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第1話:転生先がハードモード

 刃に転生してから数日経ったある日のこと、俺は新技を習得した。

 これを修得するにあたってかなりの苦労があったがそれは割愛し、何を手に入れたかだけ言おうじゃないか。


「……刃が立ってる?」


 そう、俺が手に入れたのは二足歩行。

 まだぎこちないが、俺は移動手段を手に入れたのだ。

 いや……まぁ、歩くだけなんだけどさ、数日前の抱っこ地獄からは抜け出せるのでかなりの進歩と言えよう。

 ここ数日は本当に辛かった、詳しい年齢は覚えていないが、少なくとも二十歳手前ぐらいだったし、それが美人やイケメンに抱っこされて過ごすというのは割と苦痛で羞恥心に何度襲われたことか……。


「だぁー!」

「そんなに立てるのが嬉しいのかしら、目が輝いてるわ」

「生後七ヶ月で立ち上がるのってはやい……よな?」

「私達の子だもの多分天才なのよ」

「そうか、流石俺達の子……これならパパと呼んでくれるのも近いか?」


 そこイチャつくな?

 前世非リアの俺からするとその光景は目に毒すぎる。

 いや、子供の精神が割と大人というのを考慮しろというのは無理な話かも知れないが、急にイチャつくのは止めよう? 俺がいたたまれない。

 あと絶対パパとは呼ばねぇ、妥協して父さんぐらいで良いだろう。

 ふはははは、絶対お前の野望阻止してやるからなリア充(父)。


「凄い邪悪な思念を感じるんだが……」

「気のせいよ、この部屋には私達以外入れないでしょ?」

「……そうだな。それと凜そろそろ仕事に行ってくる――家の事は任せたぞ」

「任されたわ、気を付けてね」


 そこで別れる俺の父と母。

 きっと父である昴は今からケモノ狩りにでも行くんだろうと思いながらも俺は少しでも歩くのになれるために動き出す。

 目標は百メートル歩ける赤子。

 生後六ヶ月の赤ん坊がそこまで歩くのは、一種の怪異に見えるかもしれないが……体力をつけるためだし頑張ろう。


「じゃあ私もご飯作ってくるわね、すぐ戻るから待ってるのよ二人とも」

「あう」

「本当にすぐ喋れそうね……」


 返事をすればそう返ってきた。

 だがまだ俺からするとしたが成長してないのか喋ろうとしても喃語しか出せない。いい加減喋れるようになりたいが、喋れたら喋れたで気味悪いだろうからなんとも言えないけどさ。


(これある程度まで喋れないよなぁ)


 まぁ……それは置いて今世には色々な問題がある。

 その一つがこの世界が本当に【けもの唄】の世界なのかという事と、その場合に俺……つまりは刃が辿る未来についてだ。

 これは確定で起こるだろう近い未来なのだが、この家は百獣夜行という現象に襲撃される。それはかなり酷く、母親の凜はそこで瀕死になり、昴は復讐鬼にそして俺は攫われ弟の剣は唯一助かる的な感じだった……はず。

 それから数年後に物語が始まるのだが、今のがこの世界のプロローグでそれはもう数ページに渡って悲惨な光景が広がっていた。

 そこでケモノの脅威とか容姿とかが出てくるのだが、まぁそこはいいだろう。

 重要なのは家が襲撃されるという部分、そこから刃の闇堕ち街道が始まるのでそこさえなんとかすれば俺は平和に生きられる――といいなぁ。


(原作壊れる問題とかもあるし、下手に動けない……というか闇堕ちした後のイベントも多すぎてやばい……よな、まじで笑えねぇ)


 そんな事実に早速心が折れそうになったが、とりあえず俺には目標があるのだ。

 それはこの世界で平和に生きたいという単純で簡単なもの、でもそれは待っている運命的にとても難しく、なんならこの世界の作者にどんな道を辿っても刃は闇堕ちするとまで言われている……一般人メンタルである俺にこれからの展開とか耐えられる訳ないので最初のイベントは何としてでも回避したい。

 

「あうぁー」

 

 そんな事を考えている間に弟が目を覚ましたようだ。

 俺が傍に居ないことでぱちくりと目をさせたので、いつも様に隣に戻れば安心したようにまた眠り始める。

 そんな気楽な弟を見て、妙な愛らしさを感じてしまうのはこいつの未来を漫画で追っていたからだろうか? そんな、なんとも言えない感情に襲われながらも歩きすぎて疲れた俺は更に色々考えることにした。

 この世界には魔法や異能というものもあり、生き残るにはそれを習得するしかないのだ。まぁ術の系統が多すぎてどれを習得するか問題が出てくるが、原作通りなら俺と相性が良いのは氷と木であり何より俺は何かを降ろす才能に特化しているはずなのだ。


(確か、なんて語られてたっけ?)


 あ、思い出してきたぞ? 作中のキャラ曰く、どんなモノも降ろす事が出来て特に神仏に特化した依り代体質らしい。それと属性のせいで前の世界で刃は依木君の愛称で親しまれており、それで何をとち狂ったのか、公式が受注生産で注連縄を作った事件さえある。


(まぁ、その体質のせいで色々狙われるしなんなら最初の事件もそれのせいだし)


 散々俺について語ったが、次は弟についてだ。

 弟である剣は交霊体質らしく武器に宿る記憶と交信出来るとかなんとか、それで各地の武器やナニカが籠もった道具と話したり時には喧嘩したりして技術を手に入れ成長していくみたいな感じだった。

 とりあえずあれだ。

 術を使う為の霊力の修行方法って殆ど瞑想とかだったし、今からでも出来るだろうから弟の傍で修行を続けよう。

 目指すは平和な未来、そして闇堕ちを回避すること。 

 平和に生きるためにも少しでも今は出来る事をしよう。

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