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回復治癒魔法?発動

目の前でみんなが苦しんでいる。


「あ、頭いてぇ~」

「く、苦しい」

「気持ちが悪い……」


全て二日酔いだけど。


まあ昨日は朝からみんなで、お酒を飲んで食って飲んで騒いで飲んだ結果だろうけど。

だけど、下戸の1人と、ざるの2人と私では、介抱する手が少なすぎる。

重病人の様な有様の人達全てを、世話をするのは無理。

ジョンさんに相談したいけれど、当のジョンさんも頭を抱えて唸っている。


「は~っ」


これはやるしかないでしょう。

魔法の掛け方も思い出したし。

方法は、ただやりたい事を願うだけ。


母様は、魔法を使うかどうかは、良く考えてから決めなさいと言っていたけれど、これを目の前にしてシカトは……出来ないよね。


私は手を組み、心の中で”治れ”と念じる。

一見、手を組み瞑想しているようにしか見えないだろうけど、あちこちで驚きの声がしたり、起き上がる人がいる。

よし、うまくいった。


「何だぁ、急に楽になったぞ」

「俺もだ」

「いや、いつもよりずっと気分がいい」

「俺なんて、昨日ぶつけたところの痛みもないよ」

「そりゃぁ普通に、良くなったからじゃないのか?」

「傷も治ってるんだが」


やりすぎた?


「もしかして、エルの仕業か?」

「いやぁエルさん、あんたの魔法は本物だぜ」

「すげえよな」


……これはあれだな、既に昨日の説明をされているな。


「皆さん、いくら万聖節だからと言って飲みすぎです。私、こんな事しか出来ないですからね!」


私には大した事しかできないと、一応の予防線を張った。

もっと本気出せるし、他にもいろいろ出来そうな気がするけれど。




「ところでお頭、いつバスクに向けて出発するんですか?俺達も準備しなきゃならないんですから、日にちぐらい言っておいて下さいよ」

「食料の始末もあるんですからね、生ものは腐るんですよ」


その言葉に共感する。

生ものダメ、いずれ干からびるとしても、その過程を想像したくない。


「出立か、一応三日後を予定しているが、そんな事お前らに関係ない……」


ふいにジョンさんの表情が変わる。


「まさかと思うが」

「やだなぁお頭、俺たちはお頭に一生付いて行きますと約束しましたよね。もう忘れちゃったんですかぁ?」


つまりジョンさんは私に付いて来るみたいで、皆さんはジョンさんに付いて行くようだ。

一蓮托生ですか……?

ところで皆さんは何か重大な事に気が付いていますか?

それは、私が一切了承していないと言う事です。

聞いてますか~~。


「諦めなエルさん、お頭はこうと決めた事は、絶対に実行する人だ。それに女一人でバスクに行くのは無理だ。護衛を連れて行った方がいい」

「だからって、私の為にこんなに大人数で行くなんて…」

「俺たちはお頭に付いて行くんだよ、エルさんが気にすることは無いさ」


だからと言って、こんなむさい男達20人以上が徒党を組むなど、絶対に目を引くよ。


「よし、出発は3日後だ。野郎ども、それぞれの支度をしておけ、間に合わなければ置いて行くからな!」


ビルトさんって、ジョンさんよりよっぽどお頭っぽいよね。

ジョンさんてさ、どこかしら優し気?上品さ?があるんです。

って、それを宣言していると言う事は、皆さん揃ってここを出るの決定事項ですか!?




本気だった。

前日にはどこからかほろ付きの馬車を持ってきて、馬の世話をしたり、荷物を積み込んでいる。


「ジョンさん、この馬車は?」

「ああこれか。これは以前の戦利品…いや、貰いものだ。今まで必要なかったから、村のじじいに貸してあった物だ」


なるほど…。

馬車に何人か乗って、他の人は歩きかな?

そう思ったけれど、私の予想は外れた。


馬車には今までの借り物?を乗せ、前の方にはクッションが幾つも置いてある。


「長旅になるからな。俺とビルトとエルは馬車で移動だ。エル、疲れたらこのクッションの上で横になっていろ」


クッションはその為でしたか。

甘やかせ過ぎだろ。

でもこれだけの荷物を持って出るのだ。

このアジトをかなり長く留守にするのか、下手をすればもう戻らない覚悟かもしれない。


「ほかの人達は?」

「適当に付いて来るさ。その辺はみな心得ている」


信用しているってことだね。

ちょっと皆が羨ましい。


「配った弁当は各々適当に食って、後から追いかけて来い。付いて来れない奴は置いてくからな」


今日、朝早くから残った食材を料理をしていたのは、処分がてらお弁当を作っていたんですね。

でも私たちは馬車で走りながら食べられるけれど、他の人は歩きながら食べるか、休憩がてら食事をして追いかけて来いってことでしょ?

ジョンさん、それって酷くない?


「そんな事分かり切ってまさぁ、俺達を舐めないで下さいよ」


どうやら心配するような事ではないようだ。

みんなは各々で変装し(商人風や冒険者、狩人など)2人から5人のグループに分かれ、適当な距離を置きながらゆっくり進む馬車の周りを取り囲んでいる。

全然怪しく見えないのがすごい。

この馬車に積んだ、高そうな借り物もすごい。


皆はかなりの距離を取り歩いているけれど、常に神経を張り詰めているらしい。

お花摘みのために馬車を止めてもらった時も、200mほど先を歩いていたルーベンスさん達が、心配したのか慌てて駆け寄って来たけど、勘弁して下さい。


アジトを出発してから3日目の夜、いつものように馬車を森の中に停め、近くに怪しい物がいない事を確認してから野営をする。

私は馬車の中のクッションに埋もれて、ジョンさんは御者席に横になり、ビルトさんは馬車の後方で睡眠をとる。

他の人達は皆、思い思いの場所で寝袋に入って横になっているらしい。

ビルトさんに、寒いから馬車の中で一緒に寝て下さいと言っても、大丈夫だと断られた。


「それはお頭に言ってやってくれないか」


いえ、それはお断りします。


”バスクに行くまでは護衛がいる”

その言葉は、確かに本当だった。

森は深く、昼間でも薄暗いし、人ともろくに擦れ違わない。

途中でノバイス(大型魔獣)に襲われたけれど、皆できっちり倒した。

それからノバイスのお肉は、夕飯の時に美味しくいただきました。

ごちそうさまでした。

でもあの毛皮、暖かそうだったな。

旅の途中だから余計な事が出来なくて、なめす事は泣く泣く諦めたけれど。


「そんなに欲しいのなら、今度俺が買ってやるよ」

「いえ、自分でやる事に意義があるのです」


そんな高級な毛皮を買うこと自体、間違っています!

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