ざまぁの終わりと新たな噂
私、リディア・フォン・ヴァインベルグは、自らの判断が完璧だったと証明するはずだった。
新しく雇った“一流”の錬金術師が作ったという“至高の逸品”を手に、私たち「暁の剣閃」は、以前の雪辱を果たすべく、再び高難度ダンジョンへと挑んでいた。
しかし、その自信は、戦闘が始まった瞬間に、木っ端微塵に砕け散った。
「なっ……!?」
ゴードンの大盾が、オーガの一撃を受けただけで、まるでガラス細工のように粉々になる。私の魔剣も、敵の鎧に弾かれた衝撃で、あっさりと真っぷたつに折れた。
「ポーションが効かない! ただの水じゃないか!」
仲間たちの悲鳴が響き渡る。見かけ倒しの粗悪品。私たちは、詐欺師に騙されたのだ。パーティーは、瞬く間に絶体絶命の窮地に陥った。
「い、一流の皆様! あとは任せましたぞ!」
その時、あの胡散臭い錬金術師が、誰よりも早く戦場から逃げ出していくのが見えた。
「あの裏切り者!」
罵声も虚しく、敵の猛攻は止まらない。私たちは死に物狂いで剣を振るい、命からがら、ほうほうの体でダンジョンから脱出した。
地上に戻った私たちを待っていたのは、安堵ではなく、仲間からの冷たい視線だった。
「……全部、お前のせいだ」
ゴードンが、血の滲む拳を握りしめ、私を睨みつけていた。
「お前のくだらないプライドが、カイを追放し、詐欺師を雇い、俺たちを殺しかけた! もう、お前にはついていけない」
その言葉を皮切りに、仲間たちは一人、また一人と、無言で私の元を去っていった。
引き留める言葉は、何も出てこなかった。最強と謳われたSランクパーティー「暁の剣閃」は、その日、あまりにもあっけなく崩壊した。
全てを失った私は、王都のギルドの片隅で、一人、絶望にくれていた。
名声も、仲間も、信じていた自分の正しささえも、今はもうない。
そんな私の耳に、他の冒険者たちが交わす、馬鹿げた噂話が飛び込んできた。
「おい、聞いたか? 辺境の地に、錬金術師が作った新しい国ができたらしいぜ」
「ああ、知ってる。なんでも聖女様がいて、悪徳領主の軍隊をゴーレムの軍勢で一夜にして打ち破ったんだと」
錬金術師が、国を? ゴーレムの軍勢?
馬鹿馬鹿しい。そんな御伽噺があるものか。
私は、そのくだらない噂を鼻で笑い、呷った酒の苦さに、ただ顔を歪めた。
自分が追放した、あの役立たずの錬金術師が起こした伝説の始まりが、すぐそこまで迫っていることに、まだ気づくこともできずに。




