は始まってる。住民の人たちはみんな逃げたよ。街を守る壁ももう無い。それなのに、まだこの国の発展とか言ってるの?」


『ハッ!住民など、この国を動かす為の道具に過ぎん!ワシが決めた研究内容をただひたすら研究して、成果さえ出せばいい。それと引き換えにワシの国に住まわせてやっているのだ。逃げたと言ったな?無駄なのだよ。この国の住民には魔法による刻印がされており、特別な許可がない限り数日以上この国を離れる事は出来ないのだ。この国の国民(やつら)に勝手に移住などをする権利など無い』


「な、なんでそんな酷いことが出来るの!?」


『酷いとは?子供の頃に教わらなかったか?道具には自分の名前を書きましょう、とな。国民(やつら)はワシの道具だ。失くさないように手を尽くすのが為政者の役目だろうが』


「あなた、どうかしてる。為政者って国を守る為にいるんでしょう!?それなのに何で…!」


『よいか、この国はな、ワシの一族が魔法を研究する為に必要な人員を集めた事から始まったのだ。研究員だけいればよかったものを、その家族どもが勝手に街を作り始めた。研究員には情報漏洩を防ぐ為の呪印(じゅいん)を刻んではいたが、当時の魔導技術では数多(あまた)いる家族にまでは手が回らなかった。()()()あの壁で囲ったのだ。その後このセントラルトゥリムが建造され、一括管理出来るようになった。国民(やつら)がこの国で働き、この国に住み、この国で死ぬのなら、ワシが生まれてから死ぬまでを管理してやらねばならん。そうせねば路頭に迷う者が出るかもしれんではないか。ワシの国でそんな人間を出すわけにはいかんのだよ。これを為政者の役目と言わずして何と言うのだ!』


「そう…あなたにはあなたの信じる道があるんだね…でも、それはボクが信じられるものじゃない。人間は、ううん、命を持っている全てのものは、もっと自由であるべきなんだ!!それに、管理するって言いながらあの将校さん達を処刑したのは何故!?あなたの理想の中では反対意見すら許されないの!?」


『あ奴らは反対意見を言いに来た愛国者ではない。この国を(いや)しき帝国に売り渡そうとした売国奴(ばいこくど)だ。そんな人間の生命を保証する必要など、どこにも無い!』


「違う!!あの人達は本当にこの国の事を思ってた!!本気であなたや他の兵隊さん達の事を想っていたんだ!!」


『黙れ小娘!!あ奴らは売国奴だったのだ!!ワシはそう報告を受けたから処刑を許可しただけに過ぎぬ!!もうよい、貴様の了承を経て穏便に魔術回路の解析をしようと思っておったが、もうやめだ。おい、構わんからやれ!』

『はっ』



その声が聞こえた直後、ボクを拘束している台から魔力が流れ込んでくるのを感じた。

黒くて暗くて、嫌な感じのする魔力がボクの体を包もうとしてくる。

これに包まれたらどうなるのかな。

腕と足の錠は固く、普通の人間並みの力しか出せない今の状況じゃ、ガチャガチャやっても壊す事は出来ない。

足元から包んでくるこの魔力がボクの目の前を通り越して頭の先まですっぽりと包み込んだ。

と思った次の瞬間。


〜パシュンッ〜


ボクを包み込んでいたオーラが消えた。

…あれ?

これだけ?

もっと嫌な魔力で攻撃でもされるのかと身構えていたのに、終わったみたいだ。


『まさか、これ程とは…!貴様は何だ?何故身体中を魔術回路が覆っている?この体組織は人間ではない。魔導兵器でもない。くぅー、全く未知の仕組みではないか!ええい分からんから早く教えんか!』


えええ…

なんなのあの人、さっきまでとキャラ違うんですけど…??


『む?どうした小娘。何を(ほう)けておる。もしや解析が一瞬で終わったのに驚いておるのか?フフン、聞いて驚くがいい!貴様が寝そべっておるそれこそ、ワシが数十年の研究を経て完成させた魔術回路解析装置だ。対象を無駄に傷付ける事なく解析する事が可能なのだ。やはり研究対象は生きておらねば意味がないからな。勘違いをするでないぞ?別に研究対象(アンタ)の為にそういう設計にした訳じゃないのだからな!』



やばい。

この人アレだ。

ツンなんとかってやつだ。

この人、もしかして元凶って言える程悪人じゃないんじゃないの。

さっき、報告を受けて許可しただけって言ってたし。

だとしたら、その報告をした人が…?


「ねぇ、ヌメさん。将校さん達を売国奴だって報告したのは誰?どんな人?」


『む?それはな、その将校達の属す我が軍の最高責任者であるグレイバートという者がだな、って何だヌメさんって!!おい!小娘!こっちを見んか!!おい!!』


「ヌメさん!そのグレイバートって人は今どこに!?」


『そのヌメさんてのをやめんか!!まったく…グレイバートは今、魔導兵器の格納庫にいるはずだ。あ奴は兵器廠(へいきしょう)の技術顧問でもあるからな。帝国軍の侵攻に備えておるはず。それがどうした?』


「ねぇその人、自分だけが使える強力な兵器なんて造ったりしてないよね…?」


『いや、あるぞ。先日完成したばかりでな、あ奴しか操縦出来ない魔導スーツがある。あ奴がそのスーツを着る事により、この国を守る為の最大の壁になるのだ』


「…もし、そのスーツがこの国を守る為じゃなくて、滅ぼす為に造られたものだとしたら…?」


『なに…?』


「そしてもし、その人が帝国の人達と繋がっていたとしたら?自分だけが使えない魔導スーツなんて造れる人が、探知されない連絡手段を考案出来ないはずがないよね…?」


『…それは、確かにそうだが…しかしあ奴は十年前にこの国に流れて来てからずっとこの国の為に技術開発に取り組んで来たのだ。あ奴こそ忠臣なのだぞ』


「共和国との覇権戦争が終戦を迎えても、帝国は周辺諸国への侵攻をやめてない。終戦からもうすぐで三十年だけど、その間に七つの小国が帝国に呑み込まれたよね。そのうちのいくつかは、国が内乱状態になって疲弊しきったところに帝国軍が侵攻してる。そしてその国のトップを処断して、帝国に任命された執政官が着任して、その国は完全に属国(ぞっこく)になってる」


『うむ、それくらいは誰でも知っておる。続きを話せ』


「うん。ボクはこの国に来るまでは色んな国を渡り歩いて来たんだ。だからそういう属国の人達にも話を聞く事も出来たんだけど、執政官になった人は元々の国の要職に就いてたんだって。それこそ技術所の所長とか、大臣とか」


『…』


「執政官としての権力は絶大だよ。新しい国王になったと言ってもいい。現状、属国は荒れ放題な国が多いって。でも帝国軍が駐留してるから内乱とか暴動もすぐに鎮圧されちゃうんだって。さっき言ってた、全住民への刻印の効果で、今は逃げて難を逃れてる人達が強制的に連れ戻されて、そしてその時にヌメさんが処刑されていたら?この国の人達を守るのは誰?」


『ぬぅ…しかし、お前の話には何の確証も無いのであろう?グレイバートは…む?どうした?』



ヌメさんの声が途切れた。

でもガラスの向こうで助手っぽい人と話してるのは見える。

いくつか言葉を交わした後、またこっちを向いた。



『聞け小娘。たった今グレイバートから通信が入った。対帝国軍用の魔導スーツの更なる強化が完成したそうだ。その姿を是非見て欲しいとの事でな、ワシは下の兵器廠に向かう。お前が抱く疑念は実際にヤツに会って証明してみてはどうだ?』


「えっ、一緒に行っていいの?」


『うむ。解析も済んだし、この部屋は誰かを長時間拘束する為には出来ておらん。ワシの解析装置を壊されてもかなわんからな。ただし、魔力を抑える手錠は着けてもらう。お前は今もまだ反逆罪に問われる罪人なのだ。今用意させるからそのままで待て』


「分かった!」


そして、ヌメさんと話してた人がこっちの部屋に入ってきて、解析装置の拘束を解いてくれた。

代わりに手錠を着けられたけど。

逃げようと思えばこの人を気絶させる事も出来たけど、今は身体を上手く動かせそうにないからやめた。

それにこの二人は悪い人じゃない気がする。

ボクのこういう勘は当たるんだ。


手錠を着けられて、ヌメさんとその助手の人と一緒に階下にあるという兵器廠に向かう。

着いた場所はとても大きな格納庫。

そこは、昨日見た元老院の入り口の反対側にあるらしく、建物十階分くらいの高い天井と、それと同じくらい大きなスライド式のドアが口を開けていた。

その向こうには宝石のように瞬く星空が広がっている。


そしてそのだだっ広い格納庫の中央に、男の人が立っていた。

(かたわら)らには赤銅色(しゃくどういろ)の鈍く輝く人型のなにか。

あれが魔導スーツ…?



「待たせたなグレイバート。首尾はどうだ?」

「あぁ、ヌメロン様。こちらこそお披露目が遅くなりまして申し訳ありません。つい今朝方、必要な素材が届きまして、ようやく完成したところなのです。つきましては、このスーツの威力をご覧になって頂きたく存じます」

「うむ。大儀であった。ではその威力とやらを見せてくれ」

「はい。ところで、そちらのお嬢さんはどなたです?手錠をしているところを見ると、捕虜ですか?」

「あぁ、うむ、そんなところだ。まぁ気にするな」

「これは失礼をば。では始めます」



グレイバートさんが両手首に何かを着けた。

右手を上げてスーツに向けると、スーツの前面が開いて、そこに体を収めていく。

体がすっぽりと入ったと同時に開いていた部分が閉じ、(くら)い闇しか無かった双眸(そうぼう)に赤い光が灯った。


「ご覧くださいヌメロン様。魔鉄鋼を極限まで薄く伸ばし、それを何層にも積み重ねてこのスーツの装甲としました。同時に魔術解析と魔術相殺の術式も組み込み、そこらの魔法ではかすり傷ひとつ付きません!動力は周囲の魔力ですので、対個人としても対集団としても存分に活躍出来る事でしょう!」


「なんと、そこまで凄いとは!これがあればお前一人で小国を潰す事すら出来そうではないか!」


「…そう…思われますか…?」


「む?そうだな。それほどの性能があれば可能であろう」

「そうですね、可能でしょう。例えばこのリィンバースでさえも」


「…ほう?そうか…では聞くが、今朝方に部品が届いたと言ったな?それはどこからのものだ?この国に届く荷物は、帝国との戦争状態に入り次第全て各門で差し止めてある。門から国内に持ち込む為にはワシの許可が必要であると厳命した。それはお前も知っておろう?ならその部品はどこから来たのか、何故ワシが知らないのか、その理由を聞かせてくれるか」


「…成程…私欲に(まみ)れ、私腹を肥やすような暗愚(あんぐ)に成り下がったと言えども、そのくらいの頭は回りますか。よろしい、教えて差し上げましょう。最後の部品とは、()()()のものですよ。魔術相殺の為のアンチマジックシールド発生装置がどうしても必要だったものでね。この国の魔術体系と私の技術を持ってしても、このスーツに永続効果を着けられなかったアンチマジックシールドが、拳サイズのちっぽけな機械によって生み出される。この効果を実感した今、私は帝国と交戦する理由がない。どうですヌメロン様、一緒に帝国に降りませんか?私達の魔術と帝国の技術を魔導術として昇華させていきましょうぞ!!」


「フン、ワシは暗愚でよいのだ。執政として実務を執り仕切る元老院が機能しておれば、ワシは悪評を浴びる為の象徴として立っているだけでよい。しかし、その元老院どもの死体があそこに転がっているという事により、その理想形は崩れ去ったがな」


「おや、気付きましたか。隠蔽魔術を掛けておいたんですけどね。その通りでございます(イグザクトリー)。元老院の者共にはスーツに搭載された武器の(まと)となって頂きました。その上でヌメロン様、いや、ヌメロン。あなたが消えればこの国は私のもの。あなたの首を掲げて帝国軍を受け入れ、私の魔導術で共和国に攻め込む為の尖兵(せんぺい)となる。それが、誇り高き()()()()()()()役割なのだ!!」


高らかに叫ぶグレイバート。

彼が両腕を交差した途端、ガシャガシャと音を立てて形が変わっていく。

さながらそれは砲口のようで…


「危ない!!」


ボクは叫んだけど、それとほぼ同時、まばゆい光と共にその砲口は火を噴いた。


耳を(つんざ)く轟音を伴い爆発したそれを、ボク達に防ぐ術は無かったはずだった。

だけど、完全に無傷。

見ると、グレイバートが立っている方向に光り輝くシールドが出現している。


「無事か?」

「ヌ、ヌメさーん!!!」

「ねぇ、ヌメさんてやめてくれない…?」

「ヌメさん凄い!!こんな高密度なシールドを発現出来るなんて純粋な魔力が大量に必要なのに!!」

「フフン。ワシはただ肥え太っているのではない。膨大な魔力をその身に蓄え、それを色んな用途に合わせて用いる事が出来るのだ。この二十年程は戦乱にこの身を投じる事が無かった為、無駄に溜め込まれてしまっていたがな。これが我がオータムロード一族による魔力運用術である!!」

「すげぇー!!カッコいいよヌメさん!!」

「そうであろう!そうであろう!!もっと褒めよ!!」

「あ、次来るよ!!」


続いて襲いかかってきた数発の砲撃もそのシールドで防いでみせるヌメさんことヌメロン・オータムロード。


「ほう。正面からでは崩せんか。ならばこれはどうだ?」


腕の交差を解き、その指を広げてボク達に向けるグレイバート。

その十指が光り輝いた瞬間、十本の熱線が放たれた。

それは真っ直ぐぶつかるかと思ったけど、シールドの直前で軌道を変え、シールドが無い真後ろへと向かう。


「フンッ!」


ヌメさんが振り向き真後ろにシールドが出現するも、正面のシールドが消えてしまっている。

それを見て勝ち誇ったような表情になるグレイバート。


「やはりな。それだけ高密度だとドーム状に張り巡らせる事は出来ないようだ。なら次は十本のレーザーを全方位から襲わせよう。それでも防ぐ事が出来るかな?」


「くっ…おい小娘!」

「なに?ヌメさん!」

「あ奴の言う通りだ。密度を薄くすれば全方位は(おお)えるが、それだとあの威力の全部は防げぬ。それにこのシールドは魔力の消費が激しい。だからワシと助手でこの一回は防ぐ。その後にお前があ奴を叩け!」

「わかった!じゃあ手錠外して!」


「何をコソコソと話している!!喰らうがいい!!X(デケム)レーザー!!」


爆発音を伴う砲撃とは違い、電撃のような音を立てて襲い来る十本のレーザー。

ヌメさんは宣言通りに正面に来たレーザーを全て防いだ。

後ろは助手の人が。

でも、ダメだこれ。

ヌメさんは大丈夫だけど助手の人じゃ魔力が足りない。


落雷のような音が響き渡り、ボク達の周りは黒い煙で埋め尽くされた。


「正面は防いだようだが、後方にまでシールドは回せなかったようだな。さて、邪魔者は消した。帝国軍を迎え入れにい…」

「どこ見てるの?」

「なっ!?」


硬くてぶ厚い金属を打ち据えた音。

驚愕の表情を浮かべてボクから距離を取ったグレイバートが叫ぶ。


「バカな!!今の技は先程までのシールドでは防げないはず!一体…!?」

「うん、それに気付いたからボクがシールドを出したんだよ。簡単でしょ?そんな事より、もう夜も明けてきた事だし、そろそろ決着にしようよ」


ボクはこれまで貧困や災害に襲われた国はいくつも助けてきた。

でも、戦争で滅亡に向かう国を助けるのはやめていた。

それは戦争はヒトの営みな訳だし、創世の女神のボクが助けちゃったら見守るっていう領分を超えちゃうから。

そうやって線引きをして、ボクの内側に置かないようにしてた。

でも、やっぱりヒトは面白い。

オネーサンもそうだし、他の兵士の人も、そしてさっき全力で守ってくれたヌメさんも。

ボクはこの人達を護りたい。

だからグレイバート(この人)はここで止める。


ボクが持つ武器は剣と盾。

ボクが先頭に立ってみんなを護る為にこれを選んだ。


その(ホープソング)は魔法を断ち切る剣。

魔法を打ち消す効果が付与されていようとも、それは術式。

この剣には無意味。

的確に魔導スーツの装甲を切り裂いていく。

スーツのあちこちから繰り出される多彩な攻撃は(ソルヒロス)が防ぐ。


着実にスーツに蓄積されていくダメージ。

(ホープソング)がなぞった所は跡となって残り、術式を消されたせいか、段々とスーツの動きも鈍くなってきた。


「き、貴様!!なんなんだ貴様は!!」


怒りと焦りで感情的になるグレイバート。

攻撃が直線的で単調なものになる。

複数の属性を持つ魔力弾や雷撃や火炎を防ぎ、あのレーザーをボクの魔力で完全に打ち消してみせる。

おそらくこれ以上の攻撃は無さそう。


そろそろ決着の時かな。


「もうやめようよグレイバートさん。これ以上は意味ないよ」

「意味が無いだと!?貴様に何が分かる!?」

「あなたの気持ちは分からないよ。分かりたくもない。けどこれは分かる。あなたはボクには勝てない。帝国軍のもとに行きたいなら行けばいい。でもこの国は放っておいて!」

「それが分かってないと言うのだ。十年以上を掛けた計画なんだぞ。それが失敗したとなったら帝国にも居場所は無い。だから…貴様のせいで失敗するのなら、私には…死しかない…」


フラフラと歩き出すグレイバート。

格納庫の真ん中あたりでピタリと立ち止まって、動かなくなった。

何をしているんだろう?


「気を付けろ小娘!!ヤツの魔力が跳ね上がった!!何かするつもりだ!!」


ヌメさんの叫び声が聞こえ、グレイバートを見る。

魔導スーツが赤く光り輝いていく。

明滅を繰り返すその光に危機感を感じたボクはグレイバートに駆け寄っていく。


「気付いたようだがもう遅い!!私は貴様らもろとも自爆する!!貴様らさえ居なくなれば帝国軍がこの国を支配出来る!!住人も力で捩じ伏せればいいのだ!!」


ボクはグレイバートの暴走する魔力を抑えようとする。

だけど、閉じ込めるより解き放つ方が簡単で、力加減はいらない。

ボクの魔力だけじゃ足りない…!


「まったく、世話のかかる小娘だ!」

「そうですね、我々がお世話しないと!」


ヌメさんと助手の人も駆け寄ってきて、三方向から魔力を抑え込む。


「ヌメさん!助手さん!」


「無駄だ!!このスーツにはこの国の全住民の十年分の魔力が蓄えられている!!お前たちなんぞに止められるものか!!」


現時点でのエネルギー量で、三人で抑え込むのがやっと。

これ以上魔力が増大したら…!


その時、ボクの後ろ側、兵器廠の入口側から足音が聞こえてきた。


「ごめんお待たせ!何がなんだか分からないけど、わたしも加勢するよ!!」

「オネーサン!!」

「参ったよー。捕まってるだろう場所を片っ端から探したのにどこにも居ないんだもん!そしたらバカでかい魔力を感じて、来てみたらコレでしょー?意味わかんない!」

「うん、ボクもよくわかってない!」

「だと思った!とりあえず、こいつを抑え込もうとしてんのね?でも、多分そうじゃない方がいいよこれ!」

「どういう事?」

「抑え込むより、お望み通りに爆発させてあげた方がいいって事!」

「でもそれじゃあ!」


オネーサンは爆発させろって言う。

もしや自爆に巻き込まれても良いって事かとオネーサンの顔を見ると、すぐにそれが間違いだって気付いた。

だってその顔は、諦めた人のモノじゃなかったから。


「オネーサン、何か考えがあるんだね?」

「うん。準備するのにちょっと時間かかるけど、その間三人で抑えられる?」

「イケるでしょ!!ねぇヌメさん!?」

「ヌメさんと呼ぶなと言うておろうが!!」

「どうなの!?イケんの!?」

「イケるに決まっておろう!!ワシを見くびるでない小娘!!」

「決まり!!助手の人も頑張ってね!!オネーサンいいよ!!」

「よし!」



リナの合図を機にわたしは数メートル離れた。

一人分の魔力が無くなって、三人にその負担がのし掛かる。


急げ。

でも焦るな。

ここからはノーミスでやらなきゃ。


深く息を吸い込むながら集中力を高めていく。


「世界を巡る風。吹き荒ぶ風。この世の全ての風を統べる者よ。契約者の名において命ず。その力をここに(あらわ)したまえ!シルフ!!」


その名を叫び終えた直後、わたしの魔力がごっそり持っていかれる感覚。

代わりに、わたしの目の前には小さな暴風の塊が出現している。

その風の中から顕れしその者の名は、風属性を統べる上位精霊シルフ。

その体は小さいが、そのひと息で燃え盛る火山を鎮火せしめ、大海を波立たせて大海嘯(だいかいしょう)を起こし、陸地を飲み込ませる事も出来る。


だけど、そこまで大きな事を仕出かすには代償となる魔力も途轍も無いものになってしまう。

正直、一人でそんな事は出来やしない。

だから今回は、ほんの少しのそよ風を起こしてもらうんだ。


「さぁ待たせたわね!いくよ!!」


シルフがその息を吐いた。

それは暴走するエネルギーに呑み込まれているグレイバートの下に潜り込み…

まるで風船の空気が一気に抜けたような甲高い音を響かせて真上に飛び上がった。


「ぬおおおおおおおお!!」


奇声を上げながら吹き飛ぶグレイバート。


「リナ!合わせて!!」

「え!?」


魔力に指向性を持たせる為の杖をグレイバートに照準し、リナに向けて叫んだ。

一瞬キョトンとしてたけど、すぐに意図が通じたようでわたしの手を握った。


「行くよ!」

「うん!!」


二人の魔力が合わさり、強力で純粋な魔力として発射された。



「「行けぇぇぇぇぇぇ!!!」」



空中に浮かぶエネルギーの塊にわたし達の魔力弾がぶつかり、上へと押し上げる。

そのまま格納庫の天井を突き破ってセントラルトゥリムの中心を貫き破壊しながら、更に上へ。

そしてセントラルトゥリムの中央あたりで、遂に臨界を迎えた自爆エネルギーが爆発した。


閃光と爆発音に包まれるわたし達。


続いてセントラルトゥリムの残骸である瓦礫が降って来る。

ドスンドスンと言う音を立てていた瓦礫の雨が降り止んだ後、光り輝くシールドが消えた。



「はぁぁぁ〜〜助かったよヌメさん〜〜〜!!」

「本当に、ありがとうございますヌメロン様…」

「まったく、お主らは無茶をし過ぎだ。真上で爆発したらこうなると分かりきっておるだろうが」

「いやぁ、そこはヌメさんが守ってくれるって信じてたからサ!」

「黙れ小娘。それは信じるとは言わぬ。ただの他人任せだ。まぁ、あのまま自爆されたら我々は無事では無かったであろうからな。それに対しては礼を言うが。よくやったぞ小娘」

「へへへ…」


「うまくいったねオネーサン」

「…ロコマ」

「へ?」

「私の名前。ロコマって言うの。いつまでもオネーサンって呼び方じゃ、ね。なんか名乗るタイミング逃しちゃってて、ゴメンね」

「ううん、嬉しいよ!よろしくね、ロコマ!」

「うん!よろしく、リナ!」


「作戦は大成功だね!ヌメさんには悪いけど!」

「フン…まったくだ。まぁ、こうなっては仕方ない。呪印の魔法陣はセントラルトゥリムもろとも全て消し飛んでしまった事だし、ワシだけで研究をする為の研究所でも作るか」

「私もお伴しますよ、ヌメロン様」

「ほう、ならば頼むとしようか」



ヌメロン様と助手の方は憑き物が落ちたかのように晴れやかな表情で、地面に座り込んでこれからどうするかを話し合っている。

街の中心部は瓦礫の山と化し、門は破壊され、壁も崩落している。

そして今は住民もいない。

が、この二人ならなんとかやっていけるのかもしれない。


わたしとリナはまだ寝転がっていたんだけど、急にリナが体を起こして南へと走り出して行ってしまった。

わたしが慌てて追い掛けると、夜が明けて白み始めた南の空に黒い点が見える。


「リナ!あれは!?」

「分かんない。でも、凄い魔力を持ってる」


話すうちにもどんどん近付いてくるそれの姿がはっきり見えた。


「ドラゴン…」

「うん。あれは小龍種(レッサードラゴン)ってやつだね。ヒトが騎乗する為に訓練されたんだと思う」


小龍種(レッサードラゴン)が、わたし達の数メートル手前で止まって、その背中から黒く輝く鎧を着た人が降りてきた。


「やぁ、初めまして。俺は帝国軍第五方面軍指揮官のグレイル。先日からこの街へ進行中だったんだが、昨日の昼間の爆発を探る為に単騎で偵察に来ていたら、さっきまた爆発が起こった。生体反応があったから救助に来たんだが、その必要は無かったようだね。よければ事情を教えてくれないか?」


わたしは昨日の昼間からさっきまでに起こった事をかいつまんで説明した。


「なるほど。元老院長のヌメロンは先程の爆発で()()。町民達も昨日の昼間の爆発事件を受けて避難していて、軍人は寄せ集めの研究員達だったと…」

「その通りです。わたしはその軍の生き残り。そちらの彼女はわたしの補佐官です。この国はもう既に無いので、落ち着いたら何処かに向かって出立するつもりです」


「ふむ…先程の爆発は君達が起こしたと聞いたが、そうなると君達は帝国にとって危険因子だ。無理に捕らえるなんて事はしないが、よければこのまま帝国に来てみないかい?どちらにせよ、俺が上層部に報告する時には君達の危険性には触れない。どうだ?悪い話ではないと思うが」


思わぬ提案に目を丸くするわたし達。

嘘を付いたのはこの場を早く切り上げたかったからで、まさかこう返されるとは思わなかった。

反応出来ずにいるわたし達を見て、グレイルさんが話を続ける。


「君達は我が妹の良き理解者になってくれそうな予感がするんだ。跳ねっ返りでじゃじゃ馬でね、キリンなんていう幻獣までも手懐けてしまうような女だが、君達なら仲良くやれそうだ。返事はすぐじゃなくていい。そうだな、我々はあと三日、この地の調査の為に駐留する予定だ。駐留地は先日の戦闘があった場所。もし来てくれるのであれば、そこに三日以内に来てくれ!じゃあ俺は行く!良い返事を期待しているぞ!さらばだ!!」


言いたい事だけ言ってさっさと小龍種(レッサードラゴン)に跨って飛んで行ってしまった。


「凄い勢いの人だったね…」

「うん…あんな人もいるんだね。ボク、人間に対する評価を改めないといけないかも…」

「わたしも。ここ数日で絶望しかけてたからなぁ。世界は広いわ」

「うん。世界は広い…」


あ…今リナが何考えてるか分かっちゃった…


「リナ?」

「んー?」

「とりあえず、ウチに帰らない?今日は休も?」


こんな事を言ってしまったのは、引き止めたかったからなのかもしれない。

まだこの子と一緒にいたかった。

でも…


「んーん。行かない。ボク、行きたい所があるんだ」


「もう、行くの?」


わたしは彼女にそう尋ねた。


「うん、行くよ!」


彼女はわたしにそう答えた。


そう答えた彼女の笑顔は、瓦礫の山と化したこの街でも、キラキラと輝いて見えた。



「分かった。じゃあ、ありがとね…短い間だったけど…」

「ん?何言ってんの?」

「え?」

「え?ロコマも一緒に行くんだよ!?当たり前じゃん!!」

「いいの…?」

「よくない理由なんて無いよ!!これからも一緒!!」

「うん、うん!何があってもそばにいるから!!」



そして、わたし達は歩き出す。

希望を胸に、太陽の光を浴びながら。

この先の未来が明るいものになると信じて。



fin…?

最後まで読んでくださってありがとうございます。

長くなってしまいすみません。

(現時点で最多文字数)

今度お会いした時に五体投地して感謝の意を表したいと思います。


これにて、ロコマ&リナ編は一旦の終了です。

ロコマのネーミングについては、ただ裏返しにしただけでは無い意図が隠れています(隠れきれてないけど)。


本編はこのリィンバース編の数年後です。

グレイルさんの妹さんは誰なんでしょうね?


ちなみにグレイルさんは今回限りの登場にするつもりです。

そしてグレイルという名前を知ってる人に私信ですが、あれは私ではありません。

別人格です。


それでは。

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