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7話 なんか毎日頑張ってる

☆24日目


我が輩は触手である。名前はまだ無い。



考えてみたら名前無いんだよね、俺。呼んでくれる相手も居ないから別に困らないんだけどさ。前世の名前もなんか半端に思い出せないし。転生系主人公(失笑)のデフォ設定ですか?



ま、判らんからいつまでも考えててもしょうが無いか。



どうせ俺、モブだし。あったとしても、書類のお手本(らん)とかみたいな『触手太郎』レベルだろう。



人間、分不相応なことを考えるとロクなこと無いしね~。



そういえばなんか今朝もラジオ体操してた時に流星が流れてた。かなり地面に近いところだったからそのうち洞窟の上に落ちてきそうで怖いな~。



つか、あれって本当に流星なのか?なんか、それにしては妙に大きかったような気がするんだけどな~。



ま、いっか。考えても判んねえし。



今日は森の中を散歩することにする。最近、色々とあったせいで働きづめだったからね~。リフレッシュリフレッシュ。



たまには自分にご褒美をあげないと。前世じゃ俺に最も遠い生き様だった過労死をしちゃうからネ。



世の中、(むち)ばっかじゃ中々上手くいかないのさ!特に俺には、(あめ)9鞭1くらいの割合じゃないと。



勿論、散歩にリスクが無いわけじゃない。でも、ここ数日ずっとダンジョンを掘ってたり、洞窟の周りにいたから、急に外に出たとしても、罠を張ってることは無いだろう。・・・多分。



この前は囲まれたけど、今は草原じゃなくて森の中だから大丈夫だろ。・・・・・・多分。



段々怖くなってきたけど、いざとなったら木の上に乗り移って逃げ出そう。



そう決意して森の中を歩き始めて1時間ほど。



紅白色の猿(?)が現れた!



ふと視線を感じて振り返ると、なんか目の前の木の間から猿がこっち見てる。大きさは多分オランウータンくらいかな?全長が2メートルを超える今の俺から見ると、かなり小さい。



全身の毛は真っ白なんだけど、腹のあたりの毛だけ何故か鮮やかな赤い色をしてる。



変わった毛並みの猿だな~。



なんか呆けたみたいにこっちを見てるし、仲間に苛められたんだろうか。最近俺がよく羊漢に蹴られたり鳥達に突っつかれたりした後に浮かべる表情に似てるような気がする。



ああいうときは、一人で泣きたくなったりするんだよな。俺自身も割りと共感する部分があるので、見なかったことにした。



さっと方向転換してそそくさとその場を立ち去ることに。ん?今なんか光った?・・・気のせいだろ。多分。



あ~~、俺は何も見なかった。見なかったったら見なかった。つまり立ち止まっていない。QED。違うって?そこは無視してくれ。



突っ込み電波に脳内で返答していると、目の前で音がして何かが転がってくる。



石?なんで?



振り返ると、そこにはやっぱり白い猿が。なんか石を持ってるし、怒った顔でこっちを威嚇してるし。



なんだよ。見なかったことにして帰ろうとしてたじゃん。



あれか?恥ずかしいところを見た奴は生かしておけん的なリアクション?傷つきやすいティーンの防衛策ですか?



無茶言うなっても~~。そんなに見られるのが嫌なら誰にもバレない場所で泣けっての。俺だってそうしてんだから。



そう思ってどうするべきか考えてると、また石が飛んできた。が、俺はクネクネと触手を動かして避ける。



う~~ん、また動物に嫌われるスキルが遺憾無く発揮されてるみたいだ。普段ならここで一目散に逃げるところだが、しかし今回は違うぞ!



え、何故かって?相手が人間じゃないからさッ!武器も持ってないし、そもそも人間じゃないから怖くない!



・・・けっして、普段のストレスをぶつけてやれ、とか考えてるわけじゃないよ?ボク、紳士だし。攻撃もしないし。



ただ、身にかかる火の粉は自分で払うってだけさ!そうですよね、拉麺男(ラーメンマン)先輩!



俺がやる気になったのが判ったのか、猿はいっそう激しい勢いで投石してくるが、身体にはかすりもしない。



見えるぞぉぉッ!俺にも敵が見えるッ!いや、別に俺が凄いんじゃなくて触手ボデーの反射神経が凄いだけなんだろうけどさ。



ともかく石の軌道が見るだけで判るから、そこから逃げるだけで済む。



ふははははは!こんなスローボールなら表面まですぐに読めるぞ!(たちばな)さん式特訓も簡単だッ!



猿は次々と石が避けられるのに業を煮やしたのか、それとも俺の余裕が気に入らなかったのか今度は自分で襲いかかって来た。



引っ掻くつもりか!だが、そうはさせん!



俺はより触手をクネクネヌルヌル動かすだけで、猿の爪攻撃をかわしていく。当然、掴まれたりもしない。



これぞ、秘奥義『KYOUSUIガード』!!見えない超能力だって至近距離からかわしちゃったりする回避技なのさッ!派生技の『フライング二丁目固め』まではしないがな!



そのまましばらく攻撃を続けていたが、しかし一向に当たらないまま猿は根負けした。



荒い息をついてへたり込むと、そのまま前のめりに倒れる。



WINNER!!・・・ってあれ?



なんか、ドクドク赤いのが倒れたままの猿の腹のあたりから地面に染みこんでるような気がするのは、気のせいかナ?気のせいだよネ?尋ねるが、猿は苦しそうな息をしたまま起き上がる様子は無い。



――――――――反対に、赤い染みは地面に広がっていく。



お前の血は何色だぁぁぁッ!



緑色ですが、何か?



落ち着け、落ち着け。素数を、素数を数えて・・・、あれ?素数ってなんだっけ?自分の頭の悪さが憎い!



もしかしなくても、これって俺のせいか?でも、俺は攻撃を避けてただけなのに・・・。っていうか、あぁ、なんか意識が・・・。



血を見たせいで貧血になりそうになるが、どうにか踏みとどまる。気絶から目を覚ましたら死体とご対面とかカンベンだし。



う~~~~~~~~~ん・・・、とりあえず、洞窟に連れて行くか。



・・・正直放っておきたいけど、そうしたらしたでどうなったのか絶対気になるし。もし何もしないで死んだりしたら、絶対後悔しまくるしな~。



しかし、血が触手につく感触が嫌で何回か猿を落としそうになったのは秘密だ。




☆25日目


猿の看病ってどうやったらいのか判らないから、とりあえず果物の()り汁と羊漢のミルクを飲ませて栄養と水分の補給をして、紐と()でて消毒したボロ布で傷を縛り、止血する。



好きなドラマは仁――JIN――でしたッ!



因みにこれだけだとテキパキと応急処置が出来てたように聞こえるけど、実際は血を見たせいで途中で数回テンパったり気絶しそうになったりしてた。



しかもそんなに努力したのに、なんかまた新しい魔法で傷が治ったってのが一番の残念ポイントだな。



けっこうザックリいってる傷だったから、素人医学でどうするべきか悩んでたら、いつも通り光った後、見る見るうちに傷が消えていくし。正直、見ててキモかった。



っていうか、さ。



俺だって別に努力が好きってわけじゃねえんだよぉぉぉぉぉッ!むしろ嫌いだよ!だからどうせ魔法が使えるなら、一通り治療が終わった後じゃなくて最初からにしてくれよぉ!



けっこうイッパイイッパイになってんだからさぁ。いい加減にしないと泣くぞコラ!



・・・ともかく、猿は一命を取り留めたっぽいが、不思議なことに体力が底をついてるせいでまだ意識を取り戻さない。血は相当量流れてたとはいえ、何故ここまで体力を失ってるんだろう。



とりあえず、俺とは無関係な事柄でそうなったことは語るまでも無いだろう。・・・・・・多分。おそらく。



眠っている猿は多少苦しそうな顔をしているが、それでも倒れた時に比べれば顔色はかなり良い。順調に回復してるんだろう。



さすがは野生動物。



しかし、いつまでも猿って呼ぶのは可哀想だ。名前を決めてやるか。



う~~ん。猿モネラ・・・は止めとこう。病原菌扱いは地味にこたえるしな・・・、経験上。

花中島マサル・・・も話が通じなさそうだな。悩むな~。様式美的には突飛なのにはしたくないし。



う~ん。猿、SARU、エテ、モンキー・・・・・・。モンキー!?



そうだ、ジョジョにしよう!お前はモンキーなんだよ、ジョジョ―――――ッ!



うん、黄金の精神を持ってそうな良い名前じゃないか!



思いつきに自画自賛しつつ、ボロ布と鳥達から抜け落ちた羽毛で作った布団をジョジョに掛けてやる。



洞窟の中は俺には適温だが、元怪我人・・・怪我猿には多少冷えるかもしれないしな。



ふう。



そういえば、ジョジョはなんであんなトコで重傷を負ってたんだろ?う~ん、右手ならカーズを疑う所だが、怪我があったのは腹だしな~。



けっこう深かったから、ナイフ傷でもなさそうだし・・・。よく考えてみると人間以外にもヤバい動物がいるのなら、俺自身も対策が必要だしね~。



う~ん、まずこの洞窟に扉をつけようか。作るの自体は枠と扉を粘土で作った後、石化させればいいだけだからそう難しくないし。



仮にそれ以外の必要が出てきてもジョジョが目を覚ませば判ることだしね~。



そのためには早く目を覚ましてもらわないと。そうだ、今度は山菜のスープを飲ませてやることにしよう。



自分の昼食と一緒に作れるから俺も楽だし。



☆26日目


ジョジョはまだ目を覚まさない。今朝には目を覚ますと思ってたんだけど、アテが外れたっぽい。



てか、昨日洞窟に扉を作ったんだけど、一つ困ったことが出てきた。



扉を閉めると洞窟内がほぼ完全に暗闇になるから、それでも見える俺以外は動くことも難しくなってくるんだよね。まあ元々夜になったら暗闇なんだけど。



一昨日までならそれでも良かったんだけど、今はジョジョがいるし、こいつが襲ってきた相手をも助けるという征服王並の俺のカリスマにひれ伏してツンデレハーレム入りをするなら、かなり不便になってくる。



う~ん、通風孔を設置してるとはいえほとんど締め切った洞窟の中で火を使ったりしたら、すぐに酸欠でDEAD OR ALIVEだ。酸素欠乏症にはなりたくないッス。



でも燃やせるものなんて、松明くらいだし・・・。



う~~ん。とりあえず、燭台(しょくだい)でも作ってみるか。それに一番良い魔法が使えるようになるかもしれんし。



正直、俺が使える火の魔法は妙に威力の調節が難しいし。



しかし、どうやって作る?いつも通り粘土を捏ねて石化してもいいんだが、それだとよっぽど上手く作らないと火の光が遮られちゃうしな~~。



素人が作ることを考えると、正直難しそうだ。



火で燃えたりしない変形できる素材で、欲を言えば透明なものって・・・・・・、あ!



そういや、あのよく判らん鉱石があったっけ!



数だけは馬鹿みたいにあるから、アレを使って燭台を作ろう!



眠ったままのジョジョに朝食を飲ませた後、小部屋から鉱石を一個持ち出すと、洞窟の外に出る。



ドリルの音は多少響くからネ。俺は紳士だからそういう配慮もできるのさ!凄いぞ紳士!田舎っぺが目指すだけはある!そこに痺れる憧れるぅ!



そうして数十分すると、俺の目の前には丸い皿の中心に刺がついた透明の燭台が完成していた。



うん、中々の出来だ。蝋燭か油さえあればそのまま使えるんだけど・・・。



う~~ん、動物の脂を絞るのは無理だし、やっぱ魔法に頼るしかないか~。樹液には燃料になるものがあるって聞いたことがあるけど、それらしいのはこのあたりには無いしな。



うん、それじゃあ魔法にチャレンジしてみようか。



1時間後。



小さい火、小さい火・・・・・・あかん。全く反応が無い。というか、変身する魔法が無いか試したときみたいに全くとっかかりが無い。



・・・それなら、火じゃなくて光そのものとかはどうだ?魔法を使うとき、なんか毎回俺の身体から出てくるし。



それに、なんかその方が高等な魔法っぽいし。



よし、再チャレンジだ。



光、光、光、光、光、光・・・・・・う~ん、なんか出てきそうだけど、こりゃ時間がかかりそうだ。



元々あった火の魔法を調節できるように訓練した方が早いかな?



既に2ブッダフェイスを消費してるから、三回目の正直だぜ!



――――――結果、燭台が萌えました。・・・じゃなくて、燃えました。



ゴオォォォォォォォッ!って音を発てて燭台全体が燃えてる。それを見た瞬間、へたり込みそうになった。3ブッダフェイスが・・・。空海なら確実にキレてるところだぞ、これ。



また燭台を作り直すのか・・・。いや、そもそも使える魔法が無いんだったら、作っても意味が無いし・・・・・・。



触手を腕組みして悩んでみるが、結論は出ない。



ジョジョには外付けの小屋で我慢してもらうしかないか・・・。最終的にそう決め、ふと燭台を見ると火が消えてた。



しかも、あれだけ火であぶられたのに燭台は全く溶けてないし、なんか内側から光ってるし。



・・・意味ワカンネ。なんぞコレ?



あれか?飛行石?



でも俺、名前の最後がウル・ラピュタになったりしてないだろうしな~。



そもそもこの石、っていうか燭台、飛んでないし。



とりあえず持ち上げてみると、ほんのりと暖かい。う~~ん、もしかしてホッカイロ?いや、光らせる必要ないだろ、それ。



あ、もしかしてこれってパワーストーンか?俺の魔法を吸収したの?本物だったら実にヤバそうだけど。



主に鬼畜ジジイとか改造大好き帝国に目をつけられる意味で。



でも、本物だったらこんなにゴロゴロあるわけないから、類似品だろ。多分。てかそうであって欲しい。



う~~ん、とりあえず本当に魔法を吸収するのか試してみるか。



そう考えて削りだしておいた手のひら大の鉱石に、とりあえず目ビームを当ててみる。



数秒後そこにあったのは、燭台とは別の色に光る石だった。



・・・間違い無いっぽいな。とりあえず、この石はホッカイロと照明に使うことにしよう。



うん、数はかなりあったからジョジョの部屋を洞窟に作っても大丈夫だろうし。



タナボタ的な問題解決にまた若干の不満はあったが、とりあえずは良いことにする。というか考えるのが面倒臭くなってきたし。



よし、(非性的な意味で)暖めてやるからな!待ってろよ、ジョジョ!

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