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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生したら終わっていました 短編小説

とある転生侍女の楽しみ

作者: 樹 泉

ある時このネタ使えない? と思いついた、初期設定にはない作品です。

 階段から落ちて死んだアラサー女が転生したのが、アンジェリカ・ノヴィリー。貧乏子爵家のこれでも令嬢だ。母親が王城で第二王女殿下の乳母をしている為、我が家には嫡男が居ない。業を煮やした父が妾を迎えるも、過労が祟って亡くなってしまった。


 転生した私の姿は、茶髪の癖毛に前世でよく見かけた焦げ茶色の瞳、自分で思うに今は可愛いが十人並みに育ちそうだ。今目の前に居る同い年の、絶世の美幼女とは訳が違う。豊かな金髪は縦に巻かれ、少し釣り目気味の宝石を想わせるエメラルドの瞳は、鼻や口と同じく黄金比で白磁を想わせる顔に配置されている。まさにTHE・御姫様という感じだ。


「初めまして、私はエレーナ・ルッツ・ハールヴァルよ。貴方が乳姉妹のアンジェリカ?」


「は、はい。お初にお目にかかります。アンジェリカ・ノヴィリーと申します!」


 なんとしっかりした方でしょう。とても同じ4歳児には思えません、転生者と言われても納得できます。


 父が亡くなった事で母に引き取られ、しっかりしているからと、最近寂しい思いをしているエレーナ様の侍女候補として城に招かれた。ただ、絢爛豪華な城がどんよりした王都に映る様は、異様と言って良い。

 その後、侍女見習いとして城で働く間に、第三王女フィルティーカ様が誕生した。その時のエレーナ様の喜び様は凄く、間違えなくシスコン道まっしぐらであろう。

 ですが! 4日後クーデターが起こって、エレーナ様とフィルティーカ様は、クーデターの首謀者ラトーク公爵の屋敷でお世話になる事になったのです。私は母に着き従い祖父母の屋敷でお世話になる事になったのですが、なんとかエレーナ様の側に居られないかと我儘を言い、母と別れラトーク公爵邸で働きだしました。といっても、まだ4歳の私ではご迷惑ばかりおかけしていますが。

 なんという事でしょう。ラトーク公爵家のこぞ……失礼、ご子息は姫様方に突っかかって来るのです。

 格上の方を御諫めできる立場にございませんのが、実に腹立たしい事で、日々頭の痛い思いをするばかり。フィルティーカ様が成長するに従い、ヒステリーを起こさないところを気味悪がり出し、不味いと御思いになった公爵ご夫妻が何かアドバイスしたようです。

 翌朝フィルティーカ様の手を引き、ライサス様(ご子息)がエレーナ様の前にやって来ました。


(何故甘い空気がお二人から?)


 この空気を感じエレーナ様は今までにないほど怒って、いえ嫉妬なさっております。なぜって? 立派にシスコンを患わせてしまったからですよ。それにしても、ライサス様から感じる甘い空気はどういう事でしょう? いったい一晩で何が? フィルティーカ様の目が少々腫れていますが、意見でもでもぶつけ合って意気投合、それが恋愛対象に変換されましたか? 訳が分かりません。まぁ、フィルティーカ様は可愛らしいですが……。

 ライサス様は嫉妬の炎に燃えるエレーナ様から一歩引きながら、これまでの事を謝罪し、これからはお二人の事をお守りすると約束されました。

 


 そして年月は流れて。


「ムフフ」


「おいアンジェリカ、気持ちの悪い笑いはよせ」


「では、離れなさいな」


「無理を言うな、バレるだろう」


 今私とライサス様付きの侍従、ローレンスは石像の陰からそれぞれの主達を覗き見ていた。


「なんで毎回告白しようと俺が出向くと、アンジェリカはこんな所にいるんだよ!」


「こんな女に想いを寄せてるのはアンタよ、でも15年後に出直して来て。恋愛対象は30代からよ」


「……」


 固まってしまったローレンスを置き去りに、エレーナ様に呼ばれ私は出て行く。前世でアラサ―分の精神年齢を足した私の恋愛対象は30代から、同い年の16歳など眼中にない。

 先日エレーナ様の姉君から手紙があり、反乱の内応を頼まれた。エレーナ様はそれを利用し、不穏分子を一掃する御積りだ。自身を餌にして。

 

 ラトーク公爵様に御世話になり14年、あんなに敵意を持っていたライサス様にエレーナ様までも恋をした。誰もが見惚れる美少年にして、多才なまでに才能を有する。更に人当たりまで良ければ、多くの女性が魅了される。その多くがフィルティーカ様に向いていても。


「フィルティーカを守るのは私の使命なのよ」


 とは、マリーナ様の言葉だ。これは反乱の内応への手紙が来ても変わらず。


「私が消えなければフィルティーカはライサス様と結婚しないわ、だからこの反乱を利用しましょう。アンジェリカは上手く情報をラトーク公に流してね」


 これが今回エレーナ様の案だ。細かい話はラトーク公爵とお詰めになられ、着々と策は進んでいく。どんな結果になろうと私は、最後まで御側に居ますからエレーナ様。

 ところで、フィルティーカ様ですが、私と同じ転生者でした。しかし、TS転生だったらしく、それが悩みの種で、時々ワタワタする様が余計にライサス様を射止めているとは知らずに。ああ、なんて美味しい展開! 影からシッカリハッキリ見守らせていただきます。


 エレーナ様が反乱に関与したとして生涯幽閉を言い渡されたのが17歳の時、私達が21歳の時フィルティーカ様が、第一子をお産みになられすくすく成長しているとか、来年には14歳。成人という事もあり、大きな祭りが開かれると街は賑わっています。私達も35歳になるのですね。


「アンジェリカ結婚してくれ」


「ローレンスまた来たの? 嫌よ、主が生涯幽閉されているのよ」


「え? 聞いていないのか? 来年王太子殿下の成人の儀で、恩赦として生涯幽閉は解かれる。使者も送ったぞ」


「なんですって! それを先におっしゃい! 私はエレーナ様の元へ行くから」


 そこへ、トントン戸が叩かれ「使者がお見えになられました」そう告げられたのだった。


「「……」」


(相変わらずせっかちなんだから、使者より早く来てどうするのかしら。……ふふふ、そういう所嫌いじゃないわ)


お読みいただきありがとうございます。

引き出しに入れていないのに、開けたらあった。そんな感じです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 第2王女の名前が前作までは『エレーナ』だったのにこの侍女視点のみ『マリーナ』になっています。 愛称でもなさそうなのでご報告です。
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