今どきの勇者は町中にいる
男の子は誰でも一度はある日自分に特別な力が宿ることを夢見てしまう。普通に考えればあり得ないし、ましてや人が73億人いる中で自分だけに宿るなど夢のまた夢である。それでもそういうことを考えてしまうのが中二病である。佐藤 和也もそうであった。奇跡を信じている。
ある日、和也はいつも通り学校が終わり家へ帰る途中だった。
「魔法が使えるようにならないかな。
魔法が使えればこの世界でやりたい放題な
のにな…」
そんなこと考えながら歩いていると前から同い年ぐらいの女の子が走ってきた。そして、その後ろには黒い服の男が走って来ている。これは完全に女の子が追われている。(神展開きたー)
僕はその女の子に「こっちだ!」と言って手を引いて男から逃げた。そして、自分の家に駆け込み何とか振り切った。
「いやぁ、危なかった。それにしてもなんで
追われてたんだ?」
「助けてくれたことは感謝します。でも、そ
れは答えられません。」
「そうか、じゃあ名前教えてくれないか?」
「それも無理です。すいませんが急いでいる
ので失礼します。出来れば私にあったこと
は忘れて下さい。」
そして、女の子は行ってしまった。
「あぁ、行っちゃった。せっかく女の子を助
けてあわよくば仲良くなれると思ったの
に。やっぱり俺に彼女は無理なのか?」
学校ではあまり目立たないし、放課後は部屋に引きこもっている俺には彼女どころか女の子とは疎遠であった。それだけに、今回のチャンスを逃したのは痛かった。なので、その日の夜は寝れなかった。
しかし、神は俺を見捨てなかった。夜にあの女の子が部屋に窓から入って来たのである。そして、その女の子は言った。
「あなたを異世界へ連れて行きます。」
「…え?」
「佐藤 和也、あなたの力が必要なのです、
私たちの世界の勇者になって下さい!」
そう言って彼女は魔法陣らしきものを描きだした。
「30秒後に魔法陣が完成します。それまでに
急いで、大切なものだけ持って来てこの
世界と別れる準備をして下さい。」
「いきなりそんなこと言われても信じられな
いし、出来ない。この世界と別れる?出来
るわけないだろ!お母さんやお父さん、
親友だっているんだぞ。お前は何を言って
いるんだ。」
「時間がありません。あと15秒。」
「人の話を聞け!」
「さっさとこれを受け入れて、準備をしない
と後悔しますよ。」
「くそ!」
俺は携帯とペンダントと枕を持ち、パーカーを着た。そして、
メモを書こうとしたが間に合わなかった。
「時間切れだ。行くぞ。」
「待ってく…」
俺の言葉は届かず、魔法陣が光だし、体を光が包み込んだ。