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猫と杓子がやたら強い。  作者: しゃもじ派
食の神 プウ
24/77


「間違いなく居ますよ。『神』という定義はそれぞれでしょうが、私達は地の精霊の眷属なので『神』は『地亀様』ですから。」


まぁ『創造をした者』を神と呼ぶならばそうだよな。そもそも『神』とは曖昧でいてナンボみたいな部分がある。しゃもじもこの世界では獣『神』だし。


プウが実在した事は杓子が証明している。つまり探す事は出来るハズだ。……だけどまぁ急ぐ事でもない。


「とりあえず『人』の世界を見てみたいかな。俺も『人』だし。」


明らかに表情が陰る皆を見渡しながらも、やはり同種族への期待はどうしても消えない。


「あまりオススメはできんのぉ…。」


代表して口を開いたジジイ。確かにさっきのチンピラみたいのばっかだったら見限るけどさ。あんな奴ばっかりじゃないよな多分。


「そういえばさっきの『人』はどうなるんですか?」


「悪魔との契約は切れていますから、特にこちらからは何も。」


「確かに、捨て置いても問題ないじゃろう。どうせ後僅かしか生きられんしの。」


もう悪魔に寿命をかなり吸いとられてしまったのだろうか。確かに健康的とは言えない体つきだった。


「まぁ今日はゆっくりしていって下さい。里の者で宴の準備をしておりますので。」


「ありがとうございます。」






――――なんだこれ。いくら急だったからって、これはダメだろ。


九尾の隠れ家?から帰ってきた俺等の前では、宴の準備が進められていた。


里の中央に広場があり、そこへテーブルか置かれ、(わら)が敷き詰められて、簡易宴会場ができていた。


まぁそこまではいい。問題は机の上にある食材に見えるもの。調理していないただの食材が、土を焼いて出来た皿に乱雑に乗せられて並んでいる。


生の獣肉のような塊、茹で過ぎてボロボロの魚、皿の上で蠢く(うじ)虫、雑草サラダ、草原で見た足鰯とやらのダシスープ。



……プウが何故俺をこの世界に連れてきたのか解った気がする。四葉も大樹も俺の焼肉美味いって……あぁ『ちゃんとした料理を食った事がない』って事だった訳だ?足鰯のダシスープに至ってはただ生の足鰯の茹で汁……ダシと名乗らないで欲しい。


さっきこれをどう調理するのか、配膳してるおばちゃんに聞いたら、変な顔された上で「もうすぐ出来ますので……お腹すいたんですか?」って笑われた。


『おもてなし』の料理がこれ……ダメだ我慢ならん。


「料理人を呼べ!!」


ついに叫んでしまった。登場したのは里長だ。……マジか。


「いやはや里の連中に、儂の作る料理が一番美味いと持ち上げられましてな?」


「そうだ!」「里長以上の料理人はこの里にはいない!」という声も聞こえた。照れた様子の里長にイラっとするが、ここは抑える。


「実は俺、旅の料理人でして。ちょっとアレンジさせてもらっていいですか?」


「……あれんじ?」


あぁそうか伝わらないか。じゃあ……やらせて戴こう。



雑草にしか見えない一応緑の草は、噛んでみるとレモングラスに近い。


生の獣肉の塊は杓子から出した胡椒をすり込み、しばらく寝かした後、表面を大樹の霊法でこんがりと焼いてから、杓子を(かめ)に変えて蒸し焼きにする。


茹で過ぎたボロボロの魚は杓子をフライパンに変化させて空煎りして、用意して置いた醤油・味醂(みりん)・胡麻と混ぜ合わせる。……まさか胡麻まで出せるとは。杓子恐るべし。


蛆虫は……まぁ蜂の子だと思うしかない。近くにいた山羊っぽい動物から絞った乳を貰い、小麦粉とバターでホワイトソースを作る。ちなみに小麦粉とバターは杓子から出せたが、牛乳は無理だった。……良く解らないがバターは調味料なのか?


足鰯のダシスープ(ただの茹で汁)は全部捨ててやった。生臭くてどうにもならない。茹でられた足鰯はつみれにしてみた。干し蟹魚からとったダシ汁に、塩・酒・味噌で味を整える。



結果的に


生の獣肉のような塊と雑草のサラダ→ローストビーフにレモングラスを散らしたもの。


茹で過ぎてボロボロの魚→酒のツマミに持ってこいな佃煮風。


皿の上で蠢く蛆虫→エビ(偽)グラタン。


足鰯の煮汁→つみれの味噌汁。


ここまで進化させる事に成功する。杓子様々だな。



「おぉぉおお……。」


「美味しそう……。」


「見た事もない料理だが……香ばしい香りがたまらん。」


「めしめしー!」


出来上がった料理を見て様々な声が聞こえてきた。里の住人全員分を作るのは疲れた。


あぁしゃもじのご飯はまだだ。もうちょい四葉に遊んでもらいなさい。俺も腹が減ったし、っていうか、さっき九尾に肉みたいなのもらってたし。


「あら?貴方は料理人だったのですね?」


と見知らぬ金髪の背の低い10歳くらいの美少女が話しかけてきた。誰だ?


「あぁ。これは失礼しました。私は九尾です。この身体は風華の霊力を練り込んだ泥人形です。ちゃんとご飯も食べれますよ?」


……ほぅ。泥人形のわりにはかなり美麗だ。というか普通に狐耳の美少女だ。九尾の歳は……まぁ考えないようにしようか。


霊力とは万能だな。『人形(ひとがた)』ってやつか?陰陽師とかの術にありそうだ。漫画知識だが。


「あれ?息子達はどうしたんですか?」


そういえば焔の兄達とはまだ会ってない。


「今は地亀様の(ほこら)にお参りに出掛けています。直に帰ると思いますので、その時は御挨拶をさせますので。」


少し楽しみにしているのは内緒だ。実際焔はシベリアンハスキーのような大型犬みたいな可愛さがあるし。


まぁいいか。実食だ。



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