表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/109

儚い光

本日二度目の投稿です。

はい、前日さぼりました、ごめんなさい。

いつの間にエレオノーラ到着したのよ!と思った方、前話からお入りください。


===========



「ミシェル!?ミシェルに会ったんですか?ミシェルは元気でしたか?」

「…はい」


実体の有ったミシェルと別れた時は、一応元気そうだったし、今も元気そうに見えます。

あなたの首根っこにしがみ付いて、”ロザリー、ロザリー!”と感激してますから。


「どうぞこちらに。ミシェルの事を知ったら、きっと旦那様達もお喜びになります」


ああぁぁぁ、そうだよ、そうだったよ。

私はミシェルがバンウルフに戻り、懐かしい人達に会って、ちゃんとお別れが出来たら喜ぶとんじゃないかなと思い、ここまで引っ張って来たけれど、ここからが大変じゃないの。

私の責任、重大だよ!?


「旦那様や奥様は、ミシェルの事をとても心配していたんです。でも良かった。少しでもミシェルの事をお聞きになれば、きっとお喜びになります」


その言葉を聞くと、ズ~ンと肩が重くなる…。

て、ミシェルかい!

私の肩に腕を回し、嬉しそうにミシェルが言う。


『ありがとうエレオノーラ、私やっぱりここに戻れてとても嬉しいよ』

『そう思ってもらえるなら、私もミシェルをここに連れて来た甲斐があった』

『奥様達元気かなぁ?早く会いたいよ。ほらエレオノーラ、応接室はこっちだよ。早く早く』


ミシェルは燥いで、そう言いながら私の手を引くけれど、この屋敷に来た事の無い私はロザリーさんに従わなきゃおかしいから。

ちょっと落ち着きなさいって。



通された部屋は、質素だけどとても趣味のいい部屋で、落ち着くところだった。

窓からは、あの平屋が見えている。

何の建物だろう?納屋にしてはしっかりした作りだし、どちらかと言えば住居のようにも見える。

やがてその扉が開き、何人もの子供が飛び出してくる。

その様子は、町の学校のようにも思えた。


「ようこそいらっしゃいました」


その言葉にハッと振り返る。

そこにはいつの間にか、この屋敷の主が来ていたようだ。


「あれは我が家では学び舎と呼んでいるのですよ。町の貧しい子供を預かり、学問を教えています。その隣は数人では有りますが、親のいない子供を引き取り面倒を見ています。もちろん学べる年の子供はあの学び舎で勉強をしているんです」

「…本当に?」

「ええ」


凄い!この人たちは何て言う事をやっているんだろう!

大抵の孤児は、教会に引き取られれば御の字。

殆どの身寄りのない子供はスラムで育つか、物乞いをしていると聞いた。


「本当はもっと沢山の子供を引き取ってあげたいのですが、今の私達はこれが精いっぱいなんです。情けないでしょう?」

「そんな事ありません!凄い事です!」


こんなこと思いつかなかったよ。

皆はそんな現実から目を逸らしているのに、この人達はそれに目を背けず、何とかしようと努力している。

何ていう人たちなんだ!


「頑張ってください!私も協力できる事でしたら何でもしますから!」

「ありがとう、でもここは私達の領地。これは私達がやるべき事なのです。それよりミシェルの事を伝えに来てくれたのでしょう?もしよろしければ、あの子の事を早く聞かせていただけませんか?」

「あっ、はい、そうですね」


椅子に戻った私を急かすよに、期待を込めた目で見つめる二人。

ごめんなさい、きっと私はあなたたちを悲しませてしまう。


「ミシェルとは、サバストの宿で会いました。その日は大雨で、私達はその宿に二泊したんです。ミシェルはとても人懐っこくて、優しくて、私達は宿にいる間、いろいろな話をしました」

「そう、あの子は元気だった?」

「はい、とても元気そうでした。でもその時、彼女の病気の事も話してくれました。ミシェルはとても辛いはずなのに、そんな事は気にした様子も無く、いつも楽しそうに笑っていましたよ」

「あの子は、病気の事も話したのね……」

「はい奥様。でも彼女は悲しんでいませんでした。自分がいかに幸せだったか、男爵様達や皆さんにとても良くしてもらったと、嬉しそうに話をしていましたよ」

「あの子は……私達の事を恨んでなかった?結果的には私はあの子を見捨てたようなものですから……」

「何故です?ミシェルは自分の気持ちや我儘を聞いてくれ、それでも送り出してくれた人達にとても感謝していました。私達が一緒にいたのはその二日間でしたが、私はとても楽しかったですよ。三日目の朝、私はミシェルを起こさないようにそっと出立したので、ミシェルとはそれきりでしたが」

「そうなんですか。ではミシェルが今どこにいるかは分かりませんか?いつかはここに帰って来るとは言っていませんでしたか?」


生きているミシェルとはそれが最後だったけれど、今はがっつり一緒にいますけどね。

私の隣の椅子に。


「えっと、実は……」

『ねぇエレオノーラ、それ話さなければいけない?このまま黙っていちゃダメかなぁ』

『えっ……まあ、それがミシェルの望みなら…』


そうだよね、誰だって大好きな人を悲しませたくはないよね。

だけど私としては、ちゃんと二人に話しておきたい、いつまでもミシェルの事を思い続けるのもいいけれど、それが彼達の重荷になるなら、今ここで真実を注げた方が良いような気がするんだ。

でも挙動不審な私を見て、きっと二人は何かを察したのだろう。


「私達は、医者からあの子の余命を聞いていました。だからどうか、もしそれ以外にあの子の事を知っているのなら、全てを話して下さい」


だそうです。

ミシェル、この人たちの為にも、私は話すよ。


「実は、ミシェルは私が旅立った日、サバストの劇場で起こった火災に巻き込まれ命を落としました………」


思わず絶句する二人だけれど、覚悟をしていたのか、すぐにまた話に戻った。


「そうですか……、やはりミシェルはもうこの世にはいないのですね。分っていた事とはいえ……。やはり…あの子を旅にやるべきでは無かった」

「いえ、あなた方がなさった事は正しい。確かにそれを反対する人はいるでしょう。でももし私がミシェルの立場だったら、あなた方の事をとても誇りに思い、感謝します。それに彼女は、事故で亡くなったのです。病気に負けたわけではありません。どうか彼女を誉めてあげて下さい」


ほらミシェル、この人たちはこんなにあなたの事を思い、愛してくれている。

良かったねミシェル。

そんな事分かってたよ、と言うミシェルの目からは、とても綺麗な涙があふれていた。


「今、ミシェルは一緒に部屋に泊まった私と間違われ、我が家の墓地で安らかに眠っています」

『あそこにいるのは、私の抜け殻だけどね』

『だからそれは建前で、この人達の為にはこう言う方が良いの』

『分かっているって、ありがとうエレオノーラ』


「もしよろしければ、いつか彼女に会いに来てやって下さい」

「ありがとうございます。妻の体の事も有りますので、少し先になってしまうと思いますが、ぜひ参らせていただきます」


妻の体?一体どうしたんだろう?

見た限りでは健康そうに見えるけれど…。


「お恥ずかしい話ですが、この年になりようやく子を授かりまして………」

『ミシェル!赤ちゃんだって!!』

『うっ、うっそ~。やったぁ、良かった、良かったね奥様!!』


うん、諦めていた赤ちゃんを授かったんだもの。

本当に良かった。


「私達は、きっとこの子はミシェルの生まれ変わりだと思っていたのです」

「それは有りませんね」


だってミシェル、まだここにいるもの。


「そうでしょうか………」

「そんなにがっかりしないで下さい。いつかはミシェルとも会えますよ。それにその子、男の子ですし」

「えっ?どうしてそんな事が……」


あー、だって見えちゃったから、小さなあれが………。


「感、感ですよ。私けっこう感がいいものですから」

「そうですか…、でもこうしてミシェルの事も聞けました。いずれ生まれ変わって来るとしても、私達は一生、愛するミシェルの事は忘れません」


そう言い、ぽろぽろと涙を流しながら微笑んでいる奥様。

見ればミシェルも泣いている。


『奥様、ごめんなさい。ありがとう、私も大好き。そんなに私の為に泣かないで、お腹の子に障っちゃうから』


奥様に抱き着き、何とか奥様を慰めようとしてるけど、それでもミシェルはまだ泣いている。

何とかミシェルを二人と会わせてやりたい。

でも私は神様じゃないからなぁ。

何とか頑張ればできるかなぁ?

そう思い頑張ってみる事にした。

どうやれば良いのか分からないけれど、とにかく両手を組み、ただ願うだけ。


”お願い、少しの間だけでもいいから、ミシェルの姿を二人に見せて下さい”


一心不乱に願い続け、驚く声に顔を上げれば、そこには光のように儚いミシェルの姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ