表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

1話 転生しました

☆一日目


絶望には底が無いって聞いたことがあるけど、どうなんだろう、この状況。



何年か前に魔法使いにクラスチェンジしたときのショックのレベルじゃねえぞ、コレ。



ため息をついて、薄暗い洞窟の中で立ち上がる。



視界が高くなったから、多分立ち上がったはず・・・なんだけど、あんま自信が無い。



それは何故か?



「うわッ!モンスターだ!」



ああ、いいタイミングでなんか金髪のヒトが。そうです、私がモンスターです。



とか言ってる場合じゃないな。落ち着け落ち着け。



「phんじぇあqjh」ぱj@おえhじぇあ!」



うえ?



なんぞコレ?耳とか目は今までどうりだったから、勇気をもって数年ぶりに他人に話かけてみたのに、出てきたのは奇妙なうなり声。



これじゃ、威嚇されてるとしか・・・・・・、あ、さっきのヒトが逃げていく。



ですよねー。



腕の一本を持ち上げ、頭をかこうとするが、そもそも自分の頭が何処にあるのかも判らない。



ため息をつくと、洞窟から出て行くのは諦めた。



元々他人と話すのは苦手だし、話しかけても逃げられるんじゃ、精神的ダメージが溜まるだけだ。



それに、適度に湿った洞窟は案外居心地がいい。腹が減ったら壁の表面に生えているコケを食べれば、すぐに満腹になった。人間だったときなら、確実に出来なかった食事だが、不思議と忌避感は無い。精神が肉体に引っ張られているのだろうか。



一心地つくと、またため息が出た。



皆さんは転生という事象をご存知だろうか。死んだ人間がそれまでとは別な生き物として再びこの世に生まれるというアレである。



ご他聞にもれず、俺も転生者だ。



でもさあ。



普通、それって漫画とかアニメとかの主人公じゃね?



いや、せめて人間じゃね?



元は仏教の用語?らしいし、ありえないわけじゃないんだろうけど、何よコレ。



そう考えて腕を全部持ち上げる。



1,2,3,4,5,6,7,8,9,10。それ以上は数えるのが馬鹿馬鹿しくなってくるような腕、腕、腕。表面に吸盤がくっついてるようなのもあれば、ナメクジみたいにツルツルしてるのもある。中にはちょっと公衆の面前では表現しづらい、とても卑猥な形状のものですらある。先っちょに、縦に割れ目があるやつとかも。

総じて脊椎動物のような骨の周囲を筋肉が覆っているような質感ではなく、あえて言うなら、象の鼻に近いものがある。



多種多様さは種の保存のためには自然なことかもしれないが、それを一人分の身体で実現するなと思う。



っていうか、触手だ。



象に例えたけど。無理。無理だから。腕として俺が動かしてるそれ。



触手としか思えない。



エロ方面では中々ご活躍のアレである。ファンタジー系の陵辱要素ありのエロゲだったら登場率8割を超えるんじゃないだろうか。俺もそれなりに好きだったりする。言うまでも無いが、エロ要員である。



勿論、好きって言っても使われてるのを第三者として眺める側での話しだけど。自分が使われる側なんて誰得だし、自分がなったりする側なんてありえないし。



・・・話がそれた。



ともかく、死んだはずの俺は、気がついたらこの薄暗い洞窟内にいて、何故か触手になっている。



WHY?



生前、あまり触手に縁の無い生活を送っていたのに・・・、とか考えても、誰だってそうだろうし。



もしかしたら、今まで俺が見たことのある蛸とか烏賊みたいな触手を持った生き物も転生した人間だったんだろうか?



ま、いいか。



というか、煩わしい集団生活を送る必要が無いと考えれば、中々いいかも。早々に考えることを放棄した。自分の身体に対する嫌悪感なんて考えるだけ無駄無駄。



寝よう。



とりあえず、俺の触手生活はそうやって幕を開けた。




☆2日目


半日ほど壁を這っているカタツムリっぽい虫を見ていたのだが、昼過ぎに小さな熊が洞窟に入ってきた。



どうやらじっと虫を観察していたせいで俺に気付かなかったようだ。



っていうか、なんで虫をそんな集中して観察してたんだろう、俺。暇だったからいいんだけど。



60cmくらいの小さな熊はのそのそと俺の間近まで近寄ってくると、鼻を鳴らして周囲を警戒し始める。洞窟内は結構深く、そのときは気付かなかったが、俺がいた場所はほぼ暗闇の場所だったらしい。



やがて、臭いを追った熊が俺の触手の一本を(くわ)え、あれ?と思った俺が振り返ろうとした瞬間、思いっきり噛み付くと、俺はその痛みに悲鳴をあげた。



「ぴgんじゃphじぇrがぽいhじぇrごqじゃえr!」



内心では痛ッ!くらいのつもりだったのだが、その声は予想外に野太く、しかも洞窟内だからか、やたらと反響して聞こえた。



思わず立ち上がった俺はだいたい2メートル以上。



視線があった熊は割りと可愛い外見をしていたが、その目には明らかな恐怖が浮かぶ。



驚いた熊は悲鳴をあげながら洞窟から走り去っていった。



いきなり攻撃された上、一目で逃げられたことで少し怒りも湧いたが、じゅるじゅると音をたててうねる触手を見ていると、まああの反応も判らなくも無いか、と嘆息する。



誰だって暗い洞窟でいきなり奇声をあげて触手が襲い掛かってきたら、逃げるだろうし。



噛み付かれた触手も、数秒後には緑色の血?が停まり、傷も消えた。痛みも無いので、さらにどうでもよくなってくる。



結局、その日は丸一日虫がコケを食べる姿を観察して終わった。



暇すぎだろ、俺。




☆3日目


暇すぎるので、洞窟の中を探索してみた。すると、入り口から百メートルくらい奥で行き止まりになってることが判った。だからどうってわけじゃないんだけど、そこには数本のつるはしと、一輪車?みたいのがあった。



もしかして、ここ、鉱山か何かなんだろうか?つるはしも一輪車も、木でできている部分は腐食していないから、捨てられてからそう時間は経っていないみたいだ。



首(そんなものがあれば、だが)を傾げながら、つるはしを持ってみるとかなり軽い。



金属部分がけっこう大きいから、持ち上がるか心配だったが、もしかしたら軽い金属で出来てるのかもしれないな。



ふむ。



暇なんだから、鉱夫ごっこでもしてみるか。虫の観察も少し飽きてきたし。



なんとなく、そう考えてつるはしを振り上げ、壁に叩きつけると、当たった部分の壁が崩れ落ち、つるはしがへし折れた。



あっるぇー?



折れたつるはしを見るが、その部分だけが朽ちていたわけじゃなさそうだ。



・・・ということは、今の俺の触手はけっこう馬鹿力だということだろうか。



試しに、もう一回、今度は加減してつるはしを振り下ろす。



土の壁はざくざくと削られていく。



なんだか面白いくらいに土が削られるので、これを次の暇潰しにすることにした。



どうでもいいけど、一日中暇つぶしって転生しても生活習慣が変わらないのか、俺は・・・。



半日ほど掘り進めると、なんだか硬い岩にぶち当たった。



壊してもいいんだが、そうするとつるはしを一本駄目にしないといけなくなりそうだったので、岩を掘り起こすことにする。岩に沿うように穴を掘っていくと、きらきらとした鉱石と一体になった岩が出てきた。



う~~ん、なんぞコレ?



宝石?なのかな~。大きさはだいたい直径1メートルくらいのでこぼこした球形で、俺の触手ならなんとか持ち上げられる程度の重さだ。



表面から見える鉱石は無色透明。ダイヤモンド?ないない。素人がテキトーに掘っただけで出てくるわけないもん。



だったらこれは何だ?いや、俺知らねえし。



・・・ま、いっか。しばらく考えてもよく判らなかったので、面倒くさくなって途中、掘っておいた小部屋に転がしておく。



その後も掘り進めると、同じようなものが2つ出てきた。やっぱり判らんから小部屋に転がす。



そうしてビフォーアフターすると、洞窟の広さが数倍以上になってきたし、時間も経ったので今日は止めることにした。



さすがに少し疲れたので、今日はもう寝よう。




☆4日目


今日も今日とて鉱夫ごっこ。



掘り進んでいくと、今日も岩が出てくる。やっぱり無色透明の鉱石が埋まっていたが、もはや流れるように小部屋へ。



判らないことは後で考えるに限る。



そうして、掘って掘って掘って掘って、とうとう最後には外まで貫通させた。



なんということでしょう。



入り口から行き止まりまで100メートルの、シンプルだった洞窟が、山の中を完全に貫通して入り口が二つに。内部のお部屋は7つ。4世帯の家族も納得の広々としたリビングです。



・・・ってやりすぎか。



とりあえず、貫通させた方の入り口から外を見るが、見渡す限り森だけで民家らしきものは無い。



ま、今の俺がそんなところに行っても相手にされないどころか、下手をしなくても殺されるだろう。



太陽の光の下で改めて見る俺の触手は、相変わらず表面がヌラヌラとした粘液で覆われていて、(性的な意味で)攻撃的だったり、(性的な意味で)威圧的な形状をしてたりするからなあ。



ともかく、今日は洞窟を貫通させたことで満足した。これ以上穴を掘り進めると崩落したりするかもしれないから、鉱夫ごっこは卒業かな。



う~~ん、でも明日から何をして暇つぶししようか?



・・・とりあえず寝てから考えよう。




☆5日目


今日は昨日と一昨日掘り起こした鉱石を見てみることにした。



とは言っても鉱石なんか判らんし、どうしたモンかな~~。



あ、そうだ。



鉱石を覆ってる石を砕いていったらどうだろう?



余計なモノが無くなれば、多少は判り易いかも。



そう考えて、鉱夫体験一日目で壊したつるはしを持ってくる。



全力でやると鉱石も一緒に砕けるので、慎重に、慎重に石の部分だけを取り除いていく。



これは中々の暇つぶしになりそうだ。



・・・一個を完全に鉱石だけにするまで、だいたい2時間くらいかかったか。



多少歪だが、出来上がったのは元の岩の半分くらいの鉱石の塊だった。



出来上がってもよく判らんけど、これって水晶ってやつかなあ。



う~ん。とりあえず他の岩も試してみるか。



2個目。3個目。4個目。5個目。6個目。7個目。8個目。9個目。



・・・全部同じだった。段々コツが判ってきて、最後の一個は1時間以内に削り終えたが、それでもやっぱり出てきたのは同じ水晶らしき?鉱石だった。



たしか、水晶ってここは、石英が多く含まれる鉱山なんだろうか?



触手で腕組みしながら考えてみるが、やっぱりよく判らない。



価値があるかどうかもよく判らないのでどうするか迷ったが、とりあえず小部屋に仕舞っておくことにした。俺じゃ、使い道ないし。



とりあえず今日はもう寝よう。




☆6日目


重大なことに気付いた。



俺、魔法が使えるみたいだ。



それに気付いたのは今朝のことだった。



目を覚まして、朝食のコケを食べてから外でラジオ体操をしていると、妙に日光がキツくなってきたから、光をさえぎるものが欲しいなあ、と思ったのだった。



そのままなら、後で木の葉とか枝で日傘を作ればいいんだが、そのときはとりあえずなにか欲しい、と思っただけだった。



次の瞬間。俺が立っている地面から、黒い光が出てきたと思うと、それは俺の身体に纏わりついて光をさえぎるヴェールみたいに全身を覆う膜になった。



それと同時に、それまで感じていた日光にたいする鬱陶しさが消えていた。



唐突なことで思考が停止していたが、我に返ると、俺は叫んでいた。



嬉しかったからかもしれないし、もしかしたら、単純に驚いたせいかもしれない。



ただ、確実なのは、その声を聞きつけて俺を見に来ていたヒトが、腰を抜かしたまま逃げていったことだった。危なそうだったから助けてあげたかったが、生憎若い女の人だったから、俺が近寄るわけにもいかない。



だって俺が近寄るだけで一枚画のシーンが始まりそうだもの。回想モードで何回でも見れちゃうよ。



あっはっは。そんな気がなくても陵辱ゲーのイベントにしか見えないキャラかー。



死にたくなってきたよーな。



・・・あまり考えないようにしよう。



それはともかく、魔法だ、魔法。



日傘魔法以外に何か使えないかと思って、色々と試してみると、とりあえず火を出すことが出来るらしいことが判った。



ふむ・・・。火か。



この魔法は洞窟の近くにあった岩を簡単に熔かせるくらいは温度が高いらしいが、使い方によっては自分も危ないので、洞窟での使用は控えることにしよう。



夕方、付近の木を数本折ってきて適当に積んでキャンプファイヤーをしてみたが、煙が酷くて目が痛くなってきただけだった。



やっぱ乾燥させないと駄目か。



でも、洞窟の中は結構湿ってるしなあ。



あ、そうだ。明日は、薪用の小屋を作ることにしよう。ついでに魔法の練習もしてみようか。



予定も決まったので、今日はもう寝よう。

なんだか衝動で書きました。

続く・・・んでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ