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第40話:廻りし龍はまた咲いて

 俺が屋敷に戻されて十分が経ち、時間通りに龍華が帰ってきた。

 彼女の手の中には何かの卵、感じる霊力的にそれはあの龍に関係ある物だろう。


「……それどうしたんだ龍華?」

「詳しくは分からないわ。でも多分、穣涼の転生体が入った物だと思うわ」

 

 不滅の龍神である穣涼は公式設定で転生すると書いてあったし、多分その卵なんだろう。その卵は破壊することが出来ず、大地の力を借りてまた孵化するとの事だが……。


「やっぱり長くなかったか……それで何を話したんだ?」

「ふふそれは内緒よ。でも彼女から伝言があるわ」


 伝言か、何を俺に伝えたんだろうか?

 この状況で恨み事を吐くような奴ではないし、態々最後に伝えることだ。きっと彼女にとってかなり大事なことなんだろう。


「『妾に勝ったんだ龍華を守り抜け』それだけ伝えて彼女は逝ったわ」

「そうか……重いな、それ」

「重いって何よ」

「……黙秘権を頼む」

「駄目よちゃんと喋りなさい?」


 いやぁ、だって将来の彼女を知ってると俺が守るより守られる側になりそうだし……何より穣涼の最後の言葉を破ったら怖い。

 でもこの世界で俺が関わって彼女に笑って欲しいと思ってる以上、出来るだけ龍華は守るつもりだけどさ。


「とりあえず、逢魔さん達に連絡するか……終わったし」

「そうね。皆には帰って来て貰わないとね」


 空には陽が昇り、静寂が場を包む。

 ……あれだけこの場に満ちていた神威は消え去り、いつもの屋敷が帰ってきた。

 龍華は卵を抱え、それを見ながら俺はゆっくり伸びをする――全てが終わったこの場所で何かするわけでもなく、ただ皆が帰ってくるのを待った。

 いつまでも龍華に卵を持って貰うわけにもいかないので、俺が預かり……それで暫く待って逢魔さんが帰ってきた。

 

「終わったのかお前等?」

「ええ、終わりました逢魔さん」

「お帰り父様、終わったわよ」

「そうか……終わったのか――なあ龍華、抱きしめても良いか?」

「ええいいわよ父様――きっと大丈夫だから」


 恐る恐る龍華に近付く逢魔さん、それがじれったかったのか龍華が彼に抱きつけば、何も起こる事はなく……すぐに彼は龍華を力強く抱きしめた。


「……触れる――お前を抱きしめられる。ははっ子供ってこんなに軽いのか」

「ちょっと父様抱えるのは止めて頂戴、刃が見てるわ」

「許してくれよ、もうちょっと――いや、一時間ぐらいは抱えさせてくれ」

「それは駄目、恥ずかしいもの」

「……そうか、でもまた抱っこさせてくれ」

「……人が居ないときだったらいいわよ」


 名残惜しそうに龍華を地面に降ろした逢魔さんの顔は、今まで見た彼の顔の中で一番の笑顔だった。それほどまで彼は……逢魔さんはこの日を待っていたのだろう。

 娘に触れれることを――龍の呪いが解けることを。


「で、気になってたんだが……刃が持ってる卵はなんだ?」

「えっと、多分龍の卵だと思う」

「……何の龍のだ?」

「穣涼のだと思う、転生するんだろあの龍」

「――――そうだな、確かにそうだ。それよりだなんかその卵、脈打ってないか?」


 そう逢魔さんが指摘した通り俺が持っている穣涼の卵が脈打ち始めたのだ。

 それどころか周りに莫大な霊力を放ち始めている。見るからにやばい状態で、俺と逢魔さんが警戒する中、龍華はかなり呑気だった。


「あ、本当ね。もう生まれるのかしら?」


 その言葉の通りに今まで以上に霊力が渦巻いて――辺りが光りに包まれあまりの明るさに目を閉じた――で、その光りが収まった瞬間の事だ。

 何か霊力の塊のような物だけを知覚して目を開けてみると、俺達の間に。


「……子供ね、刃」

「あぁ……子供というか、子供だな」

 

 なんか……俺と龍華の特徴を合わせたような黒い装飾が成された金の着物を着ている龍の角が生えた六歳程の少女がいた。

 ……感じる霊力は俺と龍華を混ぜたような感じであり、めっちゃ多い。

 いきなり卵から子供が出てくるという状況、それに加えて俺等に似てるというこの混沌具合。嫌な予感がしつつも……何して良いか分からない状況で、俺が警戒していると。


「……とう、さま?」


 龍華を見てその後に俺を見て、あろうことかそんな事を口走ったのだ。

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