表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/109

洗いざらい吐け

「実は私が知る彼女は、幼少の頃の一度だけの出会いと、私が国に戻ってからの数回だけなのだ。だが私がこの国を不在にしている間も、彼女にはいろいろな事が有り、いろいろな人との出会いが有ったのだな。それは当然の出来事なのに、どうやら私は、彼女の事を自分の都合のいい幻想を抱いていたらしい。現に今の彼女には、あなたの方が近しいのが現実だ」

「まあそれはそうでしょうけど、でも彼女自身も先日会ったあなたの事を忘れず、ずっと気に掛けていたのは確かですよ(主にマイナス方向にだけれど)」

「私の事を?彼女は何と……いや、今の私は彼女には不釣り合いだ。婚約も流れてしまった…。しかしいま一度、彼女と真摯に向かい合い、初めからやり直せたらと、私は甘い考えを持っていたのですよ。全く身の程知らずだったと思い知らされましたが……」


なるほどね。

考える事は二人とも同じ方向を向いたようだが、どうやらそれは平行に並んでしまい、交わりそうもない。

さて、どうしたものだろう。

暫く事の成り行きを見た方が良いのだろうか。


ふとキャンプファイヤーの方を見れば、エルちゃんがそこで美味しそうに肉を頬張っている。

最近ではエルちゃんは良く物を食べるようになった。

初めて会った頃からすると、太らないかと心配するほどだ。

でもあの頃に比べれば、最近ようやく女らしさが出てきて、とても綺麗でつい頬が緩んでしまう。


「彼女は隣の彼とずいぶん仲がいいのですね」


あぁ、エレちゃんの隣で絡んでいるジョンの事ですね。

大した事じゃ有りませんよ。

最初はジョンもエレちゃんに言い寄っていたみたいですが、今はただのじゃれ合い。

あいつの立ち位置は、妹を大好きなお兄ちゃんってとこですね。

でも殿下、それって嫉妬?嫉妬ですかぁ?


「彼はエレちゃんの命の恩人だそうですよ。エレちゃんも助けられてから暫くはあいつらの世話になったらしい。実は私の隊のほとんどが、あいつの部下なんです。だから我が隊の結束は固いし、エレちゃん自体も気を許してしまうんでしょうね」

「彼女は、あの火災以外にも命の危機が有ったのですか!」


あぁ~~私って何て迂闊なの。


「た、大した事じゃ有りませんよ」

「しかし命を助けられたと言う事は、死にかけたと言う事だ!一体彼女に何が…」


あ~う~え~。

………ここは責任転嫁をしてしまおう。


「エレちゃん、ちょっとおいでー!」

「は~い」


エレちゃん何の疑いも無く、トコトコとこちらに走ってきます。

その姿のなんと可愛いらしい事。


「エレオノーラ、君はあの火災以外にも危ない目に有ったのか?」

「えっ?あぁ、まあ色々とありましたが、大したことじゃぁ有りませんよ」

「良ければ聞かせてもらえないか?」

「そんなに楽しい話じゃありませんよ。まぁ聞きたいのであればお話しますが。えっと、命の危険があったかは分かりませんが、3回ほど盗賊さんにお会いしましたね(その内一回はジョンさん達にですけど、これは秘密です)」

「そんな……」


殿下、そんな事で唖然としていると、後まで持ちませんよ。


「一回目の人達は話を聞いてくれて、お小遣いまで貰って送り出してもらいました。三回目はジョンさん達に助けてもらいましたね」

「二回目は!?」

「な・い・しょ」


いや~ん、エルちゃんが可愛い~~。


「とにかく何事も無かったのだな、良かった……」

「もういいんですか?それならば私は失礼して、再びお肉を……」

「ちょっと待て!まだ他にも有ったのか!!」

「だから大した事じゃ有りませんて」


エレちゃんがそう言っても、納得してくれない殿下に、ほぼ洗いざらい白状させられたエレちゃんです。


「私が孤児だと勘違いしたのか、ジョンさんが一生面倒見てやるって言ったのですが、迷惑を掛けられないと思って夜中に逃げ出したら、谷に落ちて溺れました」

「溺れた!?」

「はい、でもジョンさんに助けてもらったので結果オーライです」


殿下はエレちゃんに伸ばしかけた両手を引き、ぐっと握りしめる。

その手が小刻みに震えているのが見とれた。

何か殿下に同情するなぁ、気持ちは良く分かりますよ。


「あとは…スタンピードにも会いましたね。あの時は今回ほど大規模じゃなかったですけど、私がこんな事出来るって知らなかったから、ジョンさん達が全部やっつけてくれました」

「結局ジョンか……エレオノーラが危険な目に会っていても、私は何も知らず城で胡坐をかいていた……、その間、私では無くジョンがあなたを……ハッハハハ……」


殿下がまた自暴自棄になりそうです。

お願い、戻って来て~~。


「どうしてお笑いになるのですか?私の失敗はそんなに面白いのですか?」

「い、いや、そんな事は無い」


エルちゃん、ナイスフォロー。


「もしご希望ならば、もっとお話ししますよ?」

「もっとあるのか!!??」


まあ惚れた相手が、かなり危険にさらされたならショックだろうね。

その後も延々と質問攻めにあい、殿下の神経は細糸のように擦り減ったみたいだ。

私も知らなかった情報まで飛び出したのはビックリしたけど、あんたよく生きて来れたねとしみじみ思いましたよ。

でもエレちゃん、その話の中にサバトスの火事の話出てこなかったんですけど、大丈夫ですかね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ