出会い
朝の屋上は春の陽光で適度に暖かく、ボーッとするには絶好なロケーションだ。特に学校の行事をサボってのなのでより心地よいものだ。
・・・・・・こいつが来るまではな。
「ねぇ、聞こえてるよね?」
「・・・・・・聞こえてるよ」
ため息を一つ吐いて空に向けていた顔をさげる。
「やっとこっち見た。さっきから呼んでたのに全然反応くれないんだもん」
目の前にいる少女はそう言ってぷくぅと頬を膨らませてこちらを睨んでいる。
「すまん。空を見てるときは耳が雑音をシャットアウトしててな。悪気はないんだ」
「・・・・・・あたしの声は雑音ですかそうですか」
ガックリと肩を落としてしょんぼりする少女。そんな様子を俺はただただじっとみつめる。
「えっと、な、なにかな?人の顔じっと見て」
「いや。何か用か、と」
今の時間はもう始業式が始まっているはずだから生徒が来ることはないはずだが。
「そうそう。君を探していたんだよ」
そう言って俺の横に座る彼女。
「なぜに?」
「なんでって。君の担任に言われたからだよ。『あいつを連れてこい』ってさ」
苦笑する彼女に俺はふーんと返事をして再び空に目を向ける。
「ご苦労様だな」
「そう思うなら一緒に来てくれると助かるんだけれど?」
「だが断る。式に行って長ったらしい話し聞くよりここで空眺めてた方がマシだね」
「・・・・・そっか」
彼女はそう言って黙りこんだ。俺も彼女を気にすることなく空を見続ける。
しばらく無言が続いたが、まぁ、と彼女が口を開き、
「あたしにとっては好都合だけどね」
俺は彼女のいる方を見ると彼女はニヤリと笑っていた。
「好都合?」
鸚鵡返しで聞いた俺の言葉に彼女はうんとひとつ頷いた。
「君を口実に堂々とサボれるからね♪」
実に晴れ晴れした表情で大きく伸びをすると彼女は俺の隣に座り込む。そんな彼女に俺はへぇと呟く。
「悪いやつだねぇ、あんた」
「君ほどじゃないよ」
彼女は悪びれることもなく俺に笑いかける。
その後はまた無言が続いたが、しばらくして下の方が騒がしくなる。
どうやら式が終わったのだろう。生徒たちや教師がぞろぞろと体育館から出てくるのが見てとれる。
「あ~あ、もう終わっちゃったか。ざ~んねん」
彼女はそう言って立ち上がり、伸びをした。
「それじゃそろそろ行きますか。流石にこれ以上サボると後が怖いからね」
苦笑する彼女につられるように俺もやれやれとため息をついて立ち上がる。
「じゃあたしは先に行くよ。今度はサボらないようにね?」
彼女は屋上の出入り口を開け、こちらを向いてウィンクをした。
「なぁ」
「なに?」
屋上を去ろうとした彼女を呼び止めるとドアから顔だけ出す。
「あんた名前は?去年まで見てないから転入生か?」
うちの学校は私服OKだからいまいち学年やクラスなどが判別できない。
矢継ぎ早に質問を飛ばす俺の言葉にキョトンとした顔をした後、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「合ってるけど間違ってるね。でも正解は教えてあげないよ。知りたければ自分で探し当てることだね、ケン坊♪」
見てくださったかた、ありがとうございます。




