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やっておしまいなさい!

母様は父様にもたれ、さながらくつろぐ女王様。

その後ろで父様は母様をしっかりと抱きかかえ、うっとりと母様を見つめています。

その強い風をも感じさせず、悠々と。

何ですかお二人は、父様まで化け物ですか?


「やだなぁエレオノーラ。私がジャクリーンを落とす訳無いだろう?」


どうすればそんな涼しい顔をしていられるんですか!?

こちとら必死にドラゴンさんの背にしがみ付入れいるのに。

取りあえずこのドラゴンさんは、私達を落とさぬよう手加減をしていてくれているみたいですけど。


”もう少し急ぐか?”


いえ、お心遣いありがとうございます、どうかこのままで。

兄様達も父様ほどではないけれど、やはり難なくその背に座り、髪をなびかせています。

兄様達、とっても素敵…やはり私の周りって、イケメン指数が高めです。

でも、でもですね、私は女で、それも最近まで筋肉も付かずガリガリだったんですよ。

非力なんですよ。

私も母様みたいのが良いです!

しかし私の願いも空しく、兄様は眼下のその風景を楽しんでいる様子。

お願い、私を見て!と思ったら突然の突風が………。

私はその風に攫われ、ふっとその手は背を離れ、体が浮き上がり持って行かれそうになります。

その私の手を兄様達がつかみ、にっこり笑い、私にこう言いました。


「エレオノーラ、飛べ」


あぁー、そうでした、私って飛べるんでしたよね。


「自力で飛んだ方が危なくありませんものね」


そう言い、私は自由飛行を始めます。

こんな時、羽根が有ると、かっこいいんだけどな。


「目立つ事はやめておけ」


いえ、既にみんな揃って、十分目立っていると思います。

私はすっと前に出て、ドラゴンさんと並走します。


「ドラゴンさん、改めてありがとうございます。今更ですが、ドラゴンさんのお名前を教えていただけませんか?」

”名など無いな。我らは仲間同士、思考で会話するから、あれ、それ、で分かってしまうからな、名など必要ない”

「なるほど、でも私たち人間と話をする時は、やっぱり不便ですよ」

”人間と話など通じぬよ、現に我とお前は思念でつながっている”


それはそうかもしれない、でも私が家族にドラゴンさんの事を話す時は、このドラゴン、あのドラゴン、と言ってもどのドラゴン?になってしまうだろうし。

やっぱりお名前が欲しいなぁ。

名前かぁ、もし私が付けるとしたら…とても綺麗なペールブルーの体から連想するのは、冷たい冬のキンッと張りつめた空の色。

他は何だろう。

堂々としたこの体、見事な二本の角。

ふと目に入ったのは、瑞々しい葉を思わせる綺麗なグリーンの目だった。


「ドラゴンさんの目ってとても綺麗な色なんですね」

”そうか?そう珍しいものでは無いと思うのだがな”

「いえいえ、うちの裏にある大きくて立派なリンデンを思い出させます…そうかリンデン…うん、いいわね。ドラゴンさん、今日からあなたの名前はリンデンさんです!」


そう言いビシッと指をさした。


”なっ、何を勝手な事をやっているのだ!”

「えー嫌ですか?いい名前だと思うんだけどな」

”嫌ではない、だが名を持つと言う事は主を持つに値するのだ。だがリンデンか、その響きは心地よい。まあ良いだろう。人間の命はあっという間に尽きる。そんな儚い間、主を持つのもまた一興だ”

「喜んでいただけたなら、私も付けた甲斐が有ります」


てへへへ。


後日その事を家族に話したら、またまたみんなにあきれられて、母様からは小突かれました。

だって、ドラゴンさんを部下にするなんて、そんな大変な事だなんて知らなかったんだもの、怒るなら最初から教えておいて下さいよ。


まあ話は戻りますが、私達はさほど時間もかからず、ベルディスク砦に到着しました。

突然降り立ったリンデンさんに、砦の人は慌てふためいております。

そりゃそうですよね、前門のトラ、後門の狼ってところでしょうから。

前方にスタンピード、後方にドラゴンで八方塞がりの状態、こりゃあ絶望もしますね。

しかし降り立ったドラゴンから兄様が降り立った。

その途端、絶望が勝利の確信に変わったようで、騎士様一同の顔が笑顔に変わりました。


「さすがガルディア様です。この魔物の殲滅をドラゴンに依頼なさるとは!」

「いや、依頼したのはあのご婦人達にだ…」


いや~ん兄様ったら、騎士様達の注目を集めて恥ずかしいです。

母様、期待に沿えるよう頑張ってくださいね!


取り急ぎ結界まで連れてこられた母様一行です。

見えないガラスの向こうで魔物の群れは興奮し、体当たりをしたり、前の魔物を踏みつけ、八つ当たりをし、とてもカオスな状態で、見ていて胸糞悪くなりそうです。

目に見えぬそれを遮る物も、ギシギシと音を立て、今にもはじけ砕け散るような気がします。

そのパニックの中には超大型の魔物や、ゴブリンやオークのような蛮族と呼ばれる魔物までいます。

こんなものが結界を超え、町をめがけて流れ出せば大惨事になります。

母様、本当に頑張ってくださいね!


「さあ、エレオノーラの能力を測るのにいい機会だわ。とにかく遠慮しなくていい機会なんてそうないのだから、どんどんやっちゃいなさい」

「えっ!?私ですか?」

「当たり前です。私はエルネスティの前でそんなはしたない事など出来ないんですもの。頼んだわよエレオノーラ」


え~、私、魔物を始末した事なんて無いですし、やったとしてもせいぜい罠に掛かったウサギやイノシシを捌いて、肉にしたり、毛皮をなめしたり、せいぜいそのぐらいですよ。

そんな残酷なことなどできません。


「さあ、あそこにいるビッグホーンバッファロー達は大量の丸太です。やっておしまいなさい!」

「はい!母様!!」


スコーン、バキ!、グシャ。

丸太をナタで割るイメージをします。

多少イメージと違った音がしましたが、小さい事は気にしない事にしましょう。


「さあ、あそこにたむろしているのは、大量のお肉です!料理してやりなさい!」

「はい!母様!!」


沢山のお肉、美味しいお肉、食べ放題ですね。

そう思って、大量の熱湯で湯通しです。

頑張ります!


「あそこに蚊柱の様に飛んでいるスピアビーは蜂です。美味しいはちみつを搾り取ってあげなさい!」

「はい!母様!!」


それを包み込むようにきついつむじ風を作り、ギューッと絞ります。

気が付けば……………あっという間でしたね……。

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