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その後

四時間ほどして、男が一人ギルドに突っ込んできた。

 というか、ドアが破壊された。

私は、何事かと思い、外に出ると、さっき助けてくれた男性が、右足を下ろすところだった。

 男性と、その仲間の人達の周りを囲むように男が四人、それぞれ武器を構えていた。

 剣を持った一人が、斬りかかると、あとの三人もそれに続いた。

 それを見て、男性は、一つ大きな欠伸をすると、一瞬だけ姿がぶれた。

 その一瞬で、四人の男が、全員倒れこんだ。

 「あ、昨日の人!」

 いつの間にか後ろに来ていたカルナが、そう言った。

 男性が、こちらを向き、優しい笑顔をつくると、近づいてきた。

 「お騒がせして申し訳ございません。もう終わりましたので、安心してください。それと壊した扉の修理代は今、お支払します」

 と、言って、黒金貨を一枚渡してきた。

 私とカルナは、初めて見る黒金貨に驚くも、それをポンと出すこの男性が何者なのか知りたくなった。

 「すみません。失礼を承知でお聞きしますが、貴方は何者ですか?」

 一瞬の沈黙があり、男性が諦めたように息を吐くと、

 「元SSSランク冒険者型無勝也、二つ名は、『神』、『死神』だ。嘘だと思うのならボルターナ王国第一王女のサムルナに聞け」

 と、答えてくれた。

 私とカルナは、一瞬思考が停止したが、男性……勝也さんの言ったことを頭が理解すると、

 「「えぇええええええええええええええ!?」」

 と、カルナとハモりながら、驚きを、声で表した。

 「なぁ、そんなに驚くことかな?」

 と勝也さんは、後ろにいる仲間に聞いた。

 「あのね、勝也。SSSランクっていうのはね、今世界で両手の指で足りるほどしかいないのよ?わかってる?」

 勝也さんの仲間の一人が、あきれながら言った。

 私は、はっと我に返り、勝也さんに気になっていた事を聞いた。

 「あの、勝也さん」

 「何ですか?」

 「勝也さんは、好きな人とかはいますか?」

 この時の私は、完全に正気じゃなかった。

 さっきの発言がすごすぎて、気が動転していたんだと思う。

 その事に気づいて、顔を真っ赤にした。

 「あの、すみません。失礼でしたよね」

 私は、とっさに謝った。

 「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください」

 勝也さんは、ものすごく優しい笑顔で、フォローしてくれた。

 「あ、そうだ、これは討伐依頼のゴブリンの証明部位(討伐依頼の場合、討伐対象のモンスターの一部を証明の証として剥ぎ取る)の耳です。あとこれは薬草の束です」

 勝也さんは、緑色の少し尖った耳と、雑草のような見た目の少し青っぽい草の束をそれぞれ五つ取り出して、私と、カルナに渡した。

 「それでは、ご迷惑をおかけしました。私は、ここらで帰らしてもらいます」

 そう言って、勝也さんは、頭をさげたあと、仲間の皆さんに声をかけ、歩いて行った。

 「ものすごい人だったんだね、勝也さんって」

 勝也さんの姿が、人混みにきえると、カルナが、そんなことを言った。

 「あの人が、六年前位に『死神』として、世界中で恐れられた人物だったなんて、思いもよらなかったよ」

 カルナは、声を弾ませながら、言ったが、私の耳には、入って来なかった。

 私はただ、勝也さんが、見えなくなったところを、ただ、ぼーっと見ていた。

 隣で、カルナが、ニヤリと笑った気がした。

 「ねぇ、サマハル」

 「ん?何?」

 私が、カルナの方を見ると、カルナは、ものすごく悪い笑顔で、

 「勝也さんの事好きでしょ?」

 と、言ってきた。

 「何言ってんの?カルナ。そんなわけないじゃん」

 完全な不意討ちに、私は、顔を真っ赤にしながら、反論すると、

 「うわっ。顔真っ赤。かわいいねぇ、サマハル?」

 と、ニヤニヤしながら言ってきた。

 私は、すねて、カルナから、顔をそらした。

 そして、カルナは、真顔に戻ると、少し悲しそうな顔をして、

 「恥ずかしがらなくてもいいよ。サマハル。私も、彼の事が好きだらか」

 そう宣言した。

 私は、えっ?とカルナの方を向いた。

 「昨日ね、勝也さんと、二人の獣人が、冒険者登録をしに来たの」

 カルナは、昨日の事を語りだした。

 「最初は、ただ、かわいい人って思った。でもね、そのあと、Cランク冒険者のガルド?だっけ、に殴りかかられたの。

 でも勝也さんは、そいつの腕を引きちぎった」

 カルナは、ここで、間をあけた。

 「凄かった。ただ凄かった。それと同時に、私なんかに振り向いてもらえないと思った。私なんかよりもっとふさわしい人がいるって思った。だから……」

 「もういいよ、カルナ」

 涙を流しながら話すカルナを、私は、止めた。

 「カルナ、私と頑張ろ?」

 「え?」

 下を向いていたカルナが、顔をあげたのを見て、私は喋りだした。

 「私も、おんなじことを考えてた。だからわかるよ。だから勝也さんに、振り向いてもらえるように一緒に頑張ろ?ほら笑顔笑顔」

 私はそういいながら、カルナのほっぺを引っ張った。

 カルナはもうと言いながら、笑った。

 そのあと、私とカルナは、どうしたら勝也さんに、振り向いてもらえるか、意見を出しあった。

 それは、日付が、変わるまで続いた。

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