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願い

「お前達は、きっと己の愛する人、家族が死に瀕しても自分の利益を大切にするのだろうな。人間とはかくも卑しく見苦しい生き物か。だがそう言う私も人間だ。私も自分が可愛い、自分の大切にしている物が失われるのは辛い。だから何とか神の怒りを解いてもらおうとその方法を聞いた」

「か、神は何と…」

「どうすればお許しいただけるのでしょうか!」

「まあ今のお前達では許してもらう事など無理だろうな。だがあえて言うならこの状況を招いてしまったことを後悔し、壊してしまった物に心の底から謝罪しろ。私は緑の御方の命が少しでも長らえるよう、自分の出来る事を死に物狂いでやるだけ。お前達はそこで震えながら見ていればいい」


何かどこかの新興宗教の勧誘みたいな事を言ったような気がするが、今は突っ込んでいる暇もない。


さて、ここからは力業か。

大地の神は自分にもできると仰っていたが、これは人間が招いた結果だ。

多分人間である私にしか出来ない事だろう。


かなり上空から見渡せば、それは遠く地平線に届くほどの規模だった。

荒廃した大地、緑などろくに無い。

ここを短時間で元に戻せるだろうか……。


『さて、お手並み拝見だな』


気が付けば海の神が隣に並んでいる。

並んでいる?

よく見ればその背には大きな翼が有った。

それオプションですか?

カッコいいなぁ、今度私も付けてみようかな。

いや、いかんいかん、今はそれどころじゃ無かったんだった。


『それで、一体どうするつもりだ。この地を元に戻すつもりみたいだが、お前一人でやったところで間に合いはしないだろうし、例え神似者だとしても、この規模を一気に直すつもりだろう?きっとお前は命を落とす事になるぞ』

「そうかもしれません。でもやってみなければ分からないじゃないですか。それで緑の御方の許しが得られ、御方の命が救われればそれに越したことは有りません」


そう言い私はにっこりと笑う。


『なるほどな、あのドラゴンがお前の眷属になった気持ちがわかる気がする。(いや、リンデンさんは自発的になったわけじゃ無いんですけど)どうだお前、私の眷属にならぬか』


神の眷属……。

そうなればこの地をあっという間に元通りに出来るかもしれない。

しかしそれでは意味がないのだ。

神の意を借りたのであれば、人間の贖罪ではなくなってしまう。


「お申し出ありがとうございます。でも今は私が、人間である私がするべき事なのです。だからこれは私一人でやります!」

『その覚悟は見事だ。分った、この私がお前のする事を見届けよう』

「ありがとうございます。では!」


私は持てる力を全て開放する。

せっかくさっきハルちゃんに分けてもらった力も全て。

ごめんねハルちゃん、でもあなたの力は有り難く使わせてもらうからね。


私の記憶に、この地はあまり残ってはいない。

だから僅かな記憶を元に、想像しながらこの地を直さなければならない。

ごめんなさい大地の神様、緑の御方。

私の直したこの地がお気に召さなかったなら、元気になってから適当に直して下さい。


足元の割れた大地を力業で閉じる。

崩れた山を隆起させる。

転げ落ちた大岩をその頂上に戻す。

何もない大地に植物を芽吹かせる。


「エレオノーラ!バカな事はやめろ!!そんな事をしていると今度こそ命を失うぞ!!!」


下で兄様がそう叫んでいる。

えー、遠くて、兄様が何言っているかエレオノーラ聞こえなーい。

だって、これからは好きな事をして自由に生きろって言ったじゃない。

だから私は私のしたい事を思いっきりやっているんだもの。

今更止めないでよ。



どれぐらい経ったのだろう。

軽くトルディアぐらいの広さは終わった気がするけれど、まだまだ先が見えない。

ちょっと疲れたな。

でもまだまだ頑張れるよ!

空元気っぽいけど。


ここは元々の地形を知らないから、今この壊れた土地は私の想像力に掛かっている。

この深い亀裂を利用し、滔々と綺麗な水が流れる渓谷にしよう。

そしてその先のがれきの山は、高い山にするつもり。

シンボルツリー的な、この地に色合いを添えるような、高い高い山。

夏でも真っ白な雪を抱くような山がいい。

きっとその頂上に立てば、弧を描く水平線が眺められるだろうな。

その麓には季節により色を変える植物でいっぱいにしよう。

あぁ、楽しい、嬉しい。

たとえその出来栄えを目に出来ないとしても、今の私の中にはその風景が溢れている。



『お主は一体何をやっているのだ!』


振り返れば、そこにはリンデンさんとピーポーちゃん達が、あきれ顔でこちらを見ていた。

怒られた?怒っています?怒られちゃいました?


「えっと、話せば長いんですが、私が兄様と次の目的地に向かっていた時、バンシーさん達と偶然……説明は後でも良いですか?」

『もとよりそんな事を聞こうとは思っていない。お前は今、この壊れた地を自分一人の力で何とかしようとしているのだろうが、このバカ者が!!』


えーそんなに頭ごなしに怒らなくたっていいじゃない。


『なぜ我たちを呼ばぬ、なぜ私達の到着を待たぬのだ!我たちがこちらに向かっている事はハルに聞いたであろう!』

「リンデンさん達がこちらに向かっている事は、ちゃんとハルちゃんに聞きました!でもこれは人間の問題で早くしないと緑の御方が死んじゃうんです!」

『緑の君が?まあそれも後で聞くが、とにかくお主一人で成し遂げようとしても無理な事。人間がしなければならない事だと言う事も聞いた。だが我らはお前の眷属だ。眷属が主に手を貸す事は当たり前の事、誰も文句を言わぬだろうて。(言わせぬがな)』

「だけど、だけどリンデンさん達はドラゴンで、これを引き起こしたのは人間で………」

『あぁ、もういい。お主はお主で勝手にやっていろ。我らも勝手にやらせてもらうわ』


あぁぁ……、リンデンさんやる気満々だわ。

そっか、リンデンさん達が勝手にやるなら、誰からも何も言われないか……。


「ありがとうございます」


そう言い軽く頭を下げた後、私も作業に戻る事にした。


ふと気が付けば、下の方でもいろいろな道具を使い、その地を直そうとしている人たちが忙しそうに動き回っていた。


ごめんなさい緑の御方。

ここの人達もきっと後悔し、何とかこの自然を戻そうと必死になっているはずです。

だから、もう少し頑張って。

あなたはこの地に必要な方なんです。

この空、浮かぶ雲、流れに遊ぶ生き物、全ての生物にとってあなたは必要な方なのです。

だからお願いです。

私達を見捨てないで下さい。


========



何か、いつの間にか97話目……もうすぐ100話だね…。

去年の終わりから始めてもうすぐゴールデンウイークか。

100話ちょうどで終わるとカッコいいかな?

終わるかなぁ、終わらないだろうなぁぁぁ。


そう言えば文中”神の怒り”と打とうとしたら”蟹の怒り”になってた…。

蟹かぁ、そう言えば最近ご無沙汰してるな。

蟹の怒り、泡ブクブク吹くんだろうな……。

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