第拾玖話 【ブラック】
「オラァ!」
十字の拳がブラックを目掛けて放たれる。
その拳をブラックは後ろに飛び退き回避している。
「どうしたぁ! 避けるのが精一杯かぁ!?」
「くく……俺はお前だけを相手にするつもりはないからな!」
ブラックは回避しながら奏から離れ五人が正面になるように移動をしていた。
「この位置でいいか……」
「お前! 戦う気が無いのか!?」
「筋肉だけのお前とは戦い方が違うんでな……俺の力を見せてやるよ!」
ブラックの瞳は紅く染まり、見開くと薄いピンクの様な霧が辺りに立ち込めていく。
「みんな、これを吸っちゃダメだよ!」
「わかってるって」
みんなが霧を吸わないように口を押さえている。
「へぇ……俺の力に気が付いたか」
「当たり前だ!」
「十字なに言ってるのさ。 気が付いたのは僕だからね」
「そのくらいいいだろ」
「同じ手はくいませんよ」
「さっさと片付ける」
「くくく……俺の力を甘く見てるようだな」
霧の色がピンクから黒く変わって行く。
「なんだ色が変わっただけじゃん」
「さっさと降参するんだな」
「バカ! 避けろっ!」
白が銀の体を突き飛ばす。
「ぐっ!」
白の腕が切れ血飛沫が舞う。
「気がつく奴がいるとはね……だけど次も躱せるかな?」
ブラックが黒い霧に溶け込むとみんなを囲むように無数の紅い瞳が現れ姿の見えないブラックの爪がみんなを襲い始めた。
「よくも白をやったな……僕の力を見せてやる!」
銀がの周りにある木々が引き抜かれ宙に浮かび始めた。
「これでもくらえっ!」
複数の紅い瞳目掛けて飛ばすが全てすり抜けてしまう。
「そんな物当たるか!」
「くっそー! こうなったら!」
銀の周りの地面が震え崩れ始める。
「銀やめろ!」
「銀だめです!」
「ハアアアア!」
地面が盛り上がり、崩れみんなの足元までも崩れ始めた。
「銀! よせっ!」
十字が銀を押さえ込んで銀は止まった。
「ったく……」
「ご、ごめん……ちょっと頭にきちゃって……」
「銀、霧だけ飛ばせるか?」
「やってみるよ」
銀は霧だけを飛ばそうと力を込めるが軽く霧散するだけで大した変化は無い。
「だめだ〜、霧だけ飛ばそうと力を込めるとみんなも巻き込んじゃうよ」
「俺の言ったタイミングで一点だけ飛ばせるか?」
「それならなんとか……」
白は目を閉じて妖力の気配を感じる……。
「いまだっ!」
白が言ったタイミングで一部の霧が霧散するとブラックが現れた。
「なにっ!」
「そこだ!」
白の青白い炎を纏った拳がブラックの顔面にヒットし吹き飛んだ。
白は追い打ちをかけるためにブラックに走ると、目の前に奏が立ち塞がった。
「まって!」
「おい! 邪魔だ!」
「もういいでしょ!」
「おいおい嬢ちゃん、こいつはあんたを攫った相手だぜ?」
「そうだけど……もう十分じゃない……これ以上する事は無いわ」
「奏さん……それでいいんですか?」
「はい」
「……わかりました……白、十字、銀……ここまでです」
「……わかった……」
「カナちゃんが言うなら……」
「しょうがねえな……」
奏は倒れているブラックに駆け寄り体を起こした。
「大丈夫?」
「……なんで助ける……同情か?」
「……違う……とは言わない……でも目の前で傷ついているのを放っておけるわけないじゃ無い」
「…………、……俺の負けだ……」
「ブラック、聞いてもいいですか?」
「……俺はこの力を授かる代わりにこの女をエサに妖狐が守っている女を殺せと言われただけだ……力をくれた奴は知らない」
「……あなた一人で我々と戦えると?」
「お前らがここまでやるとは思ってなかったが……どうせ俺は囮だろうな……」
「囮……白っ!」
「ああ! 智子があぶねぇ!」
白、十字、銀が走り出し、赤井と黒は奏を連れて戻る。
奏は何度かブラックの方を振り向きながら二人に連れられて行った。
「……まさか……人間に助けられるとはな……あの女……」
五人が奏を探していた頃、灰と智子もまた探しに出ていた。
「奏何処にいるのよ……」
「おい、そろそろ戻らねえか? あいつらが見つけて来るって」
「ダメ! 見つけるまで戻らない!」
「……変な所で頑固なんだからよ……」
奏を探しに町中を回るけど見当たらない……。
やっぱり、前に私が捕まっていた場所かしら……?
「おい! 何処に行くんだ!」
「あっちにいるかも知れない!」
「あ〜もう! 少しはじっとしててくれねぇかな」
灰と智子は山に足を踏み入れ奥にどんどん進む。
「そこで止まれ!」
灰が智子の前に出て足を止める。
「灰さんどうしたの?」
「いやがるな……」
「おやおや、やっと来ましたね」
私達の前に現れたのは巨大な体に鎧を身に纏った人と、白君と同じくらいの背丈があって昔何かで見た陰陽師の様な服装の人が目の前に現れた。
「奏を返して!」
「我々が攫ったと?」
「それしか無いだろ? こっちは攫われたなんて一言も言ってないんだしよ」
「そうですね……まぁ、正解です。 それでは私が何をするつもりかはわかっていますね?」
「……逃げるぞ!」
灰さんは私の手を引き走り出す。
「……追え」
「おうよ!」
灰さんは道に何かしながら逃げ木の影に隠れ二人してその場にしゃがむ。
「これで時間稼げればいいが……」
「灰さん、あの人は誰なんですか?」
「……あれは……あいつらは……俺達と同じ妖狐だ」
「え!? それじゃもしかして私から顕現したとか?」
「そうだろな……俺はこの間の二人の話をあまり聞いていなかったが、どうやらそのようだ」
「それじゃなんで私を狙ってくるのよ!?」
「そりゃ……」
灰さんが言いあぐねいていると、スズンッと頭上から巨大な人が降りて来た。
「逃がさん」
「ちっ! しつこい野郎だ……逃げるぞ!」
「逃がさんと言っただろう!」
巨体が前に立ち塞がり、持っている巨大な槍で攻撃を仕掛け私達の体を半分に斬ってしまう。
「ん? なんだ? 手応えがないぞ……、……これは……幻術か! くそおおおお!!」
二つに斬られた私達の体が揺らめき消えて行った。
「灰さん追って来ないですね」
「ああ、だろうな。 きっと悔しがってるぜ」
灰さんが逃げならが何かやっていたのは幻術で私達の偽者を作り出し囮として使っていたからだった。
「お! やっと来たな」
前から走って来るのは白君だった。
合流して奏は無事と聞き、安堵のため息を漏らし胸を撫で下ろす。
飯綱荘に戻った私は待っていた奏を抱きしめて嬉し涙をながした。
「奏ー! よかった! 無事だったんだね!」
「みんなが助けてくれたから私は大丈夫よ……心配させてごめんね」
「奏が無事なら……でも私のせいかも知れないよね……」
「トモモのせいなんかじゃないよ! それにちょっと楽しかったし」
「奏……」
「さ、今日は遅くなっちゃったわ……早く帰らないと親を心配させちゃうし、宿題だって終わらなくなっちゃうし……宿題終わらなかったら明日見せてね」
「うん! 任せて!」
「それじゃ、トモモもみんなもさよなら〜! また明日ね」
「送って行かなくて大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、今回の件で私を攫っても無駄って事がわかったと思うし、それじゃバイバイ〜」
奏は手を振りながら帰って行った。
私はあの妖狐の事をあんまり気にしていなかったけど、奏が攫われたんだし……みんなにちゃんと問いたださないと!
みんなを食堂に集めて聞き出す事にした。
読んで頂きありがとうございます。
不定期連載ですが頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。




