防衛準備とゴーレム軍団
騎士たちが去った後の村は、死んだような静寂と、重い絶望に支配されていた。
村の広場に集まった村人たちは誰もが俯き、「我々に騎士様と戦えるわけがない」「もう終わりだ……」と、諦めの言葉を絞り出すだけだった。領主の報復という現実は、彼らから全ての希望を奪い去っていた。
その、息も詰まるような重苦しい空気の真ん中で、俺は静かに立ち上がった。
「俺に考えがある」
俺の声に、村人たちが虚ろな目を向ける。
「この村は、俺が守る。誰も死なせはしない」
俺は、自らのスキル【物質錬成】を最大限に活用した、前代未聞の防衛計画を明かした。村にある石や土、そしてありったけの鉄くずを素材とし、この村を守るための「ゴーレムの軍隊」を錬成する、と。
にわかには信じがたい計画に、村人たちはざわめく。だが、エルナが「皆さん、カイさんを信じましょう! 私たちはもう、ただ守られるだけじゃない!」と叫ぶと、村人たちの目に、か細くも確かな光が宿り始めた。彼らは、最後の望みを俺に託すことを決めてくれた。
その夜、村は一つの生命体となった。
子供から老人まで、村人総出で、カイの指示のもと、ゴーレムの素材となる石や鉄くずを夜を徹して集めていく。エルナは物資の管理と村人たちのまとめ役として、的確な指示を飛ばしながら、俺の作業を完璧に支えてくれた。
そして俺は、月明かりの下、ひたすらに錬成を続けた。
手の甲に浮かぶ魔法陣から放たれる青い光が、夜の闇を何度も照らし出す。ただのガラクタが、俺の意思を体現する兵士へと生まれ変わっていく。俺の隣では、コアが新しく生まれる仲間たちを見て、興奮したようにプルプルと震え続けていた。
東の空が白み始め、朝日が地平線を照らし出す頃――村の門の前には、信じられない光景が広がっていた。
そこには、数十体にも及ぶゴーレムの軍団が、朝日を浴びて整然と列をなしていたのだ。
最前列には、巨大な盾を構え、鉄壁の守りを誇る壁役のゴーレム。中列には、背中に巨大な投石機を搭載し、遠距離攻撃を担う砲兵ゴーレム。そして両翼には、俊敏に動き回り、敵を撹乱する偵察用の小型ゴーレムが控えている。
コアは、まるで全軍を率いる司令官のように、一番巨大なゴーレムの肩にちょこんと乗り、朝日を背に受けて胸を張っていた。
その光景を目の当たりにした村人たちから、どよめきが、そしてやがて割れんばかりの歓声が上がる。彼らの心にあった絶望は、畏敬と、勝利への燃えるような希望へと完全に変わっていた。
俺は静かに朝日を見つめる。
さあ、いつでも来い。俺の大切な居場所は、俺の仲間たちは、俺が必ず守り抜く。




