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第22話:暦の一族

 部屋に入ればそこには三組の親子達と嫌にでも目に付いてしまう白髪の女性。

 俺から見て一番離れた所に座るその少女を表現するなら多分神綺様の色違いって言った方がいいかもしれない。

 神綺様が純黒と言うなら彼女は純白、太極を表すかのよう真反対の彼女は神無月家の当主であり人ならざるモノだ。

 名を神無月九曜(かんなづきくよう)

 作中屈指のバグキャラであり、最初の方に登場したのにもかかわらずインフレ特急列車の最前列に居続けた挙げ句に、封印するしか抑える手がないと言われたこの漫画の最強格。

 目をつけられたりしたら確定で死ぬだろうから、とりあえず彼女の機嫌は損ねてはいけない。原作開始前にそんなキャラに出会ってしまった恐怖に少し肝を冷やしていると、おどおどとしながら手を上げる女性がいた。

 

「……あの、なんでそこのカスがいるのでしょうか? 聞いていないのですが」


 そして、そんな事を言い放ち明らかな敵意を父さんに向けながら睨み付けた。

 ……どことなく母さん似のその女性は、記憶通りなら水無月家の現当主、ヒロインのやべーやつの母親であった女性だろう。

 それにしても敵意が凄くない? 対象じゃない俺ですら身震いするほどの殺意なんだけど……。


「俺が連れてきたんだよ悪いか静?」

「……来るなら事前に伝えといてください、用意したので」

「何の準備かは聞かないでおくぞ……」

「あの聞きたいなら教えますよ?」

「いや……まじで遠慮しとく」


 いったい二人の間に何があったんだろう?

 こんなに嫌われるなんて事はよっぽどの事を父さんはしたんだろうが、彼の性格を見るにそこまで嫌われるとは思えない。


「久しぶりだな昴! そこの小さいのはお前の子供か! 全く似ておらんな!」


 続いては筋肉としか表せないような男性がそう言った。

 いや、意味分からないかも知れないがまじで筋肉なんだよ。暑苦しいというか、筋肉というか、肉の壁というか……百九十㎝ぐらいのでっかいマッチョ。

 その後ろにはなんかめっちゃ美少年がいて、父親だろうその人の声に驚いてかビクビクしてる。


「皆様声が大きいですし、九曜様の御前ですよ? 落ち着いてください」


 そして最後にとてもお淑やかな女性が莫大な殺気を放ちながらそう言い、場が一気に静まる。彼女の横には将来絶対に美人になるだろう黒髪の女子がいて、同じくとても綺麗な姿勢でそこに座っていた。


「別にいいわよ、久しぶりに何人かで集まったもの楽しいのは良いことだわ」

「そうですか九曜様、ならわたくしは何も言いません」


 こわい、なんなんだこの人達。

 普通に殺気を出すし、一人は今も父さんを睨んでるし癒やしが……というかまともなのが筋肉の人しかいない……。


「あら、そういえば水無月の子供はどうしたの? いないようだけど……」

「人が多いところが苦手なので別室を借りました。そこで本でも読んでいるかと」

「そう、来てるのなら良いわ……それで、その子が刃ね」


 彼女が俺に視線を合わせ、名を呼んできた。

 あまりの不意打ちに変な声が出そうになったが、なんとか抑えて平常心を保つ。


「……九曜様、どうして俺の息子を知っているのでしょうか?」

「そんなの視たからよ? ずっと存在は知ってたわ。一目見たいとは思っていたけど、この子面白いわね」

「…………何してたんだよ刃」

「いや知らない、俺知らない……だからそんな目で見ないでくれ父さん」


 え、何? 

 神綺様の存在バレた? いやでも、前に逢魔さんに四季の気配があるって言われて以降神綺様は全力で隠れてくれてるからバレない筈。

 ……じゃあ、なんだ? 孤蝶か? え、それとも何? 依木の才能でも視られた? あれ、そういえば刃の依木の才能が発覚したのって、この人が視たからじゃ……。


「何もしてはいないわよ、だから責めないであげて頂戴? ただ暦の一族を気紛れで視てたら見つけただけなの。この子の才は凄いわよ? 偉いわね昴」

「…………そうですか」

「昴様、せっかく褒めてくれたのですからもう少し喜んだらどうですか?」

「――だからあんまり来たくなかったんだよ」


 小声で俺ぐらいにしか聞こえない声量でそう言った父さん。

 家族を大事にしている彼にとってそう言われて不機嫌になるのは分かる。

 ……俺もなんとなくあの如月の当主の人はなんか苦手だし、多分相性が悪いのだろう。それに、原作でもなんか怖かったし元から苦手意識自体はあったから。


「それよりだ九曜様、なんで今日は集めたんだ? 珍しく昴の参加も認めたしなんかあるんだろ?」

「そうね、今回は伝えたとおりに顔合わせ。せっかく同年代の子が揃って生まれたのだから交流会でもと思ったの……急でごめんなさいね」


 終始微笑み今回の顔合わせの事を伝える九曜。契約がなければ今回は来ることも無かったはずだが、その口ぶりだと俺が来ることも分かってた様な気がする。

 

「それより座りなさい? ずっと立ってるのも酷でしょう?」


 そう言われたので用意されている座布団に座る。

 これから何が話されるのだろうか……そう思いながらも俺は言葉を待つ事にした。


「そうね、せっかくの交流会だから。子供達だけ別室に行って貰おうかしら? 水無月の子も丁度いるのでしょう? 大人達は楽しく私とお話ししましょうね」


 その瞬間のことだった。

 部屋が変わったのだ。装飾が変わったって訳ではなく、部屋そのものが一気に変わり、居た場所が変化した。

 大人達が消え――次に目にした光景は、鬼のようなケモノが大量に俺達の前にいるというモノ。


「交流会ですし、楽しいのがいいでしょう? だからケモノを連れてきておいたの……死にはしないでしょうから頑張って倒してみなさい? それこそ力を合わせてね」


 そんな声が部屋に響き、始まる戦闘。

 状況を理解した俺はすぐさま霊力を解放して刀を構えた。

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