表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と杓子がやたら強い。  作者: しゃもじ派
食の神 プウ
23/77

謁見

「深い慈悲を戴き、重ねて感謝いたします。…ところで、貴方は『人』で御座いましょう?獣神様との契約の経緯をお教えいただけますか?」


まぁ気になるよね。俺も逆の立場なら気になる…が。


「話せる事がないんですよ。すみません。」


「記憶を失っているらしいぞい!」


ジジイが話に入ってきた。いやお前転移の時名前呼ばれてなかっただろ!?あれか!?体の一部に触れていれば可!的なあれか!?


「おやおや。花王様。『薔薇の女王』に(はか)られ、『王の種』を奪われたと聞き及んでおりますが。」


「久しいな九尾。その通りじゃ。今は直人に同行し、『王の種』を取り戻す算段を練っている所じゃ。」

聞いてねぇよ!?いや確かに『王の種』の話は聞いたけど、算段云々は知らない!!いやそれよりも。


「え…。九尾様とお知り合いなのですか?」


そこだよ四葉!良い質問だ。しかも口振りで察するに立場が九尾よりも上っぽい。枯れ果てたジジイなのに。


「そうじゃよ?何かおかしいか?」


おかしい部分しかねぇよジジイ!!なんで植物妖怪と上位精霊が知り合いなんだよ。しかも話し方ではジジイの方が偉いって感じだし!!


「この子は四葉、と申します九尾様。私、風華の実子で御座います。」


「そうですか。風華の実子ですか。…となるとそこに居るのは…。」


「はい。主人の大樹、と申します。」


四葉の母が二人を紹介した。今気がついたが、大樹が片膝をついて頭を下げている。そうか、大樹も四葉も九尾との謁見は初めてか。


「で、なんでジジイ…さんは九尾様と知り合いなんだ?」


「光雨がもたらす『恵みと惨事』で、じゃ。光雨が降ればそこは戦場になろう?生物が強大化しないように、その地にいる精霊や妖精を逃がす必要があるんじゃよ。」


「そう…。水竜が仮に精霊や妖精を食らっていたら、あんなものでは済まないのですよ。恐らくは大陸を覆いつくす程になっていた事でしょう。」


そんなにでかくなるのか。それは厄介だ。早急な対策が必要になってくるんだな。


「その時に協力し合ったって事か。」


「その通りです。うふふふふ…。花王様がまさか『人』を連れ添うとは、思いも寄りませんでしたけど。」


「ほほ!!儂もじゃよ。何が起こるかわからんのぉ。」


なんで俺が連れ添われているって感じになってんだ!?不愉快だ!!!あれ?でも妖精はともかく精霊が『契約』以外で生物界に介入出来ないのなら、その逆も然りじゃないか?


「その強力な霊力は、精霊すら生物界に具現化してしまう…それが光雨という大災害なのじゃ。」


俺の疑問を見通したようにジジイは言葉を繋ぐ。光雲がもたらす光雨(こうう)か。蛇があのサイズになるくらいだからな。恐ろしさは良く解る。


「具現化された精霊はどうなったんだ?今もいるのか?」


「それは…。」


ジジイが言葉を詰まらせる。なんとなく想像はつく。意地悪な質問をしてしまった。


「具現化した精霊は、三大精霊様…前回の場合は地の精霊『地亀(ちき)』様の体内へと吸収されました。……あなたも見たはずです。里の門の赤い石。あれは地亀様が生み出した『精霊の欠片』。つまりあの中に具現化してしまった精霊が封じられています。」


そういう事だろうな。精霊が具現化してしまえば、生物界のバランスが崩れてしまう事は容易に想像がつく。具現化できる『悪魔』がいるから、恐怖が拭えないのと同じように。


しかし不憫だ。食われて、更に糞になって復活後、封印だなんて。


「しゃもじのふ…『精霊の欠片』はどうなんだ?」


「ふむ。じゃから儂らは、精霊が封じ込まれているものを『精霊石(せいれいせき)』と呼んで区別しておる。ただの『精霊の欠片』とは違い、『精霊石』は霊力を込めると呼応して、契約せずとも精霊の力を使う事ができるんじゃ。」


なるほど。石自体が強い霊力を放つんだな。里長が詠唱無しで大量の狐火を放つ事が出来たのはその為か。


「直人はこれからどこに行くの?」


唐突な四葉の問い。……そうなんだよね。プウはとりあえず「料理をしてもらう」としか言わなかったし。とりあえずプウに会う方法でも模索しようか。


元の世界に帰る方法とかはあるのか?まぁ家族は厄介払い出来たぐらいにか思っていないだろうし、しゃもじが居れば俺は良いけど。


「わからない。」


これが今言える答えだ。『霊力を上げる料理』だって、公言していい事はないし、獣人が霊力を高めまくったらそれはそれでバランス崩れそうだ。


……まぁとりあえずは風来坊だろう。よそ者は早々と去るべきだ。


「しばらく…里に居たら?」


「いや…気持ちだけありがたく受け取っておくよ。俺は自分が何をするべきかを考えなければいけないから。」


「……。ちなみにぃ…じゃが、薔薇の女王の所へ行く選択肢は……。」


「今の所はないな。利点が少ない。」


明らかにしゅんとしたジジイをシカトして、試しに九尾に聞いてみた。


「神って存在すると思いますか?」と。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ