第14話 ヒマワリの違和感
次の日。
会社から帰って、俺は――
新婚生活を楽しむことにした。
その時だった。
スマホが震えた。
陽菜から、美咲に電話。
「美咲、週末遊びに行くね」
「お兄ちゃんにも伝えておいて」
「週末の予定、直哉にも聞くね」
「お願いね」
少しだけ、間があく。
「お兄ちゃんにも――」
「美咲を独占しないように、言っておかないと」
「私の美咲なんだから」
陽菜が、くすっと笑った。
「そういえば、美咲……お兄ちゃんとどう?」
「普通だよ」
「陽菜が言ってくれたからかもしれないけど、少し優しいかな」
「それくらい」
「うーん……」
少しだけ、間があく。
「お茶、淹れてくれたくらい?」
「お兄ちゃんの優しさ、それだけ?」
「まあ」
「……駄目ね」
「やっぱり、私がいないと」
「ふふ」
「じゃあ、また連絡するね」
そう言って、陽菜の電話は切れた。
「何だったの?」
「週末、遊びに行くって言ってたよ」
「え?俺とのデートは?」
「メッセージ入れてやる」
直哉
『週末は用事がある。来るな』
『たまには一人で遊んでろ』
陽菜
『嘘なの、わかってるわよ』
『私に怒られると思って、来させないようにしてるんでしょう?』
直哉
『違う』
『デートさせろ』
陽菜
『私が美咲とデートするのよ』
『無理』
「くそっ、あいつ……」
「美咲……どう思う?」
「俺が美咲とデートしたいのに」
「私も、直哉とデートしたい」
直哉が、にやっとした。
「やっぱり、俺とデートしたいよな」
直哉
『美咲も、俺とデートしたいって』
陽菜
『私たちの愛は、崇高なのよ』
『だから却下』
『週末は行くわ』
『決定事項で』
「美咲……負けた……慰めてくれ」
「はいはい」
美咲は、俺の頭を撫でた。
「次は、絶対にデートしような」
「うん」
少しだけ、美咲が嬉しそうにした。
「土曜日は……三人だ」
「仕方ないわね」
「まあ、いつものことだから」
そう言って、美咲が少し笑った。
でも――
俺は、美咲との二人きりを諦めるつもりはなかった。
これまで、ずっと失敗してきたのだから。
「そういえば、今日ね――」
「花屋の相沢くんと、たまたまスーパーで会ったの」
「びっくりしちゃった」
「それで、花屋に行くときは主人と一緒に行きますって、言っておいたわ」
「変なところに出没するやつだな」
「近くに住んでるのか……」
「まあ、いいけど……たまたまだしな」
「顔、引きつってるよ」
美咲が、少し笑った。
「仕方ないだろ」
「嫉妬してくれて、少し嬉しいかも」
「それならいいけど」
視線を逸らした。
「何で美咲は、モテちゃうんだよ」
ただ――
俺は、気になっていた。
花屋も。
陽菜も。
あの二人は――
一体、何なんだ……。
その頃、湊は――
部屋で考えていた。
「ああ……今日、美咲さんとスーパーで会っちゃった」
「運命だよな」
ちょっと遠かったけど、行ってよかったな。
あの辺だと、あそこしかない。
……そうだと思ったんだよ。
店長には、
「平和に暮らしてる人を壊しちゃいけない」って言われたけど。
本当に――
美咲さん、幸せなのかな。
旦那さんだけが好きなだけで、
美咲さんは――
俺のこと、好きだったりして。
……なんてな。
メッセージがきた。
『なあ、美咲さんと会えたか?』
『会えたよ。ありがとう』
『何となくだけど……これくらいかなって思ったんだよな』
『でも、不倫だろう?大丈夫なのか?』
『本当に、美咲さんって旦那さんとうまくいってないんだよな?』
『違うんだったら――やめとけよ』
『……でも、別れてから付き合えよ』
「運命すぎるんだよな……」
「あの感じ、やっぱり俺に向いてたし」
「美咲さん――大好きだ」
その頃、陽菜は――
何となく……あの相沢湊が気になるのよね。
お兄ちゃん、ちゃんと制圧したかしら。
ちょっと厄介な気がする。
この前も、花屋の前を通ったときに見たけど――
……あれは、絶対に美咲にハマってる。
まあ、いいけど。
美咲は、私から離れないし。
それに――なんだかんだ言って、お兄ちゃんも離れない。
だって、妹だし。
……こういうとき、妹って便利よね。
ふふ。
あの二人は、別れないから大丈夫。
別れさせないし。
だいたい、お兄ちゃんも美咲にハマってる。
いい感じにね。
私のことも、好きだけど。
私のことが好きだから――
美咲じゃないと駄目なの。
そうなるようにしてきたし。
ふふ。
私が、ずっと創ってきたんだから。
美咲。
かわいいわ。
……最高ね。
私が、守ってあげるからね。
その頃――美咲たちは。
「なあ、美咲。」
「何?」
「楽しみだなって思ってさ……」
「旅行も、二人で行きたいし」
「新婚旅行も――あいつ、ついてきただろ?」
「だからさ」
「今度の旅行は、新婚旅行も兼ねて……二人で行こう」
「まずは――デートからだけどな」
「今度こそ――邪魔されないようにしたい」
「なあ、どこ行きたい?」
「直哉と一緒だったら、どこでもいいよ」
「……」
俺は、少し赤くなった。
「でも、そうだな……近場だったら温泉行きたいな」
「海もいいし、海外も行きたいな」
「いいねー」
――俺と一緒だったら、どこでもいい。
……かわいいな。
やっぱり、邪魔はさせない。
ただ――
俺は、何で陽菜を好きだったのか。
……それが、わからない。
最初は、そうだったはずなのに。
何かが――違う。
それに――
俺は、陽菜に“美咲を好きにさせられた”んじゃないか。
……そんな気さえする。
でも――
俺は、美咲のことが好きだ。
本当に、そう思ってる。
……思わされてるのか?
いや。
この気持ちは、本物だ。
洗脳とか――そんなわけない。
……でも。
俺は――
抜けた気がする。
蓋をされていた俺の気持ちが、
出てきた――気がした。




