片思い中の幼馴染の好きなタイプが「経験人数100人以上」らしいので、100人斬りしようと思う
初投稿です。
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例えば、君にはどうしようもなく好きな人がいて、その好きな人のタイプが「経験人数100人以上」だという話を偶然聞いてしまったとしよう。君ならどうする?
「経験人数100人とか無理だろ……」
そう思う人が多いのではないだろうか?
実際、俺も「絶対無理だろ……」と、思った。
では、諦めるか?
その選択肢もあるだろう。だって「経験人数100人」など大半の人が無理だろうから。イケメンでも「経験人数100人」は、なかなかいない事だろう。いや、風俗などに行けばイケメンではなくても「経験人数100人」も夢ではないだろうけども。
兎に角、普通ではまず無理だ。
だが、その人の事が"どうしようもなく好き"なんだ。
では、どうする?
さっき話した様に諦めるか?
否、断じて否だ。
では、君にもう一度問おう。
例えば、君にはどうしようもなく好きな人がいて、その好きな人のタイプが「経験人数100人以上」だという話を偶然聞いてしまったとしよう。君ならどうする?
答え。
「好きな人のタイプになるために、100人斬りをする」
※
俺の名前は、東山 晴人。そして俺には長年片思いしている好きな女の子がいる。中学生の時からの片思いだ。その女の子の名前は、高峯 凛。
凛とは家がお隣同士。幼稚園の頃からの知り合いで、小、中、高、大、と、ずっと同じ学校に通っている、所謂幼馴染というやつである。
そんな幼馴染の事が俺は好きだ。それはもうどうしようもない程に好きだ。
凛が俺のことを異性として見ているかは分からないが、少なくとも俺のことを好意的に思ってくれているのは確かだろう。
一緒に帰れる時はいつも一緒に帰っているし、一緒に遊びに行く事だってある。嫌われているなら、まず間違いなくそんな事はしないだろう。
さて、そんな幼馴染の凛だが、はっきり言って美人だ。それはもう、滅茶苦茶美人だ。よく告白もされている。
ロングな黒髪、切れ長な目、鼻筋が通っている、口はふっくらとしている、そして傷ひとつない綺麗な肌。完璧な黄金比だ。
凛の見た目を一言で表すなら「清楚美人」だろう。
そして、凛は見た目だけではない。
中身も完璧だ。
困っている人がいれば手を差し伸べ、誰とでも仲良くする。また、相談にだって親身になって乗ってくれる。学力や運動だって高水準でこなせる。
うん。完璧。超完璧。マジ女神。マジで好き。
さて、そんな女神様に俺は告白しようと決意した。
中学生の時から拗らせているこの恋心を、凛にぶつけようと思う。今までは、告白してフラれたら今までの関係が壊れてしまうのではと思い日和っていたのだが、遂に勇気を振り絞ろうと決意した。
何故告白を決意したのかというと、どんどん綺麗になっていく凛と、いつかは一緒に居られなくなるのではないかと思ったからだ。
正直、勝算はある……とは思う。
凛は、皆んなと仲がいい。勿論そこに男子だって含まれる。だが、男子とは必要以上には仲良くはしていない。凛が男子と遊びに行く時は、2人きりでは行かない。そこには複数の男女が必ずいる。俺の知っている限りでは、だが。
逆に、俺とは2人っきりで遊びに行く事だってある。凛から遊びに誘ってくれる事だってある。俺とは家族みたいなものだからいちいち意識していないという可能性は捨てきれないが。
その事から、告白が成功する可能性は五分五分といったところだろう。
どうなるかは分からないが、告白が成功しようがしまいが、告白しない事にはそれ以前の問題だ。
だから俺は勇気を振り絞り、明日、告白をする。どうか両思いであります様にと、願いながら。
※
翌日、大学の講義が終わり、教室を出て、俺は告白するために凛を待っていた。すると、そこに凛と凛の友人の……中園 真彩さんと会話をしながら歩いて来るのを発見した。
「そう言えば凛、藤田先輩の告白断ったってほんと!?」
「うん、断ったよ?」
「勿体無い……」
どうやら、凛はまた男子に告白されたらしい。
凛は美人だし、告白されるのは今に始まった事ではない。
だが、凛が告白されたという話を聞くたびに、凛が告白を受け入れたのではないかといつもドキドキしていた。今回もそうだ。だが、今回もどうやら男子からの告白を断ったらしい。
それを聞いて俺はホッとした。
それにしても藤田先輩の告白も断ったのか。勿論嬉しい。だって俺は凛の事が好きなのだがら。
だが、藤田先輩でも無理だとは……。藤田先輩はイケメンだし、実家はお金持ちだし、成績も優秀と聞くし、俺が勝っている所、皆無では????
その藤田先輩でも無理と来た。やはり俺では無理かもしれない。
「因みに何て理由つけて断ったの?」
いやいや、何日和ってんだ東山 晴人!!!!
昨日告白すると決意したじゃないか!!!!!
よし、中園さんとの会話が終わったら凛を呼び止めよう。
「経験人数100人以上の人じゃないと付き合えないって言って断った」
そうかそうか………凛の好きなタイプは「経験人数100人以上」な………の……………ん?????
俺の脳は思考を放棄した。
「凛……、いつの間にそんな女になっちゃったの……?」
「どのみち、私は彼とは付き合わないし」
ッスゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……。
え?????凛の好きなタイプって「経験人数100人以上」の男子なの!?!?!?!?
遅れて脳が情報を処理し始める。
俺、「経験人数100人」どころか童○なのだが?????
「いや、絶対無理なのだが?」
俺はショックの余りその場に項垂れる。
勝算五分五分とか言ってすみませんでした。勝算五分五分どころかゼロでした。
「そうなの?」
「うん、そうなの」
そう言いながら、凛は友達と歩いて行った。
「ふ、ふふふ……」
俺のこの笑顔の瞬間を誰かに見られていたら、不気味がられていた事だろう。
正直無理だ……。だが、「無理だ」の一言で片付けられないほどに、俺は凛の事がどうしようもないほどに好きなのだ。
凛の事を諦め切れない。
告白する前からフラれた形にはなったが、そのお陰で凛の好きなタイプが聞けた。
つまり、だ。今回の告白の勝算は五分五分だったが(実際はゼロだが)、凛の好きなタイプが聞けたお陰で、次に告白する際の勝算が限りなく100%に近づいたという事だ。
やる事は決まった。
片思い中の幼馴染の好きなタイプが「経験人数100人以上」らしいので、100人斬りしようと思う。
※
さて、片思い中の幼馴染の好きなタイプが「経験人数100人以上」らしいので、100人斬りしようと思い至った訳なのだが、まず童○を捨てない事には始まらない。
童○を捨てるとすると、やはり合コンか?
合コンでお酒で酔ったところをお持ち帰りして、晴れて童○卒業。うん、いいかもしれない。勿論、嫌がる女性をお持ち帰りして無理やり……なんてクズがする様な事はしない。あくまでも同意の上でのS○Xだ。じゃなきゃ犯罪だしな。
さて、そうと決まれば隆臣に合コンをセッティングしてもらうか。凛の事が好きだったから今までの合コンは全て蹴っていたが、凛の好きなタイプが「経験人数100人以上」となれば話が変わってくる。
一刻も早く童○を捨ててそのまま突っ走り「100人斬り」をしなくてはいけない。のんびりしていたら、大学卒業して会う機会がほとんどなくなってしまう。
それどころか、俺が「100人斬り」する前に「100人斬り」した男が凛に告白してOKを貰い、付き合ってしまうかもしれない。それだけは絶対に嫌だ。
だから何としてでも、早く「100人斬り」をしなくては!!!
因みに、隆臣は俺の1番仲の良い友人だ。よく一緒に遊びに行くし、合コンにも誘ってくれる。
まぁ、さっきも言ったけど、合コンはいつも蹴ってたんだけども。
そんな事は置いといて、取り敢えず隆臣に電話して合コンをセッティングしてもらおう。
俺はスマホを取り出し、隆臣の電話番号にかける。プルプルプルと、数回なった後、隆臣が電話に出た。
[もしもし。晴人どうしたんだ?]
[あぁ、ちょっと隆臣に頼みたい事があってさ……]
[お前が頼み事とは珍しいな?で、頼み事とって何だ?俺に出来る事なら友達のよしみで聞いてやるよ]
[良い奴だな、お前!!]
俺は隆臣に要件を手短に話す。
[今まで合コンの誘い蹴っといて言うのもアレなんだが、合コンセッティングしてくんね?]
[?お前、高峯の事が好きだったんじゃないのかよ?]
少し驚いた様に話す隆臣。
[いや、まぁ、そうなんだが……。ちょっと事情が変わったと言いますか……]
曖昧な返答をする俺。
俺のその曖昧な返答により、隆臣は「ハッ」として、ニヤニヤした様な口調になり煽ってくる。
[晴人……、お前……もしかしてフラれたか!?]
[ウッザお前!!良い奴って言った言葉撤回するわ!]
[図星かよ!!]
ゲラゲラとした隆臣の笑い声が、電話越しに聞こえてくる。
マジコイツ許さん!!!
隆臣は電話越しにひとしきり笑い終えた後、電話を再開する。
[悪い悪い。事情は分かった。まぁ、ドンマイ。そういう事もあるさ。それに高峯は美人だしな。いくらお前と幼馴染とは言え、高嶺の花だったみたいだな]
[何だよお前……、やっぱり良い奴だな……と思ったけど最後やっぱり煽って来やがって!]
[まぁ、まぁ、落ち着け落ち着け。こういう時は友人が笑い飛ばしたり、ちょっと煽った方が調子でるだろ?]
[それもそうだな……ありがとな……]
隆臣の優しさに純粋に感謝する。そして、俺は気持ちを切り替えた。
[とは言え、だ。確かにフラれたはフラれたんだが、結果的に見れば次に告白が成功する確率が限りなく100%に近づいたのは確かだ」
[?どういう事だよ?]
隆臣の疑問は尤もだ。俺の話は間接的に聞けば訳の分からない話なのだから。
[簡単に説明すると、正確には告白してフラれたんじゃなくて、間接的にフラれたんだよ]
[それで?]
隆臣は話の続きを促す。
[俺は凛の好きなタイプを偶然聞いてしまった]
[なるほどね。つまり、高峯の好きなタイプに晴人が入ってなかったって訳か]
[そういう事]
[そして、晴人は高峯の好きなタイプを聞いた訳だから、それなら高峯の好きなタイプに晴人はなってやろうって事か。だから次告白して成功する確率が限りなく100%に近いと言ったんだな?]
[パーフェクト]
隆臣の理解が早くて助かる。
[それで?何で合コンに参加する事になるだよ?いや、おそらく合コンに参加する事によって高峯の好きなタイプに近づくんだろうけど]
[凛の好きなタイプ、何だったと思う?]
俺は隆臣に聞く。
コレは、なかなか答えが難しいのでははないだろうか
[合コンに参加する事によって高峯のタイプに近づくだろ……?うーん、女性経験の無い男子?いや、それなら合コンに参加する事によって高峯の好きなタイプに近づくってのは違うな……逆に女性経験のある男子……ってところか?]
おいおい、マジかよコイツ。すげぇな。
[当たらずとも遠からずってところかな]
[ふーん……、じゃぁ正解は?]
隆臣に正解を聞かれ、俺は答える。
[凛の好きな男性のタイプ……、正解は「経験人数100人以上」の人だ]
[…………………]
電話越しの隆臣の声が聞こえなくなる。
うん、分かるぞ。俺も数秒頭がフリーズしたからな。まさかあの清楚美人の凛の好きなタイプが「経験人数100人以上」何て聞かされたら、言葉を飲み込むのに数秒かかるよな。
俺がそんな事を考えている内に、頭の処理が出来てきたらしい。
[それ、高峯が言ったって、マジで言ってる……?え……?あの高峯が……?マジ……?]
凛が言った言葉が本当なのか、困惑しているようだ。
[ああ、本当だぞ。凛が、「経験人数100人以上」と言っていたのを、俺は耳でちゃんと聞いているぞ]
凛の言った言葉が本当だと、俺は断言する。間違いなく凛は言っていた。「経験人数100人以上」がタイプだと。
[なる……ほど……な。つまり合コンでいい感じになって晴人は童○を捨てて、そのまま100人斬りを目指すって訳か]
[そういう事だ]
[まぁ、事情は分かった。それなら合コンのセッティングは任せとけ。だが、お前、合コンだけで「経験人数100人」目指すつもりか?正直無理だろ]
それは正直俺も思っていた。
いくら隆臣が何回も新しい人を混ぜて合コンをセッティングしてくれたとしても、100人は無理だ。仮に毎日合コンを開いたとしても、絶対にお持ち帰り出来る保証なんてこれっぽっちもない。仮に出来たとしても完全にヤリ捨てみたいになってしまう。
いや、まぁ、実際そうなんだけども。完全に伊○誠エンドになりかねん。
[それは俺も思う]
と、なってくると、やはり風俗か?風俗なのか?風俗だと、お金の関係で性○為が出来るのだから、おそらく伊○誠エンドにはならないだろう。
[それじゃ、合コンセッティング出来たらこっちから声かけるから]
[おう!ありがとな!]
[いいって事よ]
隆臣との電話を切る。
本当に隆臣には感謝だわ。
※
俺の合コンセッティングお願い電話から三日後、大学にて隆臣から合コンのセッティングが出来たとの報告が来た。
そして、あっという間に合コン当日。今日は取り敢えず童○を捨てる事を目標にしよう。
講義が終わり、さぁ合コンに挑むかと気合を入れた時、俺の目の前に、俺の幼馴染にして想いの人の高峯 凛の姿が現れた。まぁ、いつもの事だ。
「ねぇ、今日は一緒に帰ってくれる?」
「ごめん、今日も無理なんだ……」
と言うか今日は特に無理だ。だってこの後合コンに行くんだし。
「何で最近私と一緒に帰ってくれないのよ……?」
凛は悲しそうな顔をしていた。
最近は今日の合コン後のお持ち帰り(出来た時のために)した時の性○為のために、女性にどういう事をしたら気持ちが良くなるのか色々と勉強をしているため、ここ1週間ほど凛とは一緒に帰れていない。
「ほんと、ごめんな凛。でも今日も一緒に帰るの無理なんだ」
俺は顔の前で手を合わせ、頭を下げ謝罪する。
「特に今日は俺の第一歩(童○卒業)になるかもしれないんだ」
そう、第一歩だ。凛の好きなタイプに近づくための第一歩。そう、その名も「童○卒業」。俺は凛の好きなタイプに近づくために、今日、童○を卒業するっ!!!!
「俺は、多くの経験(100人斬り)を積み、凛のところに必ず戻ってくる。だから、その日まで待っていてくれ」
俺は体を翻し、凛を背中に立ち去っていく。
今、俺の目は覚悟を持って戦場に出陣する目をしている事だろう。
待っていろ、数多の女性達よ。俺は「100人斬り」を必ず達成するぞっ!!!!今日はその第一歩(童○卒業)だ!!!!!
そんな事を脳内で考えながら歩いていく。
「怪しい……」
背後で凛が何かを呟いた気がするが、おそらく気のせいだろう。
大学内は、講義終わりの生徒でガヤガヤとしているのだから……。
※
私の名前は高峯 凛。そして、私には長年片思いしている好きな男の子がいる。中学生の時からの片思いだ。その男の子の名前は東山 晴人。
晴人とは家がお隣同士。幼稚園の頃からの知り合いで、小、中、高、大、と、ずっと同じ学校に通っている、所謂幼馴染というやつである。
そんな幼馴染の事が私は好きだ。それはもうどうしようもない程に好きだ。
晴人が私のことを異性として見ているかは分からないが、少なくとも私のことを好意的に思ってくれているのは確かだろう。一緒に帰れる時はいつも一緒に帰っているし、2人で一緒に遊びに行く事だってある。嫌われているなら、まず間違いなくそんな事はしないだろう。
さて、そんな幼馴染の晴人だが、はっきり言ってフツメンだ。人の容姿を評価するのは良くない事だとは思っているが、正直に晴人の容姿を評価するのであれば中の上……といったところだろうか?
顔も普通、運動も普通、勉強はまぁ、上位の方ではあるが……。
だけど、そんな晴人だけど、どんなにイケメンな後輩よりも、どんなにイケメンな同級生よりも、どんなにイケメンな先輩よりも、どんなにイケメンなアイドルよりも、どんなにイケメンな俳優よりも、私の中で晴人は、世界中の誰よりもイケメンだ。
それもそうだろう。だって私は、晴人の事がどうしようもない程に好きなのだから。どうしようもない程に晴人が好き。だから世界中の誰よりも、私の中で晴人はイケメンなのだ。
「カッコイイから好きなんじゃない。好きだからカッコイイんだよ」と言う歌詞もあるくらいだ。
私は、正にそれだ。
晴人は中身もイケメンだ。
誰にでも手を差し伸べ、誰にでも優しく、困っていれば助けてくれる。私が泣いた時はいつも側にいてくれて、慰めてくれる。
そんな彼の事が、私は大好きだ。
だけど、私は晴人に告白出来ないでいる。告白してフラれたら今までの関係が壊れてしまうのではと思い、日和ってしまうのだ。何とも情けない話だ。
※
ある日、私は学校でも有名なお金持ちでイケメンと名高い藤田先輩に屋上に呼び出され、告白をされた。
「高峯さん!貴方のことが好きです!!俺と、付き合ってくれませんか!?」
「ごめんなさい。私、経験人数が100人以上の人がタイプなんです。なのでごめんなさい。先輩とは付き合えません」
藤田先輩は私の言った言葉が衝撃すぎたのか、数秒脳がフリーズして、ポカンとした顔をしている。
それもそうだろう。だって私は大学で「清楚美人」で通っているのだから。
その「清楚美人」と名高い私の好きな男性のタイプが、「経験人数100人以上」と来た。脳がフリーズするのも無理のない事だろう。
勿論だが、私が本当に「経験人数100人以上」の男性がタイプという訳ではない。
所謂、断り文句ってやつだ。まぁ、今日初めて使ったけど。
もし晴人が、好きな人の経験人数が100人以上だとすると、私は間違いなく号泣することだろう。「何で私以外の女の子とそんなにいっぱいやってるの……。私以外の女の子とやらないでよ……」と。と言うか、私以外の女の子とそういう行為を晴人がしているという事実だけで私は号泣することだろう。
大丈夫だよね……?晴人は女の子とそんなことやってないよね……?
「それが嫌ならさっさと告白しろよ」という幻聴が聞こえてくるのは気のせいだろうか?
それが出来たら、晴人への告白など日和ってない。
さて、藤田先輩が私には晴人に実行出来ない告白を勇気を出して私にしてくれているというのに、私は藤田先輩よりも晴人の事を考えてしまっている。
流石に申し訳なさすぎる。
私が日和って晴人に実行出来ない「告白」と言う言葉に対して、藤田先輩は見事、私に対して「告白」という一大イベントを遂行した。
私は藤田先輩のその勇気に敬意を表し、今は晴人の事は一旦頭の中央に置いておこう……。間違えた。頭の片隅に置いておこう……。
「えっと……高峯さん……。さっき言った事は本当?」
私が先ほど話した好きなタイプの事を、藤田先輩の脳が処理し始めたようだ。
藤田先輩が、先ほど話した話が本当なのか聞いてくる。
「はい、本当です。ですが、先ほどの話は皆さんには内緒にしておいてください。自分でも変わったタイプの人が好きなのは分かっていますから」
「あ、ああ……」
どうやら、藤田先輩は相当ショックを受けている様だ。
だが、それでいい。
ありえない様な好きなタイプを断り文句にして、相手に「あっ……コイツ、ヤベェ……」と思わせる。
それが出来れば私の勝ちだ。
まぁ、それで変な噂を流される可能性は無きにしも非ずだが……。
「そ、それじゃ、今日は時間取ってくれてありがとう。俺はもう行くよ」
「はい」
藤田先輩は屋上の扉を開け、屋上から出て行った。
藤田先輩が出て行き、完全に屋上の扉が閉まり、私は「ふぅ」とため息を一つする。
「私の偽の好きな人のタイプ、広まらないと良いけど……」
特に晴人にはそれが本当の事だと勘違いしてほしくない。私の好きなタイプが、「経験人数100人以上」だという事が晴人の耳に入ったら軽く死ねる。
「私も戻ろ……」
私も屋上の扉を開き、屋上を後にした。
※
さて、藤田先輩に告白された次の日、大学の講義が終わり、友達の真彩と話しながら並んで歩いていると、真彩が昨日の藤田先輩に告白された件について聞いてきた。
もう話が回っている様だ。
「そう言えば凛、藤田先輩の告白断ったってほんと!?」
「うん、断ったよ?」
「勿体無い……」
藤田先輩は実家がお金持ちで、尚且つイケメンだ。真彩が藤田先輩の告白を受け入れなかったのが勿体ないと感じるのも、無理のない事だろう。
だが、私からすれば晴人以外の男子は総じて普通だ。
外見は確かにイケメンで実家がお金持ちだったとしても、「へぇ……凄いね」という感情しか湧き上がらない。それ以上の感情は無に等しい。
「因みに何て理由つけて断ったの?」
真彩が理由を聞いてきたため、私は真彩に教える。
「経験人数100人以上じゃないと付き合えないって言って断った」
「凛……、いつの間にそんな女になっちゃったの……?」
真彩はドン引きしている様な、引き攣った表情を浮かべた。
いや、私もこの断り文句はどうかと思うけども。だが、仕方がないではないか。キッパリ諦めて欲しいのだから。
それに。
「どのみち、私は彼とは付き合わないし」
だって私には好きな人がいるのだもの。
「そうなの?」
「うん、そうなの」
私は晴人の顔を思い浮かべ、笑顔でそう言った。
「それよりさ〜」
私は告白の件の話を切り上げ、真彩と別の話をしながら一緒に帰った。
※
それから1週間が経った。
そして、私は最近悩んでいた。
「なるほど、そうすれば気持ち良くなるのか……」「このテクニックは使えるっ……!」「練習相手いないし俺に相手を満足させられるのか……?いや、何を言っているのだ東山 晴人!!!隣に立つに相応しくなるためにっ……!!」
これが私の悩みの種だ。
ここ1週間、晴人が訳のわからない事をぶつぶつと呟いているのだ。
晴人……、とうとう頭が逝ったの……?
私には分からない……。
「何ぶつぶつ言ってるの?」と、晴人に聞いても、「俺のためなんだ」と、もっと訳の分からない返答が返って来るだけ。
また、ぶつぶつ言い出した1週間前から、晴人は私と一緒に帰ってくれなくなった。「一緒に帰ろ」と言っても、一緒に帰ってくれない。
今まではそんな事なかったのに……。
もしかして私は晴人に嫌われてしまったのだろうか……?そう思った事もあった。
だが、そういう訳ではなさそうだ。話しかければ、いつもの様に私と話してくれる。
ただ、一緒に帰ってくれないというのは不可解だ。
晴人は、私に何かを隠している。それは確実だ。
「私に教えてくれてもいいのに……」と、そう思わずにはいられない。
晴人の事なら、私は何だって知りたいのだから。
勿論、現在の晴人の息子の長さや太さも……。
ゴホンゴホン……。今のは聞かなかった事にして欲しい。
さて、私は今日も晴人に一緒に帰れないか聞いていた。
「ねぇ、今日は一緒に帰ってくれる?」
「ごめん、今日も無理なんだ……」
返ってきた晴人の返答は、ここ1週間と同じだった。
私は同じ返答に悲しくなり、何故最近一緒に帰ってくれないのか意を決して晴人に聞いた。
「何で最近私と一緒に帰ってくれないのよ……?」
「ほんと、ごめんな凛。でも今日も一緒に帰るの無理なんだ」
晴人は顔の前で手を合わせ、申し訳なさそうにしながら頭を下げ、謝罪のポーズを取った。
晴人から返ってきた返答は、やはり「無理」の一点張りだ。
「特に今日は俺の第一歩になるかもしれないんだ」
続けて晴人は言った。
「俺は多くの経験を積み、凛のところに必ず戻ってくる。だからその日まで待っていてくれ」
何故か、晴人は覚悟の決まった目をしていた。これから戦場に行くかの如く……。
謎だ……。
晴人は体を翻し、私のところから立ち去っていく。
「怪しい……」
もう我慢ならない。私はこんなにも晴人と一緒に帰りたいと言うのに、晴人は私と一緒に帰ってくれない。
晴人が何故最近私と帰ってくれないのか解き明かすために、私は晴人のスト○カーことにした。
※スト○カーは犯罪です。また、この物語はフィクションです。良い子は真似しない様にしましょう。
閑話休題。
私はこんな事もあろうかと、カバンに常備している黒縁メガネと黒い帽子を被り、黒いマスクをして完全に私とは分からない様に変装した。
今の私の見た目は、他人から見れば完全に変質者に見える事だろう(事実、変質者)……。
「コソコソ……」
私は晴人に見つからない様にコソコソ動き、時には電柱の後ろに、時には曲がり角の壁に身を隠しながら晴人の後を追う。
「ママー、あの人コソコソ言いながらコソコソしてるー」
「しっ!!見てはダメよ!!!」
すれ違った親子に、何か私の事を誤解されている気がする(誤解じゃない)が……110番されてなければ良いけど……。
まぁ、いいだろう。そんなことより今は晴人を追うことが先決だ。
「コソコソ……」
私は引き続き晴人の後を追った。
しばらく晴人を追った後、晴人は居酒屋らしき場所で数名の男女と合流した。どうやら男子3、女子3の計6人の様だ。
晴人の他に、晴人の友達の隆臣君も一緒にいる様だが……その他は知らない顔だ。
晴人が最後だったのか、晴人が来た後に、晴人、隆臣君を合わせた計6人は居酒屋に入って行った。
男女6人で居酒屋……?
ハッ!!!!まさか合コンなの!?!?!?もしかして晴人、彼女作りにっ……!?!?
このまま晴人が彼女を作ってしまうのではないか思い、私は胸騒ぎがした。
私も見つからない様に晴人達の後を追い、居酒屋に入る。
居酒屋の席はかなり空いている様だ。
私は、晴人達の近くの席に着席した。
そして、私は晴人達の席の方へ片耳を立てる。
「今日は皆んな合コンに集まってくれてありがとう!!!!楽しんでくれ!!!」
この声の主は隆臣君だ。どうやら隆臣君が主催者の様だ。
そして、案の定と言うかやはり晴人が参加したのは合コンだったらしい。
ここで晴人が女の子の誰かと仲良くなったら、そのまま付き合っちゃうかも……。
その可能性に思い至り、私の胸がズキズキと痛む。
それは、悲しいし、苦しいし、悔しい。
晴人が私以外の女の子と付き合っちゃうのなんて、絶対にイヤ!!!
「まず、皆んな自己紹介するか」
隆臣君の声が聞こえる。
このままではつつがなく合コンが始まってしまう。
マズイッ……マズイッ……!!
「ちょっと待って!!」
気付けば私は自分の席を立ち、晴人達の席に声をかけていた。
※
「凛!?どうしてここに!?」
どうやら凛は変装している様だが、間違いない。この声は凛だ。
何年も凛の幼馴染やっているだけあって、合コンに乱入して来た声の主を、俺は正確に当てた。
また、凛がここにいる事に対して俺は驚愕していた。
俺以外の他の合コンメンバーも、「いきなり何だ?」と、怪訝な表情をしている。
それもそうだろう。
いきなり合コンに割り込んで来たのだから。
それに、俺は凛に今日合コンに行く事を話していない。だと言うのに、今、凛はここにいる。
という事は、凛は俺の事を尾行して来たというかとか?
だけど、どうしてそんな事を……?
「……」
凛が無言で俺の腕を掴んで、無理やり居酒屋の外に引っ張って行こうとする。
「ちょ、ちょっと凛!いきなりどうしたんだよ!」
俺は困惑気味に凛に問いかける。
俺の声に凛が歩みを止め、俺に振り返る。
「どうして……」
凛は何かを言おうとしている様だ。
「ん?」
続く凛の言葉に俺は耳を傾ける。
「どうして合コンなんて行くのよっ……!!」
「えぇ!?」
凛が綺麗な瞳に涙を溜めながら、声を荒げる。
「ど、どうしてって……」
俺は凛の言葉に困惑する。
「私がっ……、私がどれだけ晴人の事を好きか分かっているのっ……!?!?!?!?
合コンなんて行って……晴人の……、晴人のばかぁ……!!!」
「…………………………………………………………………………………くぁwせdrftgyふじこlp!?!?」
一瞬思考が停止した後、俺は凛の衝撃の告白に驚愕し、また、嬉しさのあまり声にならない声をあげてしまう。
合コンメンバーは、先程とはまた別の意味で驚愕した顔をしていた。
居酒屋でガヤガヤと人の声がしだす。居酒屋にいる俺達以外の他のお客さんも、「何だ何だ?」と皆んな俺と凛の方を向いていた。
「り、凛!!ちょっと……!!」
これはマズイと思い、先程とは逆に、俺が凛の腕を引っ張って居酒屋の外に出る。
居酒屋の外に出た後、「ふぅ……」と息を整える。
「凛、落ち着いたか?」
俺は、ポケットからハンカチを取り出し、凛の涙を拭き取った後、問いかける。
「グス……うん……」
涙はまだ少し残っている。だが、鼻水を啜りながらも俺の問いかけに答えてくれた。
どうやら落ち着いた様だ。
「それで凛……、さっき俺の事好きって……それ本当……?」
先程の凛の告白が真実なのかについて、俺は聞く。
「嘘で"好きだ"なんて言葉は言わないよ……」
「そ、そうだよな……疑ってごめんな……。まさか凛が俺の事好きでいてくれてたとは思ってなかったから……」
そう、そうなのだ。まさか凛が俺の事好きでいてくれていたなんて、思うはずが無いでは無いか。
だってそうだろう?
俺は聞いたのだ。凛の好きな男性のタイプが「経験人数100人以上」だという事を、凛の友達に話していた所を。
これを聞いて、「俺の事好きなの!?」とは童○の俺にはならない訳で……。
「私の方こそ……いきなり好きだなんて言ってごめんね……。合コンに行くくらいなんだから、私の事が恋愛的に好きじゃ無いのは分かりきっている事なのに……。晴人が私以外の女の子と付き合うかもって考えたら居ても立っても居られなくて、好きだなんて言っちゃった……晴人からしたら迷惑だよね……ごめんね……」
凛は、また瞳に涙を溜め、自分で言って苦しそうにしながら、そして悲しそうな顔をしながらペコリと頭を下げ、俺に謝る。
「迷惑だなんて思ってない!!!!」
俺はそんな凛の筋違いな言葉に、声を大にして否定する。
「えっ……?」
それに対して、凛も「どういう事?」といった様な顔をしながら、下げていた頭を上げる。
「俺は凛の告白を迷惑だなんて思ってない!!!
むしろ、メチャクチャ嬉しいよ。だって……俺も……俺も凛の事が好きだから!!!!
いや、大好きだから!!!!」
「え……え……?晴人が私の事を好き……?え……エ…?ッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!くぁwせdrftgyふじこlp!?!?きゅぅ……」
俺の告白に対して、凛は初めの内は困惑した様な表情をしていたが、次第に俺の言葉の意味を理解し始めたのか、声にならない声を上げ、最後には顔から湯気が出るのではないかと思うほど「ボン!」と真っ赤にさせ、後ろに倒れていく。
「え……凛!?凛!?!?!?」
そして、俺は凛が地面に倒れない様に素早く凛の腰に手を入れ、身体を支える。
数秒経った後、凛は意識を取り戻したのか、頭をブルブル左右に振りながら、カバっと顔を上げる。
俺の手で凛の身体を支えているため、凛が顔を上げた影響で凛の顔が俺の至近距離にまで近づいた。
「「ッ……!?」」
お互い顔が真っ赤になる。
俺は「ご、ごめん!」と言いながら、慌てて凛の腰から手を離そうとしたが、凛の身体は、今俺に支えられている事を思い出し、ゆっくり凛の腰から手を離し、凛自身で立てる様にした。
気を取り直したのか、俺の先程の言葉が真実か聞いて来た。
「そ、その……、晴人が私の事が好きってほんと……?」
凛のその問いかけに、俺は凛が先程言った言葉をそのまま凛に返す。
「嘘で"好きだ"なんて言葉は言わないよ……」
「そう……だね……。晴人がそんな事する訳ないよね。ごめんね」
凛が先程俺に言ったみたいに、俺に対して謝った。
「いや、良いよ」
俺と凛は両思いだった。それは良かった事なのだ。
だが、分からないことがある。
その分からない事に対して俺は凛に聞く。
「俺……さ……凛がこの前友達の中園さんと話してた時に、凛の好きなタイプが「経験人数100人以上」の人ってのを聞いちゃってさ、その……その事についてどういう事なのか聞きたいと言いますか……?」
「あ、あれ晴人聞いてたの!?!?晴人、あれは違うの!!!!告白の断り文句だから!!!だから、お願いっ!!!!!勘違いしないで!!!」
凛がまた涙目になりながら、必死に「あれは違う」と否定する。
「そ、そうなんだ……。じゃぁ、俺、合コン行く意味なかったのか……」
あまりの凛の必死さに少しビックリしながらも、あれは勘違いだったという凛の話を飲み込む。
「私の事、嫌いにならないでっ……!!!!」
凛の言葉にギョッとする。
なるほど。あれが本当だった場合、俺が凛の事を嫌いになると思っているのか。だからあれほど必死に否定しているという訳か。
「凛はバカだな……」
俺は凛の事を慈愛の籠った目で見ながら、凛の頭を優しく撫でる。
「バカって何よ!バカって!!」
凛は俺に撫でられるのが嬉しいのか、頬を赤く染めている。また、口元が緩まりながらも悪態をつく。
「仮に、仮に……だ。仮に凛が本当に「経験人数100人以上」の人がタイプだったとしても、そんな事で俺は凛の事を嫌いになる事なんて、万に一つもあり得ないよ」
だって。
「だって俺は……、俺は片思い中の幼馴染の好きなタイプが「経験人数100人以上」と聞いて、凛のタイプなれる様に100人斬りしようと思い至り、合コンに参加したくらいには凛の事が好きだからな!!」
俺はニカっと凛に笑みを向け、合コンに参加した理由を凛に話した。
「バカじゃないの……、やっぱり晴人はバカよ……」
口では「バカ」と言いながらも、凛のその顔には、涙を堪えながら満面の笑みが浮かんでいた。
「俺達両方とも勘違いしてたみたいだな」
「そうみたいね」
俺と凛は「あはは」と笑った。
「それじゃぁ……、改めて……」
顔が熱い。
鼓動が早い。
大きく深呼吸をする。
俺は凛の顔をしっかりと見た。
思えば俺が凛の事が好きだと自覚してから、これまで長い月日が経った。
日和って告白出来ずにいたが、なんだ……、直ぐに告白しておけば良かったじゃないか。
そうすればこんなに遠回りをせずに済んだのに。
だから、だからこそ、これまでにもっと早い段階から築き上げれる筈だった幼馴染以上の関係を、時間を、これから埋める様にしたい。
そのために今、俺は凛に改めて思いの丈をぶつける。
凛は期待の籠った眼差しで俺の告白を待つ。
告白の返事は分かっている。だが、これほどまでに緊張するとは。
俺は凛に告白するため、意を決して口を開く。
「高峯 凛さん……。俺は君の事が……す「おーい、晴人。高峯と付き合えたか?」……………………隆臣お前○ねよ!!!」
「え?」
完
初めまして。
胡桃 瑠玖です。上から読んでも下から読んでも、『くるみるく』です。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。