第3.5話
仕事を終え、帰宅した妙子はソファに座り何気なくテレビをつけた。
そこに映し出されたのは、ピンク色の衣装をまとった大勢のダンサーたちだった。
ダンサーたちは、一糸乱れぬ動きで見事なダンスを披露していた。
妙子はしばらく見入っていた。
しかし、ダンサーたちの足元が映った瞬間、妙子は
思わず声を上げた。
「えーっ⁉︎」
画面の中のダンサーたちの足元が、
右足、左足、右足、左足、時々クロス!
「このダンス、この前フラミンゴたちが踊っていたのと一緒だ!でも、どうして…? それに、ピンクの衣装がまるでフラミンゴみたいだし…。」
あの夜のフラミンゴたちと同じ動きをするダンサーたち。
そして、あの夜のフラミンゴたちも一糸乱れぬ見事なダンスだった。
しばらくすると、大勢のダンサーによるパフォーマンスは終了し、今度は社交ダンスのペアが10組ほど登場した。中でも、一組のペアがインタビューを受け、ダンス教室でのエピソードを語り始めた。
「生徒さんに足を踏まれるのは、私は平気なのですが、生徒さんの方がすごく気にするんですよ。」
その言葉を聞いて、ネズミとのダンスを思い出した。
妙子は、ネズミにダンスを教えてもらいながら、何度もネズミの足を踏んでしまった。
「ごめんなさい。」としゃがんでネズミの足を心配する妙子に、
「大丈夫だよ。」と言うように優しく妙子の手をとってくれた。
優しい笑顔で語る男性の目。
妙子は息をのんだ、あの時のネズミと同じ優しい目!
「このペアの人…あの時のネズミ…? まさか…。」
妙子は、子供の頃から他の人には見えないものが見えることがあった。しかし、今テレビに映っているのは誰もが見られるダンサーたち…人間だ。
でも、私のところに来るのは、いつも動物たちばかり…。
そんなことを考えながらテレビを見ていると、「昭和三十年代の懐かしいダンス」として紹介されていた。
「ということは…このダンサーの人たちって、今はもういない人も…。もしかして、この前のフラミンゴたちやペアのネズミは転生?」
だが、なぜ自分のもとに現れるのか。
フラミンゴ、ネズミ、そしてシマウマ。
シマウマは「オセロ盤」という形で妙子のもとに痕跡を残した。そのオセロ盤は妙子たち姉弟が子供の頃に遊んでいたもので、10年ほど前に従兄妹たちに譲ったものだ。
それが、今シマウマを通じて妙子のもとに戻ってきた。
フラミンゴ、ネズミ、シマウマ、彼らに共通しているのは、妙子が落ち込んだり悩んだりしたときに突然現れ、元気づけてくれることだ。彼らは、妙子に優しさと温もりを残して去っていく。
「そして、私の前に時々現れるあの黒猫…いったい何? 」
妙子は明日に備えて休むことにした。最近、肩凝りなのか肩が痛くて会社で話ていたら、同僚が整形外科を紹介してくれた。
明日はその整形外科を予約している。
その診察室では動物のナマケモノが妙子を待っていた。