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義妹は、私だけを見ていた。―妹に愛されすぎた女の話―  作者: 桐原悠真


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第1話 ヒマワリの花

家に飾るための花を買いに来た。


明日は陽菜が来る。

だから、そのための花。


いつものアレンジメント教室の花が枯れてしまった。


普通なら、ポイントになる花はあまり枯れない。

私も水揚げには気をつけている。


なのに、どうしてだろう。


――普通、逆でしょう。


でも、ポイントが変われば、さらに美しくなる。


周りの花たちが、さらに女王を引き立ててくれる。


「いいわ。」


店に入った。


「こんにちは。」


「こんにちは、いらっしゃいませ。」


……新人さんだ。


ふぅん。

かわいい男の子。


彼は私を見て、少し顔を赤くした。


「ん?」


まあ、いいか。


店の花を眺める。


視線を感じた。

声をかけていいのか迷っているのかな。


「すみません。」


彼はびくっとした。


「あの、アレンジメントで活けるんですけど、

 ポイントになる花が欲しくて。どれがいいでしょう?」


「ヒ、ヒマワリとか…どうでしょうか。」


必死そうだ。

慣れていない感じが伝わる。


「家に飾るなら、ピンクのチューリップとかもいいかもしれません。」


「アレンジメントされるんですね。」


「まだ習いたてなんです。」


少し沈黙。


彼は意を決したように言った。


「あの…俺、相沢湊って言います。」


「よかったら、お名前…」


「え?」


「一ノ瀬美咲です。」


湊は少し固まった。


「……美咲さん。綺麗な名前ですね。」


彼は声が少し震えていた。


必死に説明をしている。

その間も、花を包む手が落ち着かない。


「うわっ、すみません。」


「慣れてなくて。」


少し頬を赤らめている。


彼の手が花を包む。


大きな手だった。

指も長い。


でも、少し震えている。


……本当にわかりやすい。


「綺麗だな。」


彼がぽつりと呟いた。


花を見て言ったのか、

それとも――。


「綺麗ですね。私も好きなんです。」


私は微笑んだ。


「花っていいですよね。

 綺麗で。可憐。

 癒されますね。」


「そうですね。」


彼が少し照れたように笑った。


「こちらになります。」


彼が花を差し出した。


手が少し触れそうになって、

彼は慌てて手を引いた。


目も、声も、手も。


全部。


「すみません。」


「大丈夫ですよ。」


視線が合う。


そして、すぐに逸らす。


ふふ。

かわいい。


久しぶりに、こういうの楽しいな。


直哉と結婚してから、あまり外に出なくなった。

いつも陽菜がいるから。


一人で外に出るのは、


フラワーアレンジメント教室か、

食材を買いに行くときくらい。


基本的には、家にいる。


だから、こうして一人で出かけるのは

少し久しぶりだ。


ただ。


私を見る人は、だいたい同じ顔をする。


どこに行っても。


でも。


さっきの子は、少し必死だった。


私は花を持って店を出た。


……かわいい子。


外の空気が少し明るい。


……今日は、少し楽しかった。


明日は、陽菜が来る。


陽菜は、いつも楽しそうに花を見る。


私が飾った花を見て、

嬉しそうに笑う。


「美咲、やっぱり綺麗だね。」


そう言ってくれる。


私はその顔を見るのが、嫌いじゃない。


手の中のヒマワリを見る。


明るい花。

太陽みたいな色。


陽菜は、きっとこういう花が好きだろう。


手の中のヒマワリが、明るく揺れていた。

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