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義妹は、私だけを見ていた。―妹に愛されすぎた女の話―  作者: 桐原悠真
第一章 ヒマワリの視線

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第2話 ヒマワリの家

陽菜が振り返った。

「ねえ、美咲。綺麗ね。」


部屋の中はヒマワリの色で明るかった。


窓から入る光が花びらに当たって、

まるで小さな太陽がテーブルの上に置かれているみたいだった。


「でしょう?」


私は少しだけ笑った。


「昨日、花屋さんで見つけたの。」


陽菜はテーブルに近づいて、ヒマワリを覗き込む。

「元気な花ね。」


指先でそっと葉に触れる。

「美咲の家って、いつも花が綺麗。」


「陽菜が来るから飾ったのよ。

 かわいいでしょう。」


「うん。すごくいい。」

陽菜はヒマワリを見つめたまま笑った。


「お兄ちゃん、ちゃんと美咲のこと手伝ってる?」


リビングの方から声がした。


「せっかく美人のお嫁さん手に入れたんだから、

 ちゃんと手伝わないと駄目だよ。」


直哉は肩をすくめて笑う。

「言われなくても、美咲のことは大事にしてますから。」

そう言って、私の方をちらっと見た。


私は小さく笑い返す。


ヒマワリが、静かに揺れていた。


陽菜が言った。

「私、ヒマワリの花、好きなんだ。」


花屋の新人さん、かわいかったな。

また行こうかしら。


ふふ。


「良かったわ。気に入ってくれて。」

「アレンジメント教室始めたばかりだから、

 上手にいけられてるか心配だったの。」


「美咲は何でも上手だよ。」

直哉が言った。

「料理もできるし、花も綺麗に飾るし。」


陽菜がくすっと笑う。

「お兄ちゃん、自慢?」


「当たり前だろ。」

直哉はそう言って、当たり前みたいに私の肩に手を置いた。


ヒマワリが、窓の光を受けて揺れていた。


「でも、お兄ちゃん。

 自慢しててもいいけど、

 美咲はこんなに美人で何でもできるから、

 本当に大事にしてないと取られちゃうよ。」


……取られる、か。


「困るな。」


「だから、私がちゃんと見てないと駄目なの。」

「美咲は優しいから。」


「そうだな。美咲は、かわいいし、優しいからな。

 目が離せないよ。」


二人が言った。


私は少し笑った。

「そんなことないわ。」


テーブルの上のヒマワリが、光の中で揺れている。

明るい花。

太陽みたいな色。


「最近お兄ちゃん、忙しいの?」

「ああ。ちょっとな。」


「大変だね。」


「私も仕事が忙しいんだよね。」

そう言って、陽菜は直哉を見た。


「直哉だけだと思ってたら、陽菜も忙しいんだ。」


「そうなの。会社で色々あってね。」

陽菜は少し肩をすくめて笑った。


「でも、お兄ちゃん、今度家に来てくれる?」

「電球交換してほしいの。」


「自分で交換しろよ。」


「できないよ。」


「わかったよ。」

直哉はため息まじりに言った。


陽菜は嬉しそうに笑う。

「そういえば、このヒマワリどこで買ったの?

 私も欲しい。」


「昨日、近くの花屋さんで買ったのよ。

 新人さんが入ったの。」

「かわいい男の子だったわ。」


「え? かわいい男の子? いいね。」

陽菜がすぐに身を乗り出した。


「どんな子?」


「まだ慣れてないみたいでね。

 ちょっと緊張してた。」


「へぇ。」

陽菜は楽しそうに笑った。

「美咲に緊張するなんて、わかりやすすぎる。」


「そんなことないわよ。」

私は軽く笑った。


「美咲、今度一緒に行こうよ。」


「いいわよ。」


直哉が言った。

「それよりコーヒーのおかわり欲しいな。」


「はいはい。」

私はカップを持ってキッチンに立った。


コーヒーを注ぐ音が、静かな部屋に広がる。


テーブルの上では、ヒマワリが光を受けて揺れていた。

「花屋、近いの?」

陽菜が聞いた。


「ええ。歩いてすぐよ。」


「じゃあ今度行こう。」


「うん。」


私はカップを持って戻った。

ふと、昨日のことを思い出す。


花を包んでいた、少し震える手。


……また行こうかしら。


ヒマワリの花びらが、やさしく揺れていた。


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