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『天使と悪魔の育成学校』

 私はキズや病気を癒す天使に憧れて、ある学園に入学した。

 天悪(てんあく)育成学校。名の通り、ここには天使になりたい子、悪魔になりたい子が通う学校である。

 この中で、天使になれる子は五パーセント。悪魔、二十五パーセント。どちらにもなれない子は一般で七十パーセント。天使は倍率が高く厳しいのだ。

「ヒマリ、お前もこの学校に来たんだな。」

 話しかけてきたのは幼馴染のライアナ。彼女も天使を目指している。

「お前のその黒髪、悪魔の素質の方があるだろう。僕はこんなに白く天使の素質がある。今まで黒髪で天使になれたやつはいない、さっさと天使を諦めたらどうだ」

 自分の髪の毛を見せつけるように手でなびかせる。

「髪だけで決めつけないで! 毛先は白いから大丈夫」

「そういってられるのも今のうちだけだ」

 ライアナはああいうが私は病を治し、人々を助けるんだ。それに、髪の色で決めつけられるのはおかしい。天使に憧れても髪色でみんなに馬鹿にされるこんな世の中、変えてやる。

 授業が始まり、一般的な教科のほかに選択授業で天使について学ぶ。学園に来る前から勉強していたから、なんなくこなしていく。

 一方で、ライアナは一般授業から追いつけていなかった。

「ライアナ、大丈夫? 勉強教えようか?」

「うるさい! 話しかけてくんな」

 私をこれでもかと睨みつけて、ふんっと顔をそむける。

 昔はそこまで仲が悪いわけではなかったのに、この学校に入学するといったときから変わってしまった。

 それから、私は学級委員としてクラスをまとめ。生徒会では書記をしていた。

 そんなある日、担任の先生に呼ばれ空き教室に行くと、笑顔で報告された。

「ヒマリ、君は一年にして天使候補に選ばれたぞ。その髪色や学年を無視しての快挙だ」

「あ、ありがとうございます。」

 嬉しさでぼやける視界の中、止まらない涙を拭き、感謝を何度も繰り返した。

「ありがとうございますっ。ちゃんと天使になれるようにこれからも精進します」

「お前ならなれる。その調子でこれからも頼むぞ」

「はい‼」

 天使候補は一学年に一人だけ選ばれ、よほどのことがない限りは天使になれると決まったものだ。嬉しさを胸の内に秘め、にやける顔に力を入れていた時。誰かに声をかけられた。

「おい、お前。ふざけんなよ」

「えっ、なに? ライアナ⁉」

「なんでお前なんかが、僕の方が絶対に天使になるべき存在なのに、畏怖べき髪色のくせにクラスのみんなに好かれやがって」

「どうしたの、落ち着いて」

「落ち着いてられるか‼」

 その瞬間、視界が上下に揺れ息が詰まった。

 どうやら、胸ぐらを掴まれているらしい。唇をかみしめ私を睨みつけるライアナの目からは涙が次々とこぼれていく。

「なんでお前なんだよ。僕の方がその力を必要としているのに……。お前には悪魔の素質があるんだからそっちに行けよ。僕の邪魔をするな!」

「ど、どういうこと? 私はみんなを守るために天使になりたいんだよ。ライアナが天使になりたい理由って何?天使の力で何をしようとしてるの」

「ぼ、僕はっ、お母さんを、病を治してっ、助けた、いだけなんだよ」

「えっ?」

 涙で、声が途切れ途切れになるのを黙って聞いていたが衝撃で声が出てしまった。

 私は、ライアナの親はお父さんしか知らない。あんなに幸せそうだったのに、お母さんに何があったのか知らなかった。

 それから、ゆっくりと紡がれる言葉に私は絶句した。


♦♦♦


 僕は周りの言う幸せな家族とは程遠かった。

 家にいればお父さんにサンドバックのように殴られて、お母さんは自分が標的にならないように注意もしてくれない。

 ご飯は床に置かれ、服は着せてもらえない。それなのに外面はよく、誰も僕を助けてくれない。

外に行くときはきちんとした服を着せられて監視のように公園のベンチで僕を見張っている。

 何も言うことができない状況に、限界を迎えたんだと思う。

 いつしか、幼馴染に八つ当たりをしていた。暴力は怖くてできなかったが、自分よりも相手の価値を下げることで自分が一番すごいと思うことで満たされていた。

 それから数年後、お父さんはほかに女を作り出ていった。お母さんは、流行り病で寝たきりに、治すには薬が必要。でも、お金がなく買えない。

 天使は都会に集まっていて田舎までは人手が足りず、治療をしてもらえない。

 そこで、僕は自分が天使になりお母さんを治そうと思った。そのために朝から晩まで働きお金を稼いで天悪育成学校に入学を果たしたが、義務教育を受けておらず授業に追いつけなかった。

 必死で食らいついているときにヒマリの天使候補の話を聞いてしまった。

 これでほぼ、天使になれる可能性がゼロに近くなった。

 そのことが悔しくて辛くてやはり、ヒマリに当たってしまった。

 幼馴染の中で唯一、僕から離れなかった。大切な友達なのに、自分のこんな性格が嫌で涙は止まらず。 

 ヒマリの胸ぐらから手を放し、力なく膝から崩れ落ちた。

 正面に立ったままのヒマリは、自分と同じくらい涙を流しながら僕のことを優しく抱きしめてくれた。

「今まで辛かったのに気づいてあげられなくてごめんね。勉強は私がしっかり教えるから一緒に天使になろう」

「うん!」


♦♦♦


 それから3年が経ち、私たちは卒業する。

 この学年で天使になれたのは二人。

「天使の発表をします。3年ヒマリ。そして、ライアナ。これから二人には天使の力を使い人々を助け、癒しを捧げること。以上」

「はい」

「はい‼」

 天使の証として白い装束と金色の丸いわっかのネックレスをつけ、その足でライアナの実家に向かう。

 部屋で寝ていたお母さんはライアナが学校代と一緒に買った3年分の薬で何とか生きていた。

 ライアナはさっそくお母さんに天使の治癒の力を使うと、太陽のような温かい白い光に包まれていく。

 お母さんはみるみる顔色がよくなり、呼吸も正常になった。

「よし、治った」

 ほっと一息つくと、お母さんの瞼がピクピク動きゆっくりと開かれる。

「あ、あれ、私は死んでしまったの?」

 顔をペタペタ触り、やがてこちらに顔を向けると目を大きく見開き、口元に手を当てた。

「ライアナ?」

「そうだよ。お母さん、まだ痛いところとかない?」

「だ、大丈夫よ。それよりその服装って」

「うん。僕天使になったんだ。」

「そうだったの。あなたが私の病気を治してくれたのね。」

 お母さんは目から一筋の涙を流した。ライアナはそんなお母さんの手を優しく握りしめて、涙をこぼしていた。よかった、そう思うけど腑に落ちないことがある。

「ライアナのお母さん。まずは病が治ってよかったです。でも、ライアナに対してあまりにひどいことをしてきた。その自覚はありますか?」

「あ、あります。ライアナは私の代わりに夫に暴力を振るわれ、私が病に倒れた時には何個もバイトを掛け持ちして薬を買ってきてくれて、天使になりその病までも治してくれた。感謝してもしきれない」

「こんなに優しい子なのに、この環境で変わってしまった。助けてほしくてもあなたは無視した。だけど、あなたはライアナに助けられたんだ」

「っ、ごめっ、なさい。ライアナごめんなさい」

 ライアナが繋いでいた手をさらに強く握り返す。その光景を見てもやはり納得できない。

 私もみんなを救いたいと思っていたけど、治したくないような性格が悪いやつもいじめを嬉々としてやっている人たちも助けないといけない。

 悪魔としての素質で、悪いことを考えてしまう。

 そんな私に気づいたのか、ライアナが私に抱き着いた。

「そんな顔をしてたら悪魔になっちゃうぞ。せっかく二人で天使になれたんだ。明るくいこうぜ!」

「うん、そうだね」

 それか私たちは、家を後にしてその村の人たちのけがや病気を治した。

 都会に派遣要請をされて、たくさんの病を治したあと思った。

「ライアナ、私と一緒に田舎で病院を開かない?」

「随分と急だな。まぁ、いいけど。僕はもう何があってもヒマリについていくと決めているからな」

「じゃあ、話が早いね。早速、田舎で病院として開ける建物を探すわよ」

「えっ、今から? 午後の診察が残ってるんだけど」

「関係ないわ。今決めたんだから今行くの!」

「はいはい」

 午後の患者はほかの天使に頼み、田舎の建物を調べた。

「ここがいいんじゃない?」

「ああ、僕は何でも」

「ちゃんと見て」

「はいはい」

 全方向山に囲まれる中、自然豊かなこの場所に一軒家くらいのサイズ感で立地のいい場所に決まり、病院を開いた。

 治療に来る患者はお年寄りの方がメインで、来られない人のために訪問診察もしている。

 これほどにやりがいのある仕事につけて良かった。たまに、髪の影響でネガティブになることもあるが、その時はライアナが支えてくれる。天悪育成学校でライアナの家庭事情が知れて一緒に乗り越え、また一層仲が深まったと思う。


 これからも二人で、天使の力を使い、けがや病気に苦しんでいる人を一人でも多く治していきたい。


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