表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と杓子がやたら強い。  作者: しゃもじ派
食神と獣神と死神
45/77

氷像

――契約せし我の霊力を糧に雪兎の名の根源たるその力を貸し与えよ――


獣王とたまちゃんが『霊化』した瞬間、周囲の気温がグッと下がったのを感じた。


昔スーパーマーケットで働いている時に入った大型の冷凍室の感じに似ている。


俺が感じるって事は、周囲の気温を下がったんだろうなー。…って事は…?


「ううう…。ささささ寒いいいいいい…。」


やはりレラがとてつもない勢いで震えていた。四葉も声には出して居ないながら、息やその長い睫毛を白くして凍えているようだ。


ジジイは土の中に潜ってしまった。ミミズみたいな奴だ。


「…?あれ?」


「えっ?あっ!ありがとう直人。」


流石に見て居られないので、俺の霊力を温風に変えてレラと四葉を包み込むと、


「さむいぞなおとー!さむいぞよつはー!」


と、しゃもじが怒りの声を上げながら、四葉の服へと潜り込んでいった。


…。ふん…。エロ猫め。立派な毛並みがあるだろう。まぁ猫は寒いのも暑いのも苦手だしな。


まぁ入り込む時にちらりと白く豊かで滑らかな山が見えたから許してやろう。






さて何故こんなはた迷惑な霊化を兎さん達がしたか、だ。


勿論しゃもじとの手合わせの為だ。


――天狼の眷属、雪兎の霊力により築き上げる守護神たる氷象――


「らぁぁあいじーーーん!!」


「現れなさい……風神。」


兎さん2人が声を揃えた詠唱後、個々に言葉を紡ぐと、


ピキピキと大きな氷の音を立てながら、高さ5メートルはありそうな雷神と風神の氷像が、青白い霊力の収束の光と共に発現した。


……かっこいいじゃないか。


「ホントならここからが本番なんだけどー。」


と言うたまちゃんは、その場で雷神像に向けていた両腕を下げた。


「本当なら何が起きるんだ?」


「見た事はないけど、あの氷像が砕けて散り、霊力が込められた無数の氷の刃が宙を舞いながら、敵に襲い掛かるって聞いた事がある。」


俺の疑問に四葉が答えてくれる。


わざわざ作ったこのかっこいい氷像が砕け散るのか。何か勿体ない気がする。


これだけでかい氷像が砕け散ると、恐ろしい数の刃になるだろうな。マンガとかで有りがちな技だが……平和にいこうよ平和に。


「さぁさぁ!!獣神様の力を見せてもらいましょーか!!」


「獣王様は伊達ではない。生半可な攻撃では傷すらつかぬ程、高密度な霊力が込められている氷像だ。この俺ですら砕くのは骨が折れる。」


聞いてもいない大隈の説明口調を聞き流しつつ、しゃもじの方に目を向けると、


「あはっ!!しゃもじ!くすぐったいよぉ。」


と巫女服の中のしゃもじが楽しそうにしていた。


…………ふーん。あぁそう。


別に羨ましくなんかないんだからね。


「しゃもじおいで?」


「ねむいぞー」


言う事なんか聞きやしない。まぉ元来猫とはそんな生物だしな。


童謡にもあるように、寒い中では誰より先にこたつを占領し、丸くなって寝るのが猫だ。


頭が良過ぎる故に人間に従ったりしない。うん。第一人間に従うから賢いだなんておかしいだろう?


「肝心の獣神様があの様子なんだけど。」


「『契約の鎖』を使えば良いではないのか?」


『契約の鎖』?リスさんは何を言い出すんだ?また常識という奴か?


大体猫に鎖なんかつける訳ないだろう。首輪も鈴もストレスになるというのに。


「契約の言霊があったろう?」


……ないわ。この世界に来た時には契約してたっぽいし。


「まさか…?獣神様は(ことごと)く常識から外れているのか?」


「そうみたいだな…。」


契約には言霊が必要なのか。それでその言葉を口にすれば、ある程度精霊に言う事を聞かせられるって事かな?


いやいやいや。まずこの状況をどうにかしなきゃな。このままだと凍えて…しまいそうにはない。この厨師服のおかげかな?


四葉の服に手を突っ込んでも仕方のない状況じゃないかこれは?


うん。そうだな。不可抗力というやつなのかもしれない。


……て、そんな訳ないわな。


――契約せし我の霊力を糧に獣神の名の根源たるその力を貸し与えよ――


俺が言霊を紡ぐとぽわっとした光に包まれた。やはり力が沸いてくる感覚だ。


この状態で霊法を放てば、獣神様の力を見せた事になるのだろうか?


「うまーーーうまーー」


四葉の服の中から聞こえる声を無視して、ウサギさん達に視線を送ると。


「それでもまぁ、良いでしょう!」


と言わんばかりに頷かれた。




「――狐火――」


俺が手を氷像に向け、言葉を発した瞬間にとてつもない霊力の収束を感じる。


――このままだとあのガスタンクよりでかい狐火が発射されてしまう。それって皆を巻き込んでしまうのではないか。


そう思いすぐさま霊力を収縮させて調整を図る、が。


無理矢理収縮させられた巨大な火の玉は、まるで小さな太陽のような光と熱を放つ球になり。瞬時に空に向けて放ったのだが。


氷像は一瞬にして気化し、周りの植物は水分を失って枯れ果て、岩が風化し、目測半径50メートルが砂漠と化した。


………。なんだこれ。核兵器よりやばいんじゃないか?


顎が外れているんじゃないか、と思う程口を開き驚愕する獣人達。


いや良かった。普通の人間なら多分今の一瞬で骨だろ。なにか抵抗的なものがあるのかな?


だからやめとけって言ったのに。


……レラは!?っと思ったが、そういえば俺の霊力で包んでいるんだった。


危な過ぎるぞ獣神の力。俺の意思で制御できる範疇を超えている。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ