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我儘で欲張りな私

「つまり、私は大地の神様の眷属になったと……」

『そうだ。それとこの子もお前のバックアップに着くと言っておる』


そう言い大地の神様は、腕の中の緑の御方を、愛しそうに眺め微笑んだ。

う~ん、絵になるような二人で、デロデロの甘々ですね。

(神様の呼び方が面倒くさいけど、でも下手に名前を付ける訳にもいかないと勉強し悟ったエレオノーラです)


『あの場合はそれが最善と思ったまで、お前に名を与えた事は後悔しておらん』


確かに力尽きようとしている私に、力を分け与えてくれた事には感謝しています。

でもですね、それ以外の方法は本当に無かったんですかぁ?


『神の眷属になるなど、めったに無い事だ。今は素直に喜んで感謝しておれ』


そう言う訳にもいきませんよ。

神様の眷属になると言う事の、メリットもデメリットも知らないんだから、へらへらと喜んでばかりも行きません。


「あの~神様、少しお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

『お前が色々な事を知りたい気持ちも分かる。しかし今は時間が無いのだ。出来れば少し待ってくれ』

「あっ、ごめんなさい。神様ですもの、お忙しいですよね」

『ああ、これもようやく首を縦に振ってくれたのだ。つまり私とこの子は実質新婚と言う事だ。察してくれ。あぁそうだ、お前に頼みが有ったのだ』


……ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい。

何か今の私には、嫌な予感しかしないんですけれど。


『私が留守の間、仕事の代行をしておいてくれ』

「何ですかそれはーー!!」

『これでもお前が目覚める三年の間待ったのだ。もうこれ以上邪魔をするな』


いつだれが神様の邪魔をしたんですか!?


『ごめんね。古今東西、神様って我儘なものなんです。どうか許してあげて』


そう言いながらやさしい笑顔を作った緑の御方は、両の腕を大地の神様に差し出した。

それから神様はそっと御方を抱き上げ、御方はその腕を神様の首に絡ませる。

その姿はとても幸せそうで、誰もそれを邪魔する気など起きないだろう。

はいはい、分かりました。

神様達がいちゃいちゃしている間、私がここを守ればいいのですね。

力が及ぶ限り協力しますよ。


「それでいつまで?私は何をすればいいんですか?」

『なに、そう難しい事ではない。この場におれば自然と色々な情報が入ってくる。その中で不適切な動きと思った事だけ対処すればいい』

「そんな簡単に言わないで下さい。私はただの人間で、神様とは違うんですから」

『ただの人間ではなく、私の眷属だな。私には及ばないが、管理できる程度の能力は備わっているはずだ』


とんだチートですね。

そんな力、普通の人間には身に余るものなんですよ。

もしかして全て計算済みですか?


『何か言ったか?』

「いえいえ何も」

『して、期限だったな。そうだな……2…いや、100年ほどで我慢しておこうか』


途端に沸騰する私の頭。

つまりは私は死ぬまでここに幽閉されるって事ですか!?

ずいぶんな話ですね。

こちとら只の人間だと言うのに、それは私にとって死刑宣告とも等しい事だ。


「百年もこんな所に引き籠れと!バカ言っちゃあいけませんよ。それって死ぬまでここにいて、ブラックさながら仕事しろと言う事ですよね。お忘れかもしれませんが、私はただの人間なんですよ!」

『ただの人間では無いな。私の眷属だ、いい加減覚えよ。私の眷属となった以上、寿命の期限など有って無い様なものだ』

「大体人の寿命がどれぐらいかご存じですか?神様達のお帰りを待つ間に私死んじゃいますよ!?」


自分を基準に考えないでもらえます!?


『だから百年やそこらでお前は死にはしないと言っているであろう。せっかく得た眷属をそんなに簡単に失っては勿体ないでだろうが』


やっぱりブラックじゃん。

いや、そうじゃない。

今神様は、百年やそこらで私は死なないとか言ってなかったか?


『だから先ほどからそう言っているだろうが。お前は私の眷属となった。従って私の力を分け与えたお前はそれなりに寿命が延びている。たかだか百年ここで過ごしたところで、寿命はまだまだ尽きぬな』

「…………取り消してください」

『取り消す?』

「はい。私に付けた名前を取り消してください」

『ならぬ。お前はようやく表れた我が眷属に相応しい存在だ。そんなに便利な奴を、そうやすやす手放す気はない』


うん、わかる気がする。

それって、私に面倒ごと押し付けて、その間、緑の御方といちゃいちゃできるって思ってませんか?


「神様、私はあなたに名をいただき命を助けてもらいました。それに関しては大変感謝をしております。しかしたとえあなたの眷属となったとしても、元は人間なのです。そして人間である私には家族や大切な人達がおります。そんな人達を、まるでいきなり切り捨てるように見捨てるような真似をする事は、大変辛ろうございます」


それは私の心からの思い。

あの時、私の命が尽きていたならば、こんな思いもせず残酷な別れが待っていたのだろう。

しかし私は今を生きて、そういう思いを持ってしまった。

私の考えが我儘だと言われてしまえばそれまでかもしれない。

でも、せめてもう一度あの人達に会い、一言だけでも別れを言いたい。

そしてもし許されるのならば、そのまま家族の下に留まり、穏やかに暮らしたい。

そして、そして、ミシェルにも会いに行きたいし、リンデンさんや仲間皆と楽し暮らして、皆とピクニックに行ったり、まだ行った事の無い所に行ってみたい。

それからまだ沢山の困っている人や不幸な人がいるはずだから、その人達を助けて、それからそれから……。

せめて、皆が悲しまないようにするまで、それは待ってもらえないかな。

だって私は、とても欲張りなんだから。

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