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義妹は、私だけを見ていた。―妹に愛されすぎた女の話―  作者: 桐原悠真


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第8話 ヒマワリの接触

「今日は美咲さん、来るかな。」


目の前を通るだけでもいいんだけど。


視線だけは、何度も店の外に向いていた。


「相沢君、その花の水かえてくれる?」


「はい、わかりました。」


「今日も美人のお姉さん、来るといいわね。」


「……はい。」


視線だけは、何度も店の外に向いていた。


来る理由なんて、ないのに。


昨日は、美咲さんが店の前を通った。


入らなかった。


……残念。


その前の日は、フラワーアレンジメントの日だったと思う。


花を抱えて、通っていた。


美咲さん、美人すぎる。


今日こそは――


来るよな。


店長に声をかけられた。


「相沢君、あの美人のお姉さん、待ってるでしょう。」


「……まあ。」


「隠さなくてもいいわよ。わかりやすいから。」

「本当に美人よね。私も見惚れちゃったもの。」

「頑張ってね。応援するわ。」


湊は視線を外した。


「……来ますよ。」


小さく、そう言った。


「来たら、接客は相沢君に任せるから。」


そう言って、店長が笑った。


「ありがとうございます。」


「じゃあ、次は榊の束作りましょう。」


「わかりました。」


手を動かす。


それでも、

視線だけは、何度も店の外に向いていた。


カランカラン。


「いらっしゃいませ。」


……来た。


心臓が、少しだけ跳ねる。


「相沢君、よろしく。」


店長が言った。


「こんにちは、美咲さん。」

「今日は何をお探しですか?」


……来た。


来ると思っていたのに、

少しだけ、驚いた。


「ヒマワリに合うお花が欲しいの。」


「何がいいかな……。」


美咲さんの顔を見る。


見すぎないようにする。


それでも、頬が少し熱くなる。


「ヒマワリに合うお花が欲しいの。」


少し考える。


「……カスミソウ、合うと思います。」


「主張しすぎないですけど、

 ヒマワリをきれいに見せてくれるので。」


「カスミソウ……素敵ね。」


「結構使いやすいですよね。」


「私、カスミソウ好きなんです。」


「……俺も好きです。カスミソウ。」


少しだけ間があいた。


「あの……今度――」


美咲の顔を見る。


「……いや、何でもありません。」


「えっと……カスミソウ包みますね。」


そう言って、カスミソウを包んでいた。


彼は、かわいい。


――そう思った。


胸が、少しだけ熱くなった。


私、何を考えてるのかしら。


駄目ね。


そう思いながら、

湊の指先を見ていた。


あの手で包まれる。


ふふ。


……いいわ。


そういうのも。


「どうぞ。」


お会計をした。


少しだけ、見つめる。


「ありがとう。」


「ありがとうございます。」


「あの……また、来てください。」


「相沢君……気づいたことを言っていいかしら。」


「何です?」


「いつも今くらいの時間よね?」


「はい。それが何か?」


少しだけ、間があいた。


「ということは……既婚者……かしら。」


「あ……。」


言葉が、続かなかった。


「店長……俺、どうしましょう。」


「……でも、まだ決まったわけじゃないわ。」


「相沢君……もう完全にハマってるわよね。」


少しだけ、間があいた。


「はい。」


否定する理由は、なかった。


「考えましょう。」


「でも……お子様はいなさそうね。」


「ですね。」


「専業主婦っぽいですよね……。」


「多分。」


少しだけ、間があく。


「でも、見ていると、満更じゃないのかなって思っちゃって……。」


「……いや、不倫は駄目よね。」


沈黙。


「良くはないですね。」


二人の目線が沈んだ。


「ねえ、百歩譲ってご主人次第とか……いや、ごめん。駄目ね。」


「……あんな美人だもん。ご主人が放っておかないわ。」


「ですよね。」


少しだけ笑う。


「撃沈でしょうか……。」


「私も応援するって思ったのだけど。」


「……はい。ありがとうございます。」


少しだけ間があいた。


「引き続き、気づいたことがあれば教える。」


「ありがとうございます。」


「……良い結果でありますように。」


カランカラン


「あの、すみません。」

「湊君、長持ちするお薬欲しいって思ってたのに買い忘れちゃって。」


見つめられた。


頬が、少し熱くなる。


やっぱり俺は止められない。


「長持ちするお薬ですね。」

「ちょっと待ってくださいね。」

「包みます。」


相手は専業主婦なんだ。


駄目だ。


そう思うのに、胸が高鳴る。


俺を見つめる目に意味を求めてしまう。


「これどうぞ。」


手が触れた。


美咲さんがピクリと動く。


視線を逸らす。


「ありがとう。」

「買えて良かった。」


お会計をした。


「ありがとうございます。」

「また……来てください。」


「店長……やっぱり俺……止められないかもです。」


少しだけ、間があいた。


「そうみたいね。」


止める気は、なさそうだった。

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