すいませんでした
最近兄様達はとても忙しそうです。
お仕事がとても過酷なんですね。
私がやらかしたせいも有ると周りの人達は言いますが、元々忙しい人たちでしたから、一概に私のせいとは言えませんよね。
しかし、忙しいと言う事は、かまってもらえないと言う事なのです。
私も仕事をしているとはいえ、大した事ではないし、寂しいです。
なので今日は実家に遊びに行きましょう。
「ただいま~」
………………。
あれ、誰もいないのかな?
まあ父様はお仕事が有るし、母様も買い物に出ているのかもしれないから。
この間のドロップ品で借金は完済したと聞いてたけど、家の中は相変わらずそっけない様子で何も変わっていない。
それが我が家---という感じで安心します。
ガチャリ。
玄関の扉が開き、荷物を抱えた母様が帰ってきました。
「あらエレオノーラ帰っていたの?ちょうど良かったわ」
何やら悪い予感がまたします。
こういう時って外した事が無いんですよね……。
荷物を置いた母様が、美味しいお茶を入れてくれ、話を再開します。
「そろそろ計画を実行するわよ」
「計画?何かありましたっけ?」
「ほら、イカルスの所で、偉そうな人たちと色々と話した事あったじゃない?」
「あぁ、実は私が死んでなくて、ディア・アレルヤとかいう奴だったと言うのと、母様と私の封印を解いたという奴ですよね。他に何か有りましたっけ?」
最近平和で楽しかったので、とんと忘れてしまいました。
「このまま放置すれば、実はあなたは生きていたと知れ渡って、あなたの立場が悪くなりいずれ王家の一員にされてしまうって言うあれよ」
「あ~あ確かにそんな話もありましたね……」
そう言いながら、じっと遠くを見つめます。
嫌な事は後に持って行きたいエレオノーラです。
「母様は、いずれそうなると思いますか?」
「ええ、このままだと十中八九なるわね」
「気が合いますね…私もそんな気がします……」
「だからこそ先手必勝。こちらから動いた方が良いのよ」
「なるほど、で何か手立ては………」
「あなたって、ほんと嫌な事は右から左に抜けてしまうのね」
あの時説明したでしょうと言いながらも、もう一度母様の立てた作戦を話してくれました。
「まずあなたの生死を一切伝えず、アレクシス様の現状から突っつくのよ。このままでは不憫で仕方ないと。私達がいかにアレクシス様の事を心配しており、このままでは王家の為にもならないとね」
「実際は?」
「あんなのどうでもいい。死のうが生きようが、勝手にするといいわ」
「酷いですねぇ」
で、今に至ります。
私は謁見の間に入りはしましたが、入り口の傍、ゴージャスなカーテンに隠れように立たずんでいます。
母様に少々細工をされ、今は顔を隠すようにヴェールをかぶって。
そしてイカルス兄様は、私を守るように傍にいてくれています。
「(コソッ)うまく行きますかね?」
「(コソッ)いかなかったら力でねじ伏せてやれ」
了解しました、副司令官殿!
「ご無沙汰しております国王陛下」
「うむ、ガルディア男爵殿も健在…の様で何より…」
「お気遣い恐れ入ります」
「今日そなたが来た用は、おおかた察しは付いておる…」
「ありがとうございます。その前に私の妻をご紹介してよろしいでしょうか。ここに控えておりますのが、妻のジャクリーン・ガルディアでございます。いえ以前お会いした事は有りましたね」
「ジャクリーン…?」
礼を解いた母様が、陛下を見つめ、ニコリとほほ笑んだ。
「そなたとはどこかで………」
「はい、お久しぶりですヘンドリック陛下」
「……まっ、まさか!そなたエクステット侯爵家のジャクリーンか!」
「はい」
「しかしそなたは病のため屋敷の奥深くで臥せっていると聞いたが」
「とんでもございません。私はもう二十年以上前に、このエルネスティーの下に嫁ぎ、こうして幸せに暮らしております」
「つ、つまり…アレクシスの婚約者であったエレオノーラ嬢もそなたの子供だったと……それならそうと、なぜ早く言わぬのだ!」
「早く言ったならばどうなると?さっさと私の実家と話を付けて、娘を囲い込もうとする。大方そんなところでございましょう?」
冷たい空気が、あたり一面に張り詰める。
母様、怖いです。
魔王降臨ですか!?
「大体にして、いたいけな娘をいきなり権力で屈服させ、知らぬ相手との結婚を強いるなど、これだから貴族って!!私はそんな事にも嫌気がさし、家を出たのです!」
「分かった!分かったから少し落ち着いてくれ。ガルディア殿、どうかジャクリーン様を何とか……」
辺りがビリビリと音を立て、ポルターガイストがあちらこちらで発生しています。
でも陛下が母様を様付け……魔王認定ですね。
「いえ、私も今回の件は少々腹を据えかねていますので」
母様を止めもせず、そう言い笑った父様は、さながら魔獣使いに見えました。
「いえ、もう過ぎた事は申しません。今回はこの国及び、娘の婚約者のアレクシス様についてご相談に参りました」
「う、うむ。何なりと……いや、ここでは何だ。席を移そう」
私は兄様にエスコートされ歩きます。
陛下は母様の後に黙って付いて行く私を、気にはなっていたようですが、何も言わず容認していました。
で、通されたのは、賓客室でした。
凄いですねぇ、あたり一面ピカピカの金ぴかです。
「この度は、私の愚息が勝手に突っ走り、結果エレオノーラ嬢があんな事となり、誠に申し訳なかった」
母様が話し出す前に、いきなり陛下に頭を下げられました。
一体どうした国王陛下。
「責任をアレクシス様一人に負わせる気ですか」
「い、いや、それを止めなかった私達にも責任は有る」
「私達…達…まだ人を巻き込む………はっきりと認めたらどうですか?」
「申し訳ない。アレクシスを諫めなかった国王である私の責任だ!本当に申し訳なかった!!」
初めからごめんなさいと言えばいいものを………。
そうつぶやいた母様、少しは気分が晴れましたか?




