夜の場面2
ささっと頭と身体を洗い、湯船に浸かった。
少しキレて、やり過ぎたことを心の中で反省した。
そんなとき、風呂の扉が開いて、一が入ってきた。
「よう、勝也。久しぶりに一緒に風呂入ろうぜ」
「どうせダメと言っても入るんだろ?あとお前、さっきも風呂に入ってなかったか?」
勝也があきれたような声で言うと、一は、「ははは」と笑って「違いない」と言った。
「一」
「わーてるよ。湯船に浸かる前に頭と身体を洗えってんだろ?」
と言って、一は頭と身体を洗い出した。
一はささっと頭と身体を洗って、湯船に飛び込んできた。
「はー。極楽極楽」
と言っている一に、勝也は、
「一!いつもいつも湯船に飛び込むなと言っていただろ!」
と、どなりつけた。
「わりーわりー。つい広い風呂に入るとな」
と、一はまったく反省していない顔で言った。
勝也は、一つ深いため息をついて、それ以上何も言わなかった。
少し、ただボーッとする時間が流れ、勝也が、そろそろ出ようとすると、
「勝也」
「なんだ」
一が、名前を呼んできた。
「久しぶりだな、一緒に風呂入るの」
「そうだな。最後に一緒に入ったのが、だいたい三年前だったっけ?」
「お前が言うならそうなんじゃねえの?」
勝也は、こういう何気ない会話が、自分の精神を安定させていることを知らない。
否、わからない。
四年前の事故のあった日から、勝也の精神は、常駐不安定なのだ。
「一、お前にスキルをやるよ」
勝也は、右手を一に向けた。
「お前にいろいろなスキルをやった。確認しとけ」
そう言って、勝也は、風呂から出た。
身体を拭いて、服を着て、風呂場をあとにした。