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義妹は、私だけを見ていた。―妹に愛されすぎた女の話―  作者: 桐原悠真


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第3話 ヒマワリの店

ヒマワリの花びらが、少しだけ下を向いていた。


水を替えながら、私は思った。

……花、買いに行こうかしら。


水あげ下手だったかしら……。


「いらっしゃいませ」


顔を上げた彼が、一瞬止まった。


「こんにちは。」


「……美咲さん。来てくれたんですね。」


「今日はどうされましたか。」


「ヒマワリが下を向いちゃって。

 新しいヒマワリ買おうかなって思ったんです。

 長持ちすればいいんですけど。」


湊は少しだけ首を振った。


「ヒマワリは、下を向くこともあります。」


そう言って、店の奥から一本の花を持ってきた。


「水は替えてましたか?」


「ええ。」


「それなら大丈夫だと思います。」


彼はヒマワリを指先で軽く触れた。


「ヒマワリは、光の方を向くんです。」

「だから、少し場所を変えるだけで元気になることもあります。」


「……そうなんですね。」


私は少し笑った。


「でも、もう一本欲しいかもしれないわ。」


湊は少し困ったように笑う。


「じゃあ、いいヒマワリ選びます。」


彼は真剣な顔で花を選び始めた。


その横顔を見ながら、私は思った。

……この子、本当に花が好きなのね。


少しして、湊が一本のヒマワリを持ってきた。


「これ、きれいですよ。」


ヒマワリの花びらが、光の中で揺れていた。


湊が私を見つめていた。


「それにします。」


目が合う。


「あ……すみません。いや……ヒマワリ包みますね。」


頬を赤らめた。


ぎこちない手つきでヒマワリが包まれていく。


「美咲さん……綺麗ですね。」


「どうぞ。これ。」


手が触れた。


「ありがとうございます。」

「あの……また来てくださいね。」


私は少し笑った。


「ええ。」


店を出ると、外は明るかった。

手の中のヒマワリが、光を受けて揺れている。


……また来ようかしら。


ヒマワリの花びらが、静かに揺れていた。


「あれ、ヒマワリ変えたのか?」


直哉が言った。


「そうなの。下向いちゃって。」


「ふぅん。」


美咲は美人だ。

大事にしている。

自慢の嫁だ。


ただ……何ていうか平和だ。


このヒマワリのように明るくて、平和な幸せのようだ。


「俺さ、ヒマワリも好きなんだけど、

 鈴蘭も好きなんだよね。」


「かわいいよね。」


「うん。」


直哉はヒマワリを見た。

明るくて、綺麗な花だ。

でも、鈴蘭は違う。

小さくて、静かで、どこか影がある。

……そっちの方が、好きかもしれない。


「鈴蘭ね……。」


美咲は思っていた。

あれって、毒あるよね。


ふふふ。


何となく、直哉らしい。


ちょっと面白いかも。


「そうね。」


私は小さく笑った。


「うん。」


「そうかも。」


テーブルの上のヒマワリが、静かに揺れている。

明るくて、まっすぐな花。


でも、鈴蘭は違う。


小さくて、白くて、可憐で――

毒がある。


私はヒマワリを見た。


……どっちが好きなんだろう。


ヒマワリの花びらが、光の中で静かに揺れていた。


「また週末に陽菜が来るって。」

「楽しみね。」


美咲はそう言って、コーヒーを渡した。


俺はそのコーヒーを一口飲んだ。


「ああ、楽しみだな。」


たまらないな。


直哉は少し笑った。


ヒマワリがテーブルの上で揺れている。


明るい花。

太陽みたいな色。


……週末か。

陽菜はきっと、また嬉しそうにヒマワリを見るだろう。


美咲はヒマワリに目を落とした。

昼間、花屋で選んだ花。

湊の顔が、ふと思い浮かぶ。


――また来てくださいね。

そう言って、少し赤くなっていた。


美咲は小さく笑った。


ヒマワリの花びらが、静かに揺れていた。

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