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獅子舞ひ、その他

〈公園やはだらの根雪横目で見 涙次〉



【ⅰ】


舊魔界が「ニュー・タイプ【魔】」の時代に世代交代したやうに、カンテラ一味にも新しい勢力が生まれつゝあつた。それは云ふ迄もなく、年末年始に一味の正式メンバーとなつた、ルシフェル、安保さんの事を指す。



【ⅱ】


まづは安保さんだが、一番彼の存在を頼もしく思つたのは、牧野であつたらう。今まで「開發センター」の孤塁を守つて來た自分に、直屬の上司が出來る- 然もそれが安保さんだなんて願つてもみない事だ、と彼は思つた。江戸つ子で氣つ風の良い安保さんなら、部下の俺を親身になつて叱つてくれ、また褒めてくれるだらう。さう云ふ期待を牧野は胸に抱いてゐた。



【ⅲ】


「開發センター長」としての安保さんの初仕事は、* カンテラ外殻の火屋の「煤拂ひ」だつた。それが單なる「煤拂ひ」に終はらぬ事は、容易に想像が付くだらう。安保さん、カンテラ外殻をいぢり、同じ燃費で從來の二倍の火力が出るやう、改造したのだ。カンテラは外殻に籠もる時、焰に包まれて「安らかな」(彼は火焰のスピリットである)ひと時を過ごす。その快樂が二倍になるのだ。カンテラにとつてこんなに心彈む事はない。因みに、骨董品である(嘗て烏賊釣り漁船で使はれてゐた)カンテラ外殻を、だう仕込めば上記の改造が出來るのかは、安保さんの他に誰も知る者がなかつた。彼は、元・下町精密機器部品工場の親爺と云ふに留まらぬ、『サンダーバード』のブレインズ博士のやうな、オールマイティな科學者としての側面を持ち、まさに現代に蘇つた錬金術士だと云へた。



* 前シリーズ第129話參照。



※※※※


〈失せ物のキャッチ出て來るピアスなり無神論者が十字切る時 平手みき〉



【ⅳ】


次にルシフェル。彼には、一味のアドヴァイザリー・スタッフとして、まづ適役として合格點をカンテラは付けてゐた。尾崎一蝶齋のやうな、いゝからかんな「助言者」ではないのである。ルシフェルが敵・魔界の総帥であつた頃には、想像も付かなかつた程の有益な情報が、彼のされかうべの口から迸つた。單にそれが勘に過ぎぬとしても、魔界統治一千年になんなんとする彼の來歴から來る蘊奥は、眞實カンテラ一味のコアに直かに語り掛けて來る。前回の、某政府與党大物議員の惡企みを裏で操つてゐたのが、「ニュー・タイプ【魔】」である事は、彼にはお見通しなのだつた。彼には例へ「ニュー・タイプ【魔】」の世になつても變はらぬ、【魔】逹の「癖」が、手に取るやうに分かつた。



【ⅴ】


で、まことに以てルシフェルの云ふ通りなのだが、「ニュー・タイプ【魔】」逹は、「オールド・ウェイヴ【魔】」こゝに極まれり、と云ふ男を蘇生させやうとしてゐた。それは* 出石幕、「親ルシフェル派」の幕引きを受け持つた「敗軍の將」- 世が世ならカンテラの好敵手となるべき存在であつたらう、立派な死に様を見せた【魔】、である。「ニュー・タイプ【魔】」はものに拘らず、有用な者はじやんじやん蘇生させる。出石が今後如何にカンテラ一味に絡んで來るかは、次回よりのお樂しみとさせて頂く。



* 當該シリーズ第3話參照。



【ⅵ】


話は180度變はる。テオの發案に依り、「カンテラ獅子舞ひ」なる催しをやらうと云ふ事になつた。カンテラが剣を拔き、行列の先頭を行く。じろさんは白虎を連れて、あと、テオ・ぴゆうちやんが續く。その面々で街を練り歩くのだ。獅子舞ひ、或ひは秋田は男鹿半島の「なまはげ」の如く、道々出遭ふ子供逹は、白虎を怖がり泣き喚く。だが、カンテラが剣を突き付けると、ぴたりと靜かになる- これで一年の無病息災が約束される。獅子はなくとも、「獅子舞ひ」たる處以である。カンテラ「こんな事やつてゝいゝのかなあ」と、折からの「ニュー・タイプ【魔】」の攻勢が氣になつたが、テオ「いゝのいゝの、この『行事』を去り行く正月の風物詩にして見せませうよ。時には野方の皆さんに愛される存在、である一味にならなきやねー」。白虎「があお」(僕、ソンナニ怖イカナア)-ぴゆうちやん(イゝノイゝノ、泣ク子ガイナイトオ話ニナラナイデシヨ)・笑。と云ふカンテラ一味の近隣住民逹への「サーヴィス」であつた。



【ⅶ】


對・出石。ルシフェルは水晶玉を見て、何やら綿密な計算をしてゐるやうだつた。本來「ニュー・タイプ【魔】」にこき使はれるやうな男ではないが、惜しむらくは時代がそれを許さないのである。ルシフェルの次なる助言や如何に、と云つたところで、今回はお開きとしやう。ぢやまた。



※※※※


〈電車はもう眞の年明け混雜す 涙次〉



PS: 本文中、尾崎一蝶齋の名がちらと出たが、「飼ひ殺し」になつてゐる尾崎の處遇を、カンテラは眞剣に考へてゐた。じろさんに依れば、「道化役が一人ゐても、いゝんぢやないかなあ」と云ふ事だつたが。それは、取りも直さず尾崎の働きが、道化としてしか機能してゐない、と云ふ証左であつた...。


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