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衝突3

 シャロロは、自分を吹き飛ばした犯人を、女性的にはいただけない形相で睨み付けた。

 そこには、二体の偽天使らしきものと、一人の少女がいた。

 「はじめまして、シャロロさん。でしたっけ?まあいいでしょう。私は、中級天使のナミット=シーナスです。そしてこの二体は、「偽神」ぎ、やはり知っていましたか。そうです。この二体は偽神です」

 そこで、少女、ナミット=シーナスは可笑しそうに笑った。

 彼女とシャロロの言った偽神とは、簡単にいえば、偽天使の上位互換の様なものだ。

 少女の両脇に居るそれは、少女から見て、右の偽神は、全長五メートル程で、武器は何も持っておらず、ただ、その両手の肘から先が、大きく膨らみ、ナックルのようになっている。

 少女から見て、左の偽神は、全長四メートル程で、大きな大剣を担いでいる。

 そして、その二体に共通している外見は、翼が偽天使が一対なのに対し、偽神は三対あるのだ。

 そして何より、偽神は、偽天使よりも、一回り二回り、下手すれば数倍にも、ステータスが上だ。

 例え、どれだけシャロロが強くても、現在のシャロロでは、一対一ならなんとかなるが、三対一となると、足止めがせいぜいである。

 シャロロは、柳を亜空間庫にしまうと、一対の白と黒の片手剣を取り出した。

 左手に握られている白い剣は、煌々と煌めいている。

 それに対し、右手に握られている黒い剣は、剣の中で、黒い渦が、禍々しく渦巻いている。

 この一対の片手剣の名を、《黒剣クロア》《白剣シロナ》という。


 黒剣クロア(神造級)


 付与


 不破 魔力吸収(Lv100?相当) 魔力切断(Lv100?相当) 強靭(Lv100?相当) 属性付与《闇、影、黒炎?、黒雷?》(Lv100?相当) 筋力上昇(Lv100?相当) 視覚強化(Lv100?相当) 聴覚強化(Lv100?相当) 思考力強化(Lv100?相当) 痛覚減少(Lv100?相当) 共鳴《白剣シロナ》 体力自動回復(Lv100?相当) 魔力自動回復(Lv100?相当) ステータス上方補正[大] /\-&¥^ 所有者制限


 白剣シロナ(神造級)


 付与


 不破 魔力吸収(Lv100?相当) 魔力切断(Lv100?相当) 強靭(Lv100?相当) 属性付与《光、陽、白炎?、白雷?》(Lv100?相当) 筋力上昇(Lv100?相当) 視覚強化(Lv100?相当) 聴覚強化(Lv100?相当) 思考力強化(Lv100?相当) 痛覚減少(Lv100?相当) 共鳴《黒剣クロア》 体力自動回復(Lv100?相当) 魔力自動回復(Lv100?相当) ステータス上方補正[大] /\-&¥^ 所有者制限


 これをつくったとき、勝也は、効果ヤバすぎない?と言っていた。

 勝也のつくった化け物武器第一号である。

 これが使えれば、一般人でもSランク冒険者も倒せるレベルだからだ。

 これを使えば、なんとか互換以上には戦えるはずだと思い、シャロロは、この一対の武器を取り出した。

 「何ですか?そのあなたが右手に持っている禍々しい剣は。恐ろしいですね」

 ナミットは、顔をしかめて、黒剣クロアを指差しながら言った。

 「ナミットさん。死合いましょうか」

 シャロロは、白剣シロナを持った左腕をだらんとし、黒剣クロアを持った右腕で、ナミットを指した。

 「そうですね。早くやりましょうか」

 そう言って、ナミットは、弓を取り出すと、「行けッ」と偽神に命令した。

 二体の偽神は、残像を残すかというレベルでシャロロに肉薄した。

 「OOOOOoooOO!」

 と不可解な雄叫びをあげて、腕が大きく膨らんだ偽神が、拳を叩きつけるように、何度も振り下ろしてきた。

 「はぁッ」

 シャロロは、それを、避けたり弾いたりしながら、時に反撃としてカウンターをしたりしていた。

 「OOOOOoooOO!」

 と、もう一体の偽神が加わった。

 偽神は、大剣を無尽蔵に振り回し、もう一体の偽神と相まって、少しずつだがシャロロを追い詰めていった。

 「はぁぁぁぁッ」

 シャロロは、こまのように一回転すると、大剣持ちの偽神の懐に入り、十字に剣を構え、切り裂いた。

 ………否、実際には切り裂こうとした。

 後方から飛来した『ファイアボール』に、シャロロは、攻撃を中断して、防御にまわった。

 ズドォォォン

 十字にした剣にぶつかり、爆発を起こし、偽神の股を通りながら、吹き飛ばされた。

 「くぅぅッ」

 シャロロは、その衝撃に、苦悶の表情を浮かべた。

 地面に二筋の線を残しながら、十メートル程後退した所で、やっと停止した。

 「属性付与、白剣シロナ《白炎》!黒剣クロア《黒炎》!」

 シャロロが、そう言うと、白剣シロナからは、煌々しい白い炎が、それに対し、黒剣クロアからは、禍々しい黒い炎がそれぞれ吹き出てきた。

 その一対の剣を勢いよく振り上げ、鋭く振り下ろした。

 すると、白炎と、黒炎の刃が、一本ずつとび、大剣を持っている偽神に襲いかかった。

 偽神は、当たる寸前で何とか大剣でガードし、直撃は免れたが、着弾の衝撃で、大剣の当たった所が少し溶け、さっきのお返しだ、と言わんばかりに、偽神の巨体を、数メートル吹き飛ばした。

 シャロロが、剣を顔の前で十字に構えると、白剣シロナの白炎が、黒剣クロアの黒炎に、黒剣クロアの黒炎が、白剣シロナの白炎に混じり合って、白と黒の炎が、両方の剣に纏った。

 「ッ!ぶ、『物理結界』『魔法結界』!」

 なにやら悪寒が走ったのか、ナミットは、急いで自分の周りに二種類の結界を張った。

 ナミットが結界を張るのと、シャロロが駆け出すのは同時だった。

 スタートダッシュで、地面を抉り、一直線にナミットに肉薄した。

 ズガァァァン

 という爆音をたてて、ナミットの二種類の結界と、シャロロの一対の剣がぶつかった。

 バンッと剣が弾かれるが、シャロロは、そんなことは気にしない、と言わんばかりに何度も何度も剣を結界に叩きつけた。

 「アァァァァァァアッ」

 「くぅ、くぅ、くぅ、くぅ、くぅッ」

 シャロロは、雄叫びをあげながら結界に剣を何度も何度も叩きつける。

 ナミットは、剣が叩きつけられる度に苦悶の声を漏らす。

 ビキッ

 という奇怪な音がして、ナミットの結界に、小さな亀裂が入った。

 「ハアァァァァァアッ」

 シャロロは、結界に亀裂が入ったのを見ると、ギアを一段あげ、先程よりも早く、鋭く、剣を振り下ろした。

 「くぅぅッ。偽神!彼女の連撃を止めなさい!」

 一段と大きい苦悶の声をあげたナミットは、シャロロを妨害するように偽神に命令した。

 「OOOOOoooOO!」

 と雄叫びをあげながら、二体の偽神は、シャロロに肉薄した。

 「ッ!邪魔です!属性付与、白剣シロナに《白雷》、黒剣クロアに《黒雷》を追加!」

 シャロロは、天高く跳躍すると、白剣シロナに白雷を、黒剣クロアに黒雷を纏わせ、頭上で十字に構えた。

 すると、先程の炎のように、白剣シロナの白雷が、黒剣クロアの炎と黒雷に、黒剣クロアの黒雷が、白剣シロナの炎と白雷に混じり合い、白と黒の炎の中に、時折バチッバチッと白と黒の雷が迸る。

 シャロロは、自由落下に身を任せて、下にいた腕の膨らんだ偽神に剣を叩きつけた。

 偽神は、腕をクロスして、それを迎え撃つ。

 ズガァァァン

 という衝撃音が辺りに響いた。

 腕と剣は、火花を散らし、激しくせめぎあっていた。

 「ハアァァァァァアッ」

 「OOOOOoooOO!」

 お互いが雄叫びをあげ、辺りに衝撃が迸る。

 そして、永遠に続くかと思われたそれは、ついに決着がついた。

 地面に二筋の切れ目ができる。

 シャロロは、地面に突き刺さっている剣を抜いた。

 それと同時に、偽神に、三本の切れ込みが入る。

 そして、偽神は、体を三つに分けて、地面に倒れ込んだ。

 勝者は、シャロロだ。

 シャロロは、後ろに居る偽神と、ナミットにゆっくりと向き直った。

 それに、ナミットは、一歩後ずさる。

 「ぎ、偽神!武装交換!《バールナ》!」

 ポケットから楕円形の石の様なものを取り出すと、天高々と掲げた。

 すると、偽神の大剣がドロリと溶け、地面に落ち、ゆっくりと魔方陣を造り上げた。

 魔方陣が光輝く。

 とたんに偽神が光に包まれる。

 十秒程で光が収まると、そこには、鎧を着込み、先程の大剣よりも一回りほど大きな大剣を持った偽神がいた。

 「UOOOOOoooOO!」

 偽神が、叫んだ。

 それに伴い空気がビリビリと震えた。

 偽神が、先程よりも一段程早いスピードでシャロロに肉薄する。

 シャロロに向かって、大剣を叩きつける。

 シャロロは、それを迎え撃つ。

 ズドォォォン

 衝撃に、空間が揺れる。

 お互いの剣が弾かれる。

 それでも、二撃、三撃と何度も撃ち合う。

 五十回程撃ち合うと、一際大きな音をたてて、両者が弾かれた。

 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 シャロロは、肩で荒い息をつく。

 偽神も同じような感じだ。

 シャロロの頬を、一筋の汗が流れて、地面に落ちる。

 「はぁ、はぁ、次で、終わらせます」

 そう言って、シャロロは剣を水平に構えた。

 偽神は、大剣を上段に構え、シャロロに肉薄した。

 偽神は、大剣を振り下ろし、シャロロは、大剣を、挟み込むように剣を叩きつけた。

 轟音を轟かせて、一本と、一対の剣がせめぎあう。

 しかし、今回の勝負は一瞬だった。

 白剣シロナと、黒剣クロアが、大剣を打ち砕き、鎧をも断ち切って、偽神本体を両断した。

 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 だらだらと、汗が溢れてくる。

 大分スタミナを消費したが、まだ何とか戦闘は、続行可能だ。

 すると、正面から、ファイアボールが飛んできた。

 シャロロは、あわてて剣をクロスにして防ぐが、爆発で吹き飛ばされてしまった。

 「ぐぁっ」

 木々を薙ぎ倒しながら、少し離れたところにあった岩にぶつかって、止まった。

 「うぅ」

 うめき声をあげて、体に力を入れて、立てるが、すぐに膝から崩れ落ちてしまった。

 体に力が入らない。

 「どおして!何でこんなときに魔力欠乏症なんてっ!」

 魔力欠乏症

 それは、多量の魔力を消費し、残りの魔力量が僅かになったときに発症する。

 症状は、主に、魔力の使用不可、倦怠感、頭痛、体に力が入らない等、戦闘中になると、完全に敗北するものだ。

 これは、魔力が、一定量まで回復すると、症状は、緩和されるのだが、現在、亜空間庫も使用不可の状態だ。

 理由は簡単で、亜空間庫の使用にも、少量ながら、魔力を必要とするからだ。

 魔力自動回復Lv10×10と、剣に付与されている、魔力自動回復Lv100?相当もあるが、動けるようになるまで、あと最低一分はかかる。

 つまり、絶体絶命なのだ。

 「フハハハハハハッ」

 ナミットが、大笑いしている。

 「結局守れませんでしたね、シャロロさん。それではそこで、虐殺の光景をご存分にお楽しみください。偽天使!村を破壊しなさい!」

 「やめてッ!」

 ナミットは、ご丁寧に、よく見えるように木々を薙ぎ倒していた。

 偽天使達が、ゆっくりと村を破壊していく。

 シャロロは、それを見ていることしかできない。

 そうして、一体の偽天使が、村長宅、つまり、ほぼ全員の村人が居る家にたどり着いた。

 長剣を振り下ろし、壁を破壊した。

 そこには、お互いを抱き合っている、詩音と明奈がいた。

 奥には、数人の村人も居る。

 「やめてッ!」

 体に力を入れようとするが、力が入らない。

 シャロロは、ここから、ただ叫ぶことしかできない。

 偽天使が、長剣を振り上げる。

 詩音と明奈が、更に力を入れ、目をつむっている。

 (申し訳ございませんでした、ご主人様。詩音様と明奈様を御守りすることが出来ませんでした)

 シャロロは、そう心の中で謝った。

 偽天使が、長剣を振り下ろそうとした、その時、一筋の白雷が迸り、偽天使を灰すら残さず消滅させた。

 土煙が立ち上ぼり、数秒して、土煙が晴れると、そこには、底が見えないほどの深い穴が空いていた。

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