親として
「さて陛下、先日我が家にアレクシス様がいらっしゃいました」
「そ、そうか。初耳だな。一体どうして……」
「何でも我が家に養子に入りたいと仰っていましたが、それがどういう事かお分かりですか?」
「養子に……一体なぜそんな事を…」
自分で考えないで、何でも人に聞くんじゃない!
と母様が一括。
正論ですね。
「エ、エレオノーラ嬢の育った家で暮らしたいとか…」
「まあ、それは本心から仰っていますの?」
「いや、いや違うとも、ちょ、ちょっと待ってもらえぬか?少々頭を整理したい」
まあ当然でしょう。
母様のブリザードをまともに食らっては、そう頭は働きませんものね。
急な状況の変化に対応できない、良く分かります。
……………。
「自分の持つ全ての物をそなたらに差し出すと…」
「ええ、いずれ自分が受けるだろう爵位まで」
「そうか、あれはそれほど自分の責任を感じているのか……」
「それだけですか?」
「まだ何か有るのか?」
「バカですかあなたは!!!」
それを聞いた護衛の騎士が、いきなり剣を抜き母様に襲い掛かる。
多分威嚇の為だったと思うけどね。
しかし陛下が制止する前に、その剣は粉々に砕け散り、騎士は壁に叩き付けられました。
それも同時に。
「自分の子供が親から離れ、何もかも贖罪の為に捨て去り、その身には何も残さない。それが何を意味するのかを!その意味に気が付かず、あなたはそれでも親ですか!」
母様ついでに、陛下まで壁に吹っ飛ばしちゃいました。
まあ出血はしてないようだから大丈夫でしょう。
「何をする!事と次第によっては!」
「ほ~~私に何かなさるつもりですか?その前にアレクシス様が何をお考えか、よーく考えなさい。それが分からないようならば、あなたは大切な物を一つ失う事になりますよ」
「何を………まっ、まさかアレクシスは!」
「ええ、私が思うに、何もかも私達に渡した後、直接、謝罪に向かうつもりだと思います」
「何と早まった事を……許さん!そんな事は断じて許さんぞ!誰かすぐここにアレクシスを呼べ………」
再び陛下が宙を飛びます。
さっき母様が、何でも人任せにするなと言ったでしょう?
学習しない人ですね。
「血迷う前に、よーくお考えなさい。どうしてアレクシス様がそういう行動に出たかを。そしてその原因、これからどうすれば良いかを」
「ひ、ひ~~~!」
母様、その陛下のお腹に乗せた足、カッコいいけれど、どうか全体重をかけるのは止めてあげて。
「親ならその懸念もしておくべきだったわよねぇ。国?政治?それを大切にするのも結構。でも家族一人を大切にせず、腫れ物に触るように離れたところから傍観するなんて、そんな男、結婚する事自体が間違っているわ!!」
ぐりぐりぐりぐり。
「ひ~~~!!!も、申し訳ない~!だ、だが、あぁれほど傷付き、気落ちしているアレクシスに、どう接したらいいのか分からなかったんですぅ~~~~!」
まあそういう時も有るよね。
「ジャクリーン、そろそろ他の者も飽きてしまうだろうから、次に移ろうか?」
「そうね、エルネスティ」
父様の言葉で、母様の顔がマリア様のようになりました。
父様最強。
母様達はさっさと席に戻り、国王が席に着くのを待ちます。
やがて全員が揃ったところで、またまた話を再開しました。
「とにかく私共は、アレクシス様の事、ひいてはこの国の事が心配でなりませんの」
「は?」
「ですので何とか早く、エレオノーラの事に見切りをつけ、彼に立ち直っていただきたいのです」
「わしたちもそれを願っている。しかしあれは未だにエレオノーラ嬢の事を忘れられず、あなたのおっしゃったのが本当であれば、後を追おうとまでに思い詰めている様子。一体どうすればいいのか……家族や参謀達と相談をしなければ何とも……」
「はあぁぁーー!?まだあなたは人を当てにするのですか!いい加減自分の頭で考えたらいかがかしら!!!」
ひいぃぃ~~。
「それにアレクシス様は、未だにエレオノーラの事を婚約者と言っている様子。
そんな事をしているようでは、いつまでも立ち直る事も出来ず、こちらとしても大変遺憾です。もうそんな事を、いえ、正式にエレオノーラとの婚約を破棄していただき、今後一切それを言う事はやめてほしいのです」
「もちろんだ。アレクシスにはそれを口にする事を禁じよう」
「婚約の件も無かった事にすると、それでよろしいですね?」
「あぁ、当然の事だ」
「ならば、疑う訳ではありませんが、それらを書面に認めていただけますか?」
「そ、そうだな」
そして陛下は、持って来させた紙に一連の事を書きしるし、最後にしっかりと王印を押しました。
やった!これで私は晴れて自由よ!!
「それで、ちょうどいいと言うのも申し訳ないが、こちらからの罪滅ぼしとして受けっとってもらいたい物がある」
「要りません」
母様の即答で困った陛下ですが、それでも何とか受け取ってもらおうと、食らいつきます。
「そう言わずに、そう、見舞金としてでも受け取ってもらえないか?」
「必要有りません。今まで私の正体がわからぬよう、自分自身にも封印を掛け、つつましく暮らしていましたが、もうその必要が無くなり、封を解きましたから」
これから何も我慢する必要も無く、自由に行動できますもの。
こんな我が家に、お金も爵位も必要だと思いまして?
その母様の言葉に、陛下が青くなっています。
「分かっていただけましたか?」
「あぁ……いや、はい!」
「それは結構。では次の案件に移りましょうか」
「ま、まだ何か有るのか?」
「嫌ですわ。これからが本番ですのに」
そう言い、母様がにっこり笑いました。




