一章
1
「あーだるい」
そういいながら勝也は森の中の一本道を歩いていた。
すると、左側の木々が揺れて、十歳位の傷だらけの女の子が泣きながら出てきた。
女の子は勝也に近づくと、
「お願いします。お姉ちゃんを、助けてください」
と言ってパタリと倒れた。
勝也は、女の子の頭に手をおいて、目をつむった。
5秒位して勝也は目を開けた。
そして、女の子を抱えて女の子が出てきた方向に走り出した。
2
ナナ、ちゃんと逃げられたのかな?
マナはさっき逃がした妹…ナナの事を考えていた。
マナとナナは父親と一緒に王都に遊びに行く時に盗賊に襲われて、この洞窟に連れてこられた。
父親は、この洞窟に来てから直ぐに殺されて、少し離れた場所にすてられた。
しかも、マナとナナの目の前で。
マナは泣いたナナをしっかりと抱いて、殴る蹴るの暴行をしてくる盗賊たちからナナを守っていた。
そして、5分位前、盗賊たちの気の緩んだ隙をついてナナを逃がすことができた。
ナナを逃がした後、マナはイラついた盗賊達にいつも以上に殴られ、蹴られて、気を失いかけた。
ほとんど何も考えられない頭でただナナの事だけを考えていた。
そして、マナは騒がしくなった洞窟で気を失った。