対決
「それじゃあ始めるよ」
と言って、勝也は後ろに跳んだ。
五メートルほど跳んで、地面に足をつけた瞬間に、目の前から消えた。
「!?」
香苗は、ビックリして、固まった。
すると、後ろから剣をうちならす音が聞こえて、香苗は振り返った。
そこには勝也にものすごい速さで斬りかかっているスノーと、それを小指で弾いている勝也の姿があった。
勝也は、ニコニコして、スノーは苦虫を噛み潰したような顔で、冷や汗を流していた。
香苗が、ぼーっとそれを見ていると、地獄吹雪に当たった小指が凍った。
しかしそれは一瞬の事。すぐに粉のように砕け散った。
スノーは、それを見て、勝也から距離をとった。
「いやー強くなったね。四年前より格段にあがってるよ。おめでとー」
勝也は、ニコニコと笑いながらパチパチと手を叩いた。
「主様にそのようなことを言われても、ただの嫌みにしか聞こえませんよ。何が強くなったね、ですか。主様はそれを小指だけで弾いていますよね」
とスノーは、刀を鞘に納めて言った。
そして、二、三度深呼吸をして、腰をひねった。
それを見て、勝也はスーっと目を細めた。
「その構えだと『火鬼』かな?いいね、来いよ。相手してやる」
と言って勝也は、右手の指をのばしてそろえ、手刀のかたちにし、正眼に構えた。
それを見て、スノーは数歩後ろにさがった。
「来ないならこっちからいくぞ」
勝也は、右手をおろして、まっすぐにスノーに歩いて近づいた。
スノーは、勝也が刀の間合いに入ると、居合い切りを放った。
「型無流剣術外伝『火鬼』!」
『火鬼』は、勝也の首に吸い寄せられるように向かい--------スノーのからだが吹き飛んだ。
「ぐあっ」
スノーは、地面に叩きつけられ、肺の空気を吐き出した。
勝也は、その間に近づき、スノーの首に手刀を添えた。
「降参です」
スノーは、自らの敗北を口にした。
「あとは香苗だけど、やる?」
勝也は振り返って香苗を見ると、ニコニコしながら問いかけた。
香苗は、急に話しかけられて、ビックリしたが、
「やめとく。なんかやる気なくした」
と言って、両手をあげ、降参のポーズをした。
「そ、ならいいけど」
勝也がそう言うと、景色が一瞬ぼやけて、気がつくと家に帰っていた。
「それじゃあ汗かいたから風呂入ってくる」
と勝也は、風呂場に消えた。
「香苗さん。私達もお風呂に入りましょうか」
勝也が、お風呂に入ったのを確認して、スノーが、香苗にそんな提案をしてきた。
「そうですね。一緒に入りましょう!」
と言って、香苗は、スノーの提案に乗った。
そして、二人は、お風呂場に消えた。