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第12話:戦闘後の一幕

目の前で少女が堕ちていく。

 あいつの一撃を食らった少女が地面に倒れ、ほぼ同時に刃も倒れた。

 さっきの変化は異常だ。今までだったら使えなかったような術を操り、格上だろう少女を打ち破った。

 貼られていた結界が解除される。

 少女が倒れた事により元から脆くなっていたそれは完全に消え、周りにいた蝶が全て消える。

 

「すげぇな……こいつ」


 俺の中にぞくりと……期待が脈打った。

 この少年は英雄になる可能性があると、俺等暦の一族が求め続けたケモノを滅する化物になると。幼少期からのこの戦闘能力、術の理解度に広げられる解釈に、冷気を作り出して操る異常な特性。


「まだ、倒れない――死ねないの、一人はやだよ」


 まだ少女には意識があるのか、刃に手を伸ばしながら近付こうとする。

 どうしてかは分からないが、少女にとって刃は求めてやまないモノなのだろう。

 とりあえず俺は近付いて、トドメを刺そうとした。

 この少女は生かしておけない。生まれたばかりであろう筈であの能力は危険だからだ。俺相手に数分生き残る時点で、成長性もかなりあるだろうから。


「殺すのは待ってくれないかしら?」


 そんな時、鈴の音のような誰かの声が耳に届いた。

 俺と倒れる少女の前に現れるのは黒いセーラー服を着ている化物。

 見た目は有り得ないほどに整っているソレは、少女を眠らせた後で綺麗な笑顔を浮かべながら俺に言葉をかけてくる。


「せっかく創ったこれにはね利用価値はまだあるもの――だから殺すのはやめてくれるかしら?」

「やっぱりお前が関係あったか……神綺。で、今更でてきて何が目的だ?」

「今言った通りよ、その子を殺すのをやめて欲しいだけ、それ以上は機嫌がいいから無いわ」


 確かに初めて見るくらいに機嫌の良さそうな彼女。

 今まで関わったのを考えると明らかにおかしいその様子に不審が増すが、長く話して精神が壊されるのを考えるとあまり話せない。とりあえず聞きたい事だけを聞き、消えて貰うしかないのだろう。


「そもそもお前、今までどこに居た? ――あの少女の中から気配は感じたが、それにしてはアレは弱すぎるだろ?」

「あの子の中よ?」

「あの子って刃か? 確かにお前の気配が残ってたが、それにしては薄かっただろ」

「バレたら困るもの、薄めてたに決まってるじゃない。そうだ逢魔、これあげるから今回は帰ってくれないかしら?」


 そいつは何処からか刀を取り出して俺に渡してくる。

 それは俺等が今回求めていた四季であり、今回来た理由の物だ。

 

「このハリボテを持って帰れと?」

「血は入れたからうるさいのは騙せるわ」

「――おまえ、本当に何する気だ? おまえが一個人に執着するなんてありえない」

「そんなの運命の人がいるからよ? ――あの人は、私をちゃんと見てくれる唯一の人。生まれながらに私に耐性を持ってるずっと待ってた死に魅入られた大事な人」


 確かに刃はこいつに狙われてると思ったが、こんな事になってるとは思わなかった。こいつが他者を狙うということ自体初めてだったが、こんな風に気に入られてるとは思える訳がない。そもそも、耐性があるだと? 厄ネタ確定だろこれ。


「はぁ――分かった今回は帰る。いいもんも見れたしな、だけど貸し一つだ」

「えぇ、そうしてくれると嬉しいわ。それと言い訳するのを手伝って欲しいの。この子を彼のモノにするから」

「こいつを刃の式神にでもする気か? そもそも、素直に受け入れる訳が……」

「簡単よ? これは彼の血を吸ったもの、それを利用すれば契約ぐらい結べるわ」


 想定済みだったのか?

 いや、明らかに不機嫌そうな様子を見るに想定外だったのかもしれない。 


「……お前が嫉妬するなんてことあったんだな」

「するわ、だって彼が好きだもの。初めてなのこんなこと、恋って良いわね」

「こいつが本当に可哀想だ。お前なんかに好かれるなんてな」

「ふふ、殺すわよ」

「頼むからやめてくれ、お前が言うと洒落にならん」


 そこで会話は終わり、また秘密が増えた事実に頭を痛めながらも、俺は刃と少女を式神に運ばせ屋敷に向かう。

 どう言い訳しようか……そんな事を考えて俺は今日の光景を記憶に焼き付ける。

 英雄になれる可能性を秘めたあの少年の戦いを――。


「あぁ、これから忙しくなるな」


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