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生贄

変です、おかしいです。

家族の作戦会議が、なぜこんな首脳会談もどきになっているのでしょうか。

どうやら母様たちは内々でやるつもりだったらしいのですが、イカルス兄様が何故かシュカルフ様を引っ張り出して、シュカルフ様がお友達のルンデン伯爵様を呼んで、それからシルベスタ兄様が声を掛けたシャインブルクさんを連れてきちゃって、その流れで、隊長もここにいて………。

つまりこの場には、それぞれの参謀やら秘書さんやらで、ざっと20人近い人が会しています。

なお、シャインブルクさんが来る時に一人で出してもらえなかったらしく、参謀さん以外に護衛の騎士さん10名を引き連れて来る事になっちゃいました。


その上、シュカルフ様が声を掛けた、お隣の領主であるエドガー・ルンデンさんも、参謀さんと秘書さん、それと護衛10人を引き連れて駆け付けたようです。


「酷いですね、それなら私も近隣の知り合いを連れて来たのに」


いやシャインブルクさん、双方そんな事をやっていると、とてつもない規模になるから、もう止めましょ?

一番迷惑を被るのは私です。

まあ、全ての発端は私みたいだから、やれと言われれば運びますけど。


それから当然シュカルフ様も、同等の騎士を傍に配置する流れになったらしいです。

取りあえずそれぞれの首脳を護衛する形で、この部屋に残った騎士さん以外は、近くの広間で交流を深めているそうです。(話し合いかな?近況報告かな?宴会かな?)

でもこの場に、なぜシュカルフ様の司令官さんはいないのでしょうか?


「まず最初に、我が家の敵はこの場に必要有りません、それを不満と思う方は今すぐに退出をお願います。それから、もし途中で私達に危害を加える方が有れば、すぐさま抹殺……退場させますからそのつもりで」


母様の言葉で、上の人ほど身を引き締め、下っ端ほど殺気を飛ばしてきます。


「はいそこ~」


その母様の声と共に、剣に手を掛けようとしようとした騎士さんが、一瞬のうちに姿を消しました。


「ちょっと飛ばすだけなのに、人一人を無傷で飛ばすのってとても大変なのね。心臓を止めた方が簡単なんだけれど」

「ジャクリーン?」

「大丈夫よ、裏の森にポイしただけだから」


裏の森って……、母様ここは辺境ですよ。

それも裏の森ってあの魔物が多く生息する森の事ですか?

兄様が、隣に立っていた人に何か囁き、その人は慌てて駆けて行きました。

救出よろしくお願いします。


「私共の者が大変失礼を致しました」


ルンデンさんが母様に深々と頭を下げ謝罪をする。

でもルンデンさんって伯爵様ですよね?うちって貧乏な一介の男爵家なんですけれど、母様が飛ばしちゃったあの人って、まだ何も実行していなかったんですよ?

もしかして、こちらが謝る方じゃないんですか?


「さて、続けましょうか」


涼しい顔をした母様が、なぜに議長をしているのでしょう……。


「分かっていらっしゃると思いますが、私がこれから話す事は全て他言は無用、よろしくお願いしますね。さて、知っていらっしゃる方もいると思いますが、一応説明だけはしておきましょう」


母様がぐるりと人々を見渡してから、話を続ける。


「私はここにいるエレオノーラの母のジャクリーンと申します。30年ほど前にガルディア家に嫁ぎました」


それを聞いた外野が、どよどよと動揺しているようです。

まあ気持ちは分かりますよ。

皆さんの想像した母様の年齢と今の発言では、計算が合いませんものね。


「話を続けてもよろしいでしょうか?」


母様、そこでにっこり笑っても誰も魅了されませんって。

今の母様のイメージって、ラスボスだもの。


「実は私の実家はエクステット侯爵家。私はその長女です」


再び一部の皆さんが動揺している様子です。


「あの家の長女はひどく病弱で、屋敷の奥深くで養生していると言う話は広く知れ渡っていると思います。それと共に、優れた魔力を持っていると言う事も」

「確かにエクステット侯爵家の娘の事は聞き及んでいました。しかし実際に彼女を見た者は少数、いえ長い間その娘の姿を見た者は家族以外は皆無であり、本当に生きているのか、もうすでに亡くなっているのかもしれない。あれはエクステッド家が、他の貴族を敬遠しているのだと噂されていたが、灯台下暗しでしたか」

「そのようですね。まあ実際私はここにおりますし、お望みでしたら全力の魔法をお見せしてもかまいませんよ?」


母様、人の迷惑になる事は辞めましょうね?


「さて、私の隣にいるのが主人のエルネスティ・ガルティアです。私の唯一のストッパーだと承知おき下さいませ。それからそこにいるのが、長男の……」


その後も母様は適当に家族紹介をしました。

だって兄様達の事は、きっとほとんどの人が知っているものね。


「それからここにおりますのが私達の大切な娘、エレオノーラです。すでに皆さまは気が付いているとは思いますが、この国の第二王子、アレクシス様の婚約者です。今日はこの子の今後の事について相談するために私共は集まりましたの」


それって、こんなところで話す話題でしょうか?

だって、本当にそれを相談したかったのに、イカルスとシルベスタが余計な人を呼んじゃったんだものと母様は言います。

確かにその通りだわ。


「ええっと、そのお嬢さん…殿下の婚約者様の将来の事ですか?大体にして、殿下の婚約者様は、旅先の火災により亡くなったと聞いておりましたが………」


そうですよねぇ。

何も聞かされていなければ、そう思いますよね。


「面倒…いえ、実は娘は確かにサバストの火災に巻き込まれました。しかし実際に亡くなったとされたのは、この子の友人であるミシェルという少女です。娘は火傷やケガを負い、つい最近まで意識不明の重体でした。当然私達は娘が死んだと知らされ、既に葬儀も終わらせました。しかし実際は娘は生きており、こうして私共の下に帰ってくれたのです。と、言う事なので、シャインブルク様、その辺の事、よろしくお願いしますね」

「はい、確かに承りました」


えっ、何々?シャインブルク様何をするの?

別にどうって事の無い話よと、母様が笑って言います。

でもそれって、きっと裏工作ってやつですよね。


「しかし、なんという感動的な話でしょう!殿下もさぞや喜ばれた事でしょうね」


なにも知らないルンデン様らしい反応です。


「いえ、まだ殿下にはお話ししておりません」

「どうしてでしょう?まずは最初にお知らせせねばならないお方でしょうに」


大体の事は知っている…もしくは予想が付いている人達は、これ幸いと事の成り行きを見守っています。

きっと触らぬ神に祟りなし、なのでしょうね。


「実は、先ほどお伝えした通り、娘は火傷やケガを負いまして、とても王家に嫁げるような状態ではないのです」

「一見したところ、とても美しく健康そうで、そのような様子は見受けられませんが……」

「ええ、今は私の魔法で隠しておりますから、しかし実際は……」


母様私の顔の前で、フッと手を振った。

すると周りの方達が、ものすご~く気の毒そうな目で私を見つめている。

中には目を背けたり青くなったり、涙を浮かべている人までいた。

母様、一体何をしたんですか?


「御覧の通り、この子には火傷の跡がございますの。それも体のいたる所まで。その上、劇場の崩落時にあちらこちらを打ち、医者からは子は望めないかもと宣告されました」

「何と言う事だ……」

「神とはかくもひどい試練を……」


私も余計な口を挟まず、シャインブルクさん達と同様じっと成り行きを見守る事にしました。

生贄になったルンデンさん、ごめんなさい。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  そういう路線でいくのか。  あの殿下ならそれでも迎え入れるなんなら自分が行く、なんて言うだろうけど。  どうあがいても王族は血を継いでいくという仕事があるから悪くない策ではありますね。 …
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