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一期一会

明けて朝になり二人はすぐに町へでた。

朝だというのにいろんな人が往来を歩いている。

食糧を買いだし二人は森へと歩みを進めた。


が、森といっても人がよく通る道は整備され歩きやすくなっているし、目印の塚もあるので道をわざとはずれでもしない限り迷うこともない、そんな森だ。

そんな森だからこそ…

「まっすぐつっきるぞ!」

とアッシュは言う。

まぁ、こういう無茶ぶりにも最近は慣れてきて驚きはしないが、それでも一応聞いてみる。

「アッシュ、せっかく先人がつくった道があるんだからそれを歩いていけばいいんじゃないのか?」

「それだと時間がかかるし修行にならないからダメです。なるべくスピードを落とさず走り、それでも木をよけたり段差を飛び越え進むこと、それが修行となるのです。」

「はいよ。それで大体どれくらいの時間がかかるんだ?」

「そうだな、1日半、てところか。今日はたぶん森の中で野宿し、明日の午前中に森を抜ける、そんな流れになるよ。」

「そうか、じゃさっそく進むか」ハァとため息のような声が出る。

そういうと二人は魔力で肉体と筋力を強化をし走り出した。

先をアルベルトが走り、後ろからアッシュがついていくいつもの形だ。

遅いと後ろから攻撃を仕掛けてくるからある程度のスピードを出さないといけないというアッシュの優しさもセットだ。

「ほら、アル。スピード落ちてきたよ」

そう言いながら木の枝を投げたり、石を投げたりする。

これをよけながら進むのは骨が折れる。

いつ野生のモンスターが出るかもわからないし、その気配を察知しながら、地形も把握しながら、スピードを落とさないというのは結構精神力を使う。

そんな矢先に


「ちょっとまった!」


いきなり後ろからアッシュの声が聞こえた。


「どうしたんだい?まだ休憩の時間でもないだろう?」

「いや、今ねブラックミンクがいたんだ。」

「ブラックミンク?」

「あれ?しらないの?ミンク種は数多く世界に生息しているだろ?その中でも黒いミンクがいるんだ。数はとても少なく希少な生物でペット用としてけっこう高値で売れるんだよ。」

「まさかアッシュ…」

「そうだね、アルベルト、捕まえてきてよ。」

「しかも俺がかよ。」

「まぁ、聞いて。ブラックミンクは数が少なく希少なんだけども、捕獲が難しいことでも有名なんだ。

人間の出せるスピードでは追いつけないほど速く、捕まりそうになると鋭い爪と牙で攻撃もしてくるからね。

いっつも俺との稽古ばかりしてたからたまには趣向を変えた修行をしてみようと、そう思ったわけさ。」

「なるほどね。」

「普通なら追いつけないほどのスピードだけど、魔力をつかい筋力強化する移動方法を使えばスピードでは負けないはずだ。あとは動きを予測し捕まえるだけ。」

「そんな簡単でいいのか?」

「簡単にいけばいいけどね。あ、もちろん武器の使用は禁止だよ。生け捕りにするからさ。」

「わかってるよ。すぐ捕まえてくるから待っててよ。」

そういうとアルベルトは森の奥へ入って行った。

「さて、そう簡単に捕まるかな?」

そう言うとアッシュは火をおこし、野営の準備をしだした。


「はぁ、はぁ」

アルベルトは疲弊していた。

ブラックミンクを追いかけまわし2時間以上が経過していた。

スピードでは負けてない。ブラックミンクも体力が続かないのかよく足を止める。ある程度までは近づける。

ただ、捕まえられない。

そんな状態が2時間以上つづいているとなるとアルベルトの体力も精神力もかなりしょうもうした状態となっている。


「よし、いったん考えよう。」


追いつけはする。追いついた瞬間に捕まえようと手を伸ばす。その動作を予見されたように避けられる。

ただジクザグに避けられているわけでもない。

左右に避けられたりジャンプされたり、時にはストップされて追い越したりとあの手この手で逃げられる。

「うーん。」

「そういえばペット用に高値で売れると言っていたな…」

ということは捕まえる人がいるわけだ。罠でも張っているのか?罠ねぇ…

そういえば…

アッシュはなにかひらめいたみたいだ。

よし試してみるか。

そういうと最後の水を飲み干しブラックミンクを追い出した。



時同じくしてこの森でブラックミンクをおう男達がいた。

森をディレストの逆側から入ってきたのだ。

「ねぇ、ボス。ほんとにこの森にいるんですか?」

「あぁ、森に入っていく姿も目撃されているし、ブラックミンクは暗がりを好むんだ。この森にいる可能性は十分あるんだ。」

「といっても森も結構ひろいですよ?どう探すんですか?」

「もともとペット用で飼われていたブラックミンクなら人にも慣れているだろう。そして飼い主からは好みの餌も聞いてきてる。これで罠を張ろう」

「なるほど。」

「さ、そうときまれば何箇所かに分けて設置するぞ。ボルクは俺と一緒に罠を設置に、レイドはこの先の川の近くにベースを設置していてくれ」

「「ラジャー、ボス」」

そういって散って行った。


「ボス、ボス!」

「お、レイドか、早かったな。」

「い、いやまだベース張っている最中なんですが、変な男に会いまして。」

「変な男?」

「ひとりでキャンプよろしくの準備をして寝てました。

「なるほど、その男ももしかしたらブラックミンクを捕まえにきた同業者かもな。よし、ちょっと探りを入れてみよう」


ディレストの逆側、アッシュたちからしたら出口側にあたる町があり、その近くの町の富豪が飼っていたペットのブラックミンクが逃げ出したのがつい2日前。

その日の夕方にはギルドに捜索願のクエストが張られ、生け捕りを条件に成功報酬が100万シードと経費の上限10万シードという内容だった。

ペット捕獲という内容に対して破格に高い値段にいろいろな冒険者がボーナスステージと言わんばかりに張り切りだした。

しかし、いざ捕まえようとするもあまりのすばしっこさに翻弄される冒険者が続出。

ただ依頼主を通し業者に捕獲用の罠の設置方法と、森に入っていくという情報をつかんだボスと呼ばれる男と仲間達はまだあきらめずに森に入ってきたのだった。


接触を試みようと近づくと男はすでに起きていた。

「や、やぁ。」

「なんですか、あなたたちは?」

「俺たちは冒険者のもので決して怪しいものじゃありません。この森でブラックミンクをみてないか、それを聞きたいんですが…」

「ふーん。なるほどね。ブラックミンクなら見たよ。」

「え?本当ですか?」

「えぇ、今私の連れが捕まえにいっています。この近くにいるでしょう。捕まえたらここで落ち合う手筈になっています。」

「よ、よし、俺たちも探しに行くぞ!」

そういった瞬間、ボルグとレイドが倒れた。

ボスは一瞬何が起こったかわからなかった。

振り返ると灰色の髪をした男の姿もない。

「え?」

「今ですね、私の連れがブラックミンクを捕まえるという修行を課しているのですよ。邪魔しないでもらえますか?」

アッシュがそう告げた。

ボスはすぐに理解した。

こいつが二人を気絶させたんだと。

「なるほど。あんたそうとう強いね。」

「ふふふ、それほどでもないですよ。」

「そうかい?嘘はいけないと思うけどね。」

そういうと同時に剣を抜き、襲いかかった。

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