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第47話:家族会議に修羅場を添えて


 家に帰って早々、俺達は家族四人に逢魔さん……そして俺の膝の上で眠る華蓮を添えた面々で居間に集まっていた。

 事の発端としては普通にお帰りなさいの会だったのだが、俺の懐に忍ばされていた札のせいで状況はめっちゃカオスに。

 もっと詳しく説明するのなら、札から出てきた華蓮を見て剣がめっちゃキレている。初めて見るような……というか実際初めてなんだが、キレすぎて炎が可視化されている光景。熱いはずなのに冷える視線に晒されながらも、俺はなんとか口を開くことにした。


「いや……あのさ、一回落ち着こうか?」

「いいですか兄様、私は冷静さをかいています――納得出来る説明を」

「だから説明するから、霊力を抑えようぜ剣めっちゃ暑い」


 本当に熱い、熱すぎて冷や汗が蒸発する程には熱い。

 氷属性故か俺は熱さに弱いし、普通に倒れそうな程にこの部屋の温度が高い。

 なんとか妹に状況を説明するために何か喋ろうとしたのだが、言葉を出す前に剣はこう言った。


「この子からは兄様と龍華の霊力を感じます――見た目も似てますなんなら顔とか兄様似です」

「そうだ……ですね」


 妹から感じる圧のようなモノに敬語になってしまった。

 どうしよう妹が剣が怖い、何が怖いか分からないんだけどさ……龍華や神綺と別のベクトルで凄く。

 助けを求めるように同じ部屋にいる父さんと逢魔さんに目線をやれば、その二人も母さんに詰められていて――なんかもう、色々とヤバかった。

 

「兄様、私は賢いです。つまりこの状況がどういうことかも分かっています」

「……は?」

「何故同い年ぐらいなのかは分かりませんが、この子は兄様達の子供でしょう――つまりしたのですね」

「……え、父さん!? いや、ちょ母さんも何を剣に教えてるんだよ!」


 その言葉に思わず声を荒げて両親を見た。

 七歳である剣に何を教えてるんだと思わず問いただしたかったからだ。

 だけど二人も何も知らないようで、首を横に振り凄く強く否定している。


「……な、なぁ剣? したって何をだ?」

「そんなの接吻です。母様が言ってました接吻すれば子供が出来ると――状況的に見ても私の推理は完璧なはずです」

「……………」


 思わず無言になった。

 確かに純粋な剣の事だ母さんにそう教わったのならそれを信じ続けるだろうし、なんというか恐怖が一気に失せた。微笑ましいというか、一切変わってない妹の純粋さに涙すら覚えた。


「つまり兄様は龍華と結婚したのですか? 私を置いて?」

「…………あぁもう、なんかそれでいい――いや良くないわ」

「私は今より小さい四歳の頃に聞きました兄様は私から離れないと――契約を解くために一ヶ月は我慢しましたが、夫婦は一緒に居る必要がありますまた離れるのですか?」

「よし――ストップだ剣、父さんがちゃんと説明するから別室行こうな、な?」

「待って下さい父様、まだ兄様に言いたいことが……離してください父様ー」


 そのまま父さんに抱きかかえられて別室に連れられていく我が妹兼原作主人公。

 ちょっと微笑ましいカオスに今更ながら孤蝶が何もしてないことに気がついた。普段ならいの一番に暴れそうな俺の式神なのに大人しいのはどういう事なのだろうか?


「孤蝶、どうした?」

「気にしなくていいよパパ」

「……ん、え……は?」

「む、何を疑問に思ってるの?」

「いや今の言葉にだが?」

「どうしよう、賢い私にも何が分からないのか分からない」

「…………すまん孤蝶、日本語で頼む」

「日本語だよ?」

「えっと俺が理解出来る日本語で頼む」


 困ったとそう言いたいかのように考え込み、孤蝶は少し悩み始めた。

 そして暫くして何かを思いついたのか、少しのドヤ顔をしながらも得意げに次のような言葉を語る。


「刃、分かってると思うけど私は実質神綺の霊力と刃の血を触媒として生きてる。ここまでは分かるよね」

「まあ、そこは」


 発生原因は未だ知らないが、富士の樹海に溜まっていた瘴気から生まれた孤蝶は、神綺が得意とする契約の力と俺から取り込んだ血で存在を保ってる。

 だからそこは理解出来るし、ツッコむ意味が無い。


「つまり娘、私が第一子。だからパパと呼んだ――これが答えだよ」

「頼む孤蝶、バグらないでくれ」

「どこが? 湧いてきた娘が私に勝てないから、余裕を持ってるだけ――つまりこの子は妹になるからの姉故の余裕。私が上でその子が下、年功序列こそが全てに優先される。私は一歳でその子は多分生まれたてでしょ?」


 どうしよう、孤蝶がまじでバグった。

 あと湧いて出たに関しては孤蝶は何も言えないと思う。

 だって樹海に急に出てきて襲ってきたのお前だし……いや、それよりもだ。この状況、華蓮が起きたらどうなるんだ? 今は寝てるから良いものの、起きたら修羅場になるのは確定だろう。だって、寝言でのとうさま呼びだけでこのカオスを連れてきたのだから。


「ん、おはようですとうさま。あれ、その方は?」

「私は孤蝶、貴方の姉」

「……ねえさまって事ですか?」

「そう、だから敬うといいよ」

「確かにとうさまの霊力を感じます……つまり本当にねえさま?」

「……孤蝶お姉ちゃんと呼ぶことを許可してあげる」

「覚えました。わたしにはねえさまが居たのですね」


 受け入れるの早くないか?

 いや、え……どういう理解の速度なんだよ。

 あまりにも素直に受け入れすぎてあの普段動じない孤蝶が驚いているし、少しやりづらそうにしている。


「あれ、そういえばここは何処なのですかとうさま?」

「俺が住んでる家だな」

「そうなんですか? あ、隣の部屋からとうさまに近い気配を感じます! 挨拶しに行ってもいいですか?」

「いや、ちょっと待て――あぁ、まじで元気過ぎだよ華蓮」


 止める暇もなく、そのまま隣の部屋にへと突撃していく華蓮。

 数日で理解したことだが、生まれたばかりで好奇心が旺盛で知識欲満載のこの子は、気になったものに目がない。

 だから双子である故に性質以外は殆ど同じ器の剣に会いに行ったんだろう。


「これ、どう収拾つければいいんだ?」


 切実な問い、まじで何をすれば良いか分からないし孤蝶はバグってるし母さんは頭が痛そうにしてるしで、この場には混沌しか極まってなかった。

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