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女奴隷の心境

2

 ここに来てからもう何日目だろう。

 もう疲れた。死にたい。きっと妹がいなかったらもうきっと死んでただろう。

 こんな汚い場所、誰だって来ない。

 あの扉が開くのだって1日に1回。それも人数分のパンを放り込む時だけ。

 しかも、ここには欠損奴隷しかいない。

 欠損奴隷を買う人なんて異常な性癖を持っている人しかいないだろう。

 それでも妹だけは買われて欲しい。

 妹だけは生きていて欲しい。

 妹だけは絶対に死なせない。

 私はそんな覚悟がある。

 おそらく今日買われなかったら私達は殺される。

 あーあ、短い命だったなー。せめて妹はどうにかして生きて欲しいなー。

 そんなとき、扉が開いた。

 おかしい。

 まだパンが放り込まれる時間ではないはず。

 どうしたんだろう?

 「お客様だ。おとなしくしろ」

 オキャクサマ?

 どういう事だろう。

 「ささ、お客様。こちらへどうぞ」

 すると、

 「ありがとう。店主さん」

 と言って、1人の男性が入って来た。

 すると我先にと奴隷達が動きにくい体を一生懸命動かして、男性に詰めより、買ってもらえるよう必死にアピールを始めた。

 私もいかなきゃ、と思うと、まだ完全にある左手と左足を動かして、近づこうとすると、考えてしまった。

 私達は獣人だ。他の全員は人間だ。そしてあの男性も人間だ。

 大体の人間は獣人を嫌っている。

 そんな中近づいてアピールしても、獣人だからとのけ者にされるのではないか。

 そんな事を考えていると、

 「店主さん。この部屋にいる奴隷全てを買います」

 と、男性が言った。

 え?今なんて?

 「本当ですか?あの獣人もですか?」

 と店主は私を指差して言った。

 「はい。そうですけど?何か?」

 と男性は言った。

 その時私は泣きそうになった。

 「いえ、何でもございません。では、四人で金貨八枚になります」

 「はい。金貨九枚」

 男性は金貨を1枚多く店主に渡した。

 「お客様、金貨が1枚多いのですが?」

 とさすがに店主もその事は言うみたいだ。

 「ここで一番高い女奴隷と、10才位の男奴隷一人と女奴隷二人ここにつれてきて。はい。黒金貨二枚。おつりは要らないよ」

 と質問をガン無視し、真っ黒な硬貨を取りだし、店主に渡した。

 「かしこまりました。少々お待ちください」

 そう言って、店主は奥にきえた。

 十分位して店主が四人の奴隷を連れて帰ってきた。

 「お客様、奴隷紋と隸属の首輪のどちらにいたしますか?どちらも金貨一枚ですよ?」

 「いや、いいよ。自分で出来るから」

 男性は、身ぶりを使って断った。

 そして男性は、一番近くにいた女奴隷の手をつかんで、自分のところに引き寄せると、

「この奴隷以外、魔法で家までとばすから一ヶ所に集まって」

 と言った。

 私達はえ?と言った。

 「あれ?伝わらなかった?だから空間魔法の転移でみんなを新しい家まで送るって言った。街でみんなを連れて歩いて、無駄に目だって、特に獣人の二人は、人間に嫌われているから石を投げられるかもしれない。そうなったら嫌でしょ?それに足が無い奴隷もいるからこれがいいかなって思ってね」

 と言った。

 私は、いい人に買われたのかな?と思った。

 でもこういう人に限って家でものすごく暴行を加えるのだろう。

 まあ、私達は奴隷だから、そんなの関係ないんだけどね。

 と思っていると全員が一ヶ所に集まっていた。

 「転移」

 と言う声が聞こえると、私達の視界が真っ白に染まった。

 私達は知らないところにいた。

 「うわっもう急に送らないでよね、ビックリするじゃんか。後で勝也にいっとこ。それよりも、ナナっ」

 と、言うと奥から女の子が出てきた。

 「何?お姉ちゃん?」

 「欠損奴隷を部屋につれてって私はそうじゃないほうをお風呂に連れていくから」

 やっぱりと私は心の中で思った。

 結局人間は大体同じなんだと改めて感じた。

 私達はナナと呼ばれた女の子に一人一人抱えられて、一つの部屋に運ばれた。

 どこにそんな力があるのだろう?私よりも幼いのに。

 みんな不安そうな顔をして、無言でベッドに座っていた。

 「色々、されるのかな?」

 と誰かがそう呟いた。

 「殺されるんじゃないかな?」

 や、

 「暴行をされるのかな?」

 等、色々な推測がとびかっていると、ドアがノックされた。

 とうとう来た。

 きっとここにいる誰もがそう思っただろう。

 誰かが、どうぞ、と言うと、ガチャリとドアが開いてさっきの男性が入って来た。

 男性は入ってくるなり、

 「単刀直入に聞くけど、欠損を治せるなら治したい?」

 と聞いてきた。

 いきなり何を言っているのだろう?

 私達にそんな事を聞いて何になるのか。

 そりゃあ治るなら治したいけど、そんなのできるわけ無い。

 けどやっぱり、

 「治るなら治したいです」

 つい口に出してしまった。

 あわてて口を押さえて、男性の方を見た。

 男性は、

 「じゃあ、治そっか!」

 と簡単に言った。

 私達はえ?となった。

 「ご主人様は固有スキル持ちですか?」

 と聞くと、

 「そうだよ」

 と何でもないように返された。

 固有スキルは、100万人に1人ぐらいしかいなくて、どれもがすごい魔法等をを使える。

 「ご主人様はどのような固有スキル、使えるのですか?」

 とつい興味本意で聞いたら、少し考えるような素振りをしてから、

 「他言無用だよ。」

 と前置きをしてから、自分の固有スキルについて説明し始めた。

 「僕の主な固有スキルは、魔力次第であらゆるものを創れる『創造』、さわったものを消せる『消去』、あらゆる事を書き替えれる『書き替え』、相手のスキルやステータス等を奪う『吸収』、スキルやステータス等を渡せる『譲渡』、他にも色々有るけど、主な固有スキルはこれくらいかな?」

 それを聞いて、絶句した。

 その五つの固有スキルは、あらゆる固有スキルの中でも群を抜いてすごいものだったからだ。

 もはや神の領域だった。

 「まあ、僕がするのは君たちの過去の腕や足を失うという因果を、腕や足を失わなかったという因果に書き替える。ただそれだけの事だよ」

 と絶句している私達に男性はそういった。

 すると、1人の女性が、

 「治してもらった場合、何か対価を支払うのでしょうか?」

 と聞いた。

 確かにそういう場合、それに釣り合う対価を支払う必要がある。

 でも私達は奴隷だ。

 奴隷の、私達に支払えるのは体しかない。

 しかし、男性は私達のそんな考えを一蹴するように、

 「いや、特に要らないよ」

 と言った。

 その回答に私達は心底驚いた。

 あり得ない。そう思った。

 そんな力があるなら、欠損奴隷を買って、欠損を治して、また売れば、買った時より高く売れる。

 普通はそう考える。

 しかし、目の前の男性はそんな事に興味が無いのか?

 私はそう思い、思いきって聞いてみた。

 すると、男性は、

 「別にお金に困って無いから」

 と即答した。

 「じゃあ、治すから、全員目を瞑って」

 と言われたので、私達は目を瞑った。

 すると、目を瞑っていても、まぶしい位の光に、思わず目を強く瞑った。

 「もう目をあけてもいいよ」

 そう言われて、目をあけて、右手を上げた。

 そこに右手があった。

 思わず涙が出た。

 涙を拭って、妹の方を見ると、私と同じように泣いていた。

 男性の方を見ると、目が合った。

 自分でも顔が赤くなったのがわかった。

 この時、私、ノノは……この男性に恋をした。

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